ちくま文庫 忍法帖短編全集 収録作品紹介
オリジナルの短篇集を踏襲している。また各巻毎に文庫未収録のボーナストラックが追加されている。
ボーナストラックの未収録エッセイの題名を追加。
忍法帖以外の時代小説を含んでいた「怪異二挺根銃」(実業之日本社 73年)より忍法帖作品のみを抜き出してIJKに収録。
年代特定不能
評価については講談社山田風太郎傑作忍法帖の第一期(表題「剣鬼喇嘛仏」94年8月刊行)収録作品をA、第二期(表題「くノ一紅騎兵」96年8月刊行)収録作品をBとする。
@ かげろう忍法帖 64年9月講談社(山田風太郎忍法帖全集14)→67年9月同ロマンブックス
「忍者明智十兵衛」
謎の多い明智光秀の過去について独自の解釈が語られる。
ゲスト お市の方
「忍者石川五右衛門」
甲賀丹波こと石川五右衛門は甲賀の里から奪われた楊貴妃の鈴を淀の方から奪い返すのだが…。
五右衛門の扱いが本紀(妖説太閤記)と矛盾する。
「忍者向坂甚内」
「忍者撫子甚五郎」
小早川秀秋の去就を巡る服部党・波ノ平党の死闘。秘術を尽くした忍者達の苦闘も秀秋の優柔不断に振り回される事になる。
「忍者本多佐渡守」
被害者 大久保長安
「忍者服部半蔵」
服部半蔵四代目正広の登場。
「『今昔物語』の忍者」
「忍者帷子乙五郎」
「忍法忠臣蔵」の原型。正しくは本作がほぼそのまま冒頭の二章になり、その先がを継ぎ足されている。主人公の名前の他に話を続けるための決定的な変更があるのだが、それは読んでみてのお楽しみと言うことで…。
A 野ざらし忍法帖 64年9月講談社(山田風太郎忍法帖全集15)→67年10月同ロマンブックス
「忍者車兵五郎」
短い話の中に三度の決闘があるのですが、ひとつひとつを記述してみても面白くないので。
「忍者仁木弾正」
正雪対知恵伊豆の終焉と、森宗意軒によって蒔かれた伊達騒動の火種。
仁木弾正というのは伊達騒動を題材にした歌舞伎「伽羅先代萩」における原田甲斐の変名である。
「忍者玉虫内膳」
まず、「江戸〜」よりは後であることは間違いない。で無ければ甲賀組が出動するはず。問題は赤穂事件より前か後かである。アレの後だと流石に綱吉も懲りていると思うので前と考えたい。
以上のことから無明綱太郎の名が売れる(包丁勝負)前の元禄十三年とする。
「忍者傀儡歓兵衛」
天保末とあるので、素直に天保十五年。
次の「妻の忍法帖」と対比して読むと面白い。
同じ入り婿ながら、体よく家を追われてしまった花房宗八郎と、それに対して妻の指導で忍法を修めて成功?した。両者の違いはどの辺にあるのか?
「忍者枯葉塔九郎」
鳥取藩主で池田備中守を名乗ったのは初代長吉と二代長幸のみ。初代は慶長十九年つまり大坂の陣の直前に死んで、その後を息子の長幸が継いでいます。二代目が備中守となったのが翌元和元年で、三年には備中高松へ転封されています。
この話が大坂の陣以前で有れば、剣で出世する道が無くもないので二代目の話とするべきでしょう。
「忍者梟無左衛門」
田沼山城守刃傷の裏話(その2)。
「忍者帷子万助」
室賀と言うからにはやはり甲賀者か?
