時代小説人物評伝

肆の参 江戸柳生篇

 但馬守に始まる江戸柳生の剣士達。

柳生但馬守 (やぎゅうたじまのかみ:1571〜1646)

 柳生石舟斎の五男。実名宗矩。将軍家兵法指南役にして幕府大目付。柳生一万二千五百石の大名。恐らく剣士として最も出世した人物であろう。

 彼の死後、柳生家は長男十兵衛三厳と三男飛騨守宗冬とに分割相続され、一時大名から旗本に落とされる。

 禅僧沢庵との交流から剣禅一致の思想を唱える。

 山風版 「柳生忍法帖」「甲賀忍法帖」「山屋敷秘図」「魔界転生」

 駿府城にて伊賀甲賀の忍者対決を幕府重臣と並んで観戦しその奇怪さに驚愕する(「甲賀忍法帖」)。 死に臨んで迷いを生じ魔界への転生を決意する。最後は自分の墓の前で息子十兵衛に斬られる(「魔界転生」)

 隆慶版 「柳生刺客状」「影武者徳川家康」「柳枝の剣」

 関ヶ原のおり、柳生の庄を蜂起させようとするが、父石舟斎に拒絶される。合戦中に家康が死に影武者と入れ替わった事を遅参に消沈していた秀忠に伝えてその腹心となる。

 秀忠と家康の影武者世良田二郎三郎との暗闘の中、暗殺剣を振るう。結城秀康を襲う際に甥の兵庫と立ち会って足を切り落とされる。それ以後義足を使用する。

 光瀬龍 