「忍者晒銀四郎」
架空の藩なので年代特定不能。町奉行として大岡越前守が登場する。
「忍者枝垂七十郎」
御庭番の変装所として使われた大丸呉服屋の話。
メイン部分は時代設定が特定出来ません。しかも決着は書かれていません。
「『甲子夜話』の忍者」 評価B
「忍者鶉留五郎」
大いなる幻術(画 水木しげる)
B 忍法破倭兵状 65年8月文芸春秋新社(ポケット文春143)→67年8月講談社(風太郎忍法帖6)
「忍法鞘飛脚」
下馬将軍・酒井雅楽頭と堀田筑前守(+綱吉)の暗闘の一幕。内容は一寸気の毒すぎて…。
「忍法肉太鼓」
酒井忠清と堀田正俊の暗闘に翻弄される伊賀忍者。文字通り自分のまいた種であるが、最後の一文が何とも悲痛で良い。
「忍法花盗人」
将軍家斉の息女が輿入れした会津松平家の騒動。愛妾を下賜された芦名忍者達の顛末は気の毒で書けません。
「忍法しだれ桜」
伊賀・甲賀と並ぶ第三の忍者集団・根来衆にまつわる秘史。何故か角川版から漏れてしまった秀作。
「忍法おだまき」
関白秀次は果心居士の忍法おだまきを使って若返り、やり直したいと願うが…。
「忍法破倭兵状」 評価A
出だしで、忍者が李舜臣を討ち果たして、どうなるかと思ったが、無事につじつまが合って良かった。舜臣の弟・竜将の秀吉に対する復讐が秀逸である。
家康の役回りが微妙。
「忍法相伝64」
内容もさることながら、思わず三重県の地図を取り出して阿山郡鍔隠村というのを探してみたくなりました。これを長編化したのが幻の長編「忍法相伝73」ですが。
市町村合併で伊賀市が誕生するようです。→国土地理院・市町村合併情報
C くノ一死ににゆく 67年9月講談社(風太郎忍法帖7)→69年4月同ロマンブックス
題名がすべて「〜試合」で統一されている。
「捧げつつ試合」 評価B
沼田藩に潜入した甲賀忍者の死闘。もう少し待てば甲賀組の天下がやってくるのに。でも甲賀大八が生きていたらこの次の話(江戸忍法帖)に影響するかも。
それにしても同じ時期に根来忍者も潜入しているはず(忍法双頭の鷲)ですが、かち合わなかったでしょうか。
「濡れ仏試合」
作中には正確な年代は出てきませんが、柳沢吉保と服部玄斎が登場するので。服部玄斎は「江戸忍法帖」の作中で死亡するので、それよりは前、柳沢が大老格とあるから元禄七年以降。最終的には、この年に他に何の記述もなかったからはめ込みました。
「逆櫓試合」 評価B
なかなか忍者が出てこなくて忍法帖だと言う事を忘れるところでした。
将軍家重と大岡忠光が登場する恐らく唯一の作品。寛保年間となっていますが、この頃はまだ父の吉宗が将軍の筈ですね。
登場人物 柳生采女
「膜試合」
大岡越前が奉行をやっていると言う以上の情報が有りませんので、正確な年代の決定は困難。享保期は結構すかすかなので、どこに入れても良いんですけどね。
「かまきり試合」
お遊様の能力は、「甲賀忍法帖」の陽炎と同じであるがこちらは伊賀。交われば必ず孕むと言うから効率は良いかな。と思ったけど、これだと敵に対して使えないよね。
「麺棒試合」
平賀源内の提案で伊賀と甲賀の血の交配実験が試みられるが。
脇役 田沼意次
「つばくろ試合」
十兵衛の死の直後。伊豆守はその後釜として尾張の柳生兵助と陳元贇の子弟コンビを送り出す。迎え撃つ正雪は頼宣を焚きつけるが、頼宣が送り出したのはまだ紀州藩士に取り立てられていない(つまり言い逃れ可能な)根来の忍法僧であった。
「魔界転生」で三十人も死んだのに、根来忍者は紀州藩に取り立てられていなかったらしい。しかし今回は柳生相手に一矢報いている。でも本当に勝ったのは…。
ゲスト 若き日の黄門様
「摸牌試合」 評価B
結城秀康、謀反疑惑の顛末。「羅妖の秀康」と多少の矛盾が出ますが。
秀康に刻まれた鏡文字を読もうとして忍者が悪戦苦闘しますが、その馬鹿馬鹿しい落ちは、読んでのお楽しみ。
登場人物 家康
「絵物語 忍者石川五右衛門」(画 矢野徳)
D 姦の忍法帖 68年7月文芸春秋新社(ポケット文春174)→77年2月文春文庫
「姦の忍法帖」
由比正雪が、将軍家光の御前にて韓非子を講義するところから始まる。寛永年間であることは明記されているし、また状況から見てもその点は明らかである。伊豆守信綱が老中として控えているから、十年の十月以降。話その物は梅雨の時期であるから十一年以降である。
一方正雪の方だが、甲賀と伊賀の忍術勝負に呆気に取られている点から見て島原の乱(すなわち森宗意軒への弟子入り)以前には違いない。残る問題は十一年に御前試合のカードとして正雪と柳生宗冬の一戦が組まれているがこれより前か後か。この事件での正雪を見て御前試合に招こうとは思うまいから、試合自体は流れて、その後召し出したと言うのが自然の流れであろう。よってこれを十二年の事件と設定する。
「胎の忍法帖」
短いながらも非常に重要な作品。まず、能登忍と甲賀との提携関係が伺える。第二に、年表に附記してから気付いたが、信長の処刑命令は天正伊賀の乱の直後で、彼の忍者に対する憎悪が極限状態であった事が読みとれる。信長には伊賀も甲賀も無かっただろう。
「笊の忍法帖」
「転の忍法帖」
「牢の忍法帖」
町奉行の名が跡部肥前守ですが手元の資料には該当者無し。跡部姓の奉行は能登守(弘化二年〜嘉永五年)と甲斐守(安政二〜五年)がいますが、切支丹が出てくる辺りは江戸の前期から中期と思われるし。
「〆の忍法帖」 評価A
絵物語 忍者向坂甚内(画 矢野徳)
E くノ一忍法勝負 69年3月講談社→70年3月同ロマンブックス
「倒の忍法帖」 評価B
松平忠輝が改易・配流に至る真相。
「叛の忍法帖」
羽柴・明智・徳川・毛利の忍者による謀略忍法合戦。光秀の自分の謀反を知らなかったのはただ信長一人だけであり、皆が知っていることを知らなかったのはただ自分一人であった。と言う感想が非常に切ない。
端役 細川藤孝
「虫の忍法帖」 評価A
妹思いな意外な一面を見せる淀の方。
それにしても、秀吉の種ではないかも知れない秀頼と、もしかすると秀次の種であったかも知れない千姫の間に子が出来ていたら、話は非常にややこしい事になったでしょうねえ。
「呂の忍法帖」
「妻の忍法帖」
話の展開が予想と違いましたが、これはこれで面白い。
服部万蔵という頭は天明期と天保期の二度登場するが、天明期は混乱しているので天保期の二代目万蔵と考える。そうなると命令者は阿部伊勢守と考えるのが自然である。よってこの話の時期は弘化年間と考える。
これが「忍者傀儡歓兵衛」のすぐ後だと考えるとお半の真剣さの意味が伺い知れるでしょう。紋三郎が忍法を修め損なうと宗八郎と同じ運命を辿ることになったはずです。
この時期に薩摩を調べるとしたら調所笑左衛門の主導による密貿易であろう。
「淫の忍法帖」
絵物語 撫子甚五郎(画 矢野徳)
F 忍法関ヶ原 70年1月ポケット文春194→89年9月文春文庫
「忍法関ヶ原」
鉄砲の里国友村の帰属を巡る石田方甲賀忍者と徳川伊賀忍者の死闘。
家康の最後の一言が「銀河忍法帖」に通じる。
「忍法天草灘」 評価A
半蔵(四代目)は弦之介と朧の決闘を見届けた後、長崎に出張したことになります。で、戻ってきたらすぐに今度は忠輝の探索を命じられる訳です。(大坂との)状況が切迫しているとは言え、忙しいことです。
それにしても、五年前に斑鳩と鶯の二人を送りだしたのは先代半蔵で、その時将来の四代目は落ちこぼれだった訳ですが。
「忍法甲州路」
「忍法小塚ッ原」 評価A
未収録エッセイ1 「忍法と剣のふるさと」
G 武蔵忍法旅 70年4月ポケット文春201
タイトルが「人名+忍法+X」と言う形式で統一されている。
「武蔵忍法旅」
武蔵の修行法が「魔界転生」での宝蔵院胤舜のそれに似ているとか、最後に自分の男根をへし折ってしまうけど、これを切り落としてしまうと後々転生出来ないぞとか、どうでも良いことに注意が向いてしまうあたり、我ながらマニアだなあと思う。
それにしても小次郎が武蔵の二刀流を敗るために会得した燕返しが、道中で武蔵を倒そうとする服部組のおかげで無駄になっているところが何とも哀れで…。
「おちゃちゃ忍法腹」
朝鮮の忍に勝ってしまう淀の方。
「刑部忍法陣」
真田が如何にして舅大谷刑部を西軍に引き込んだか。また刑部吉隆と秀秋との神経戦。加えて、屋根裏からのぞき見る淀殿と高台院の本音。と非常に見所が盛りだくさん。
良い作品だが、素材の関係で二度と再録はされないであろう、と思ったが。
影の主役 真田幸村
「近衛忍法暦」
昭和の宰相・近衛文麿の回想に始まる先祖・近衛前久の苦闘秘話。
「彦左衛門忍法盥」
征韓の役と太平洋戦争をダブらせて彦左衛門老を戦中派の代表として語らせていますが、どうも時代性が強すぎて風化している嫌いが有りますね。
非常にマニアックな突っ込みですが、宗意軒の使う秘蔵のくノ一の名前は「ベアトリスお銭」が正しいでしょう。「魔界転生」ではベアトリスお銭、クララお品になっていますから、多分混ざってしまったんでしょう。
「ガリヴァー忍法島」
堀部安兵衛とガリヴァーが協力して、キャプテンキッドが奪った熱田の神剣を取り返す。キャプテンキッドってこの頃の人なんだと妙に感心してしまった。
吉良上野介が甲比丹一行を出迎える役で一寸だけ顔を出すのが微妙に良い。
その後、「ガリヴァ旅行記」(中野好夫訳・新潮文庫)を読みましたが、ガリヴァ氏はかのラピュタからの帰途に日本に立ち寄っています。但し、その年代は西暦1709年。この話よりも12年ほど後になります。そのころにはキッドも堀部安兵衛も共に死んでいますね。
未収録エッセイ2 「忍法小説はなぜうけるか」
H 忍法聖千姫 70年12月講談社
「忍法聖千姫」
「忍法ガラシャの棺」
ガラシャ夫人お玉による父光秀と婚家細川家(幽斎・忠興)についての辛辣な評。
「忍法とりかえばや」
今回初読作品。
朝国家甲太夫が研究していた”とりかえばや”と「忍者死籤」における”万華の術”は恐らく同系のモノと思われる。時系列的には「死籤」→「とりかえばや」と思われる。
「忍法幻羅吊り」 評価B
取り敢えず事件の少ない天明二年に置く。これも言われなければ忍法帖モノだと気付かないかも。
「忍法穴ひとつ」 評価B
出番の多い田沼山城守であるが、その若年寄在位は以外に短い。天明三年十一月に就任し、翌年の三月に刃傷に倒れている。よって春という記述から天明四年と確定する。
「忍法瞳録」
十鬼一族の秘術瞳録の謎を巡る悲劇。服部半蔵(五代目)から出された三通の報告書の宛先がすべて異なることが奇妙に印象に残る。
「忍法阿呆宮」
吉宗を将軍に据えようと画策する紀州の陰謀とその犠牲となった忍者の話。
未収録エッセイ3「首切り浅右衛門」
I 忍者六道銭 71年6月講談社
「忍者六道銭」
忍者に女は禁物であると言う話。
「忍者死籤」
作中に年代を明示する記述はないが、背景(薩摩の菊じるし)と忍法(万華の術)から明和年間の事件と推定する。
「くノ一地獄変」
駿河大納言の最期。「忍びの卍」の裏。
「くノ一紅騎兵」 評価B
上杉家が徳川との決戦を決意した意外な理由。妖将直江山城守とその四天王が登場。一部にまだ旧主家との縁が切れていない方もいますが。
「天明の判官」
曲淵甲斐守が田安宗武より与えられた七人のお庭番が忍者であることは間違いないのだが、その技については全く言及されない。忍法帖っぽくはないけど秀作です。
「天明の〜」と言いながら天明期のエピソードがほとんど出てこない。
「天明の隠密」 評価A
「大いなる伊賀者」
相馬大作とその師平山行蔵の秘話。
未収録エッセイ4 「TV忍法帖」
J お庭番地球を回る 71年6月ポケット文春214
「お庭番地球を回る」 評価B
お庭番村垣淡路守の渡米。意外なゲストが登場。よく読まないと気付かないかも。
ゲスト登場人物 小栗豊後守
「怪談厠鬼」
未読だった最後の作品。年代については将軍家斉在職中なので、恐らく文化年間であろうとしか言えません。内容は…。
ゲスト 徳川家斉
「さまよえる忍者」
田沼山城守刃傷の裏話。
「読淫術」
服部百蔵が伊賀甲賀の部下に斡旋した忍法を用いたバイトが思いがけず酒井忠清と堀田正俊の暗闘に絡んでくる。
「忍法死のうは一定」
信長の陰の協力者であった果心居士は信長を本能寺より救い出そうとするのだが。
信長のライバルであった武田信玄・足利義昭・上杉謙信の死に纏わる謎とは?
関連稿 謙信、女陰往生に死す
「怪異二挺根銃」
津軽侯を狙う相馬大作とそれを防ぐ津軽の忍者の死闘。
未収録エッセイ5 「忍法金メダル作戦」
K 剣鬼喇嘛仏 76年11月徳間ノベルズ
「忍法女郎屋試合」 評価B
田沼山城守によって公営遊郭の取り締まりをやらされることになった伊賀組の苦闘とその意外な顛末。
「伊賀の散歩者」
江戸川乱歩のご先祖様に関する逸話?
登場人物は氏の関係者をモデルとしており、作者本人をデフォルメしたとおぼしき忍者も登場する。最後にあの乱歩に「剣呑なやつ」と言わしめるのは作者の面目躍如でしょうか。
ゲスト 松尾芭蕉
「伊賀の聴恋器」
「羅妖の秀康」
陰茎人になった秀康の話。元の話にあった滑稽さはそのままに、忍法帖らしさも加味されている傑作です。
登場人物 家康
「剣鬼喇嘛仏」 評価A
巌流島の決闘の後日秘話。冒頭で「吉川武蔵」の結びが引用されます。
父忠興から武蔵狂と評された与五郎興秋ですが、石川版「柳生十兵衛死す」では十兵衛と対決します。
登場人物 宮本武蔵
「春夢兵」
作中で、間宮林蔵が八戸藩を小薩摩と表しているが、この藩の最後の当主南部信順は島津家からの養子であるらしい。島津家八代重豪の五男というので島津斉彬や久光の叔父に当たる。
「甲賀南蛮寺領」
切支丹対忍者は大抵の場合、切支丹側が勝つのだが、これは忍者側が勝った数少ない例と言える。通例だと、忍者側が権力の走狗として切支丹と対峙するのだが、この話では権力者(=信長)が切支丹の側に付いている。切支丹は権力から弾圧を受けている時の方が何故か強いのである。
「筒なし呆兵衛」
由比正雪と松平伊豆守の話を振って置いて、実は有る人物の出生の秘密?が語られています。(今更隠しても…)
わずかながら忍法が出てくるとして(急遽)最終巻に収録されました。おかげで最終巻は一番高い厚いです。
「開化の忍者」
明治五年。忍法帖と明治物をつなぐ幻の作品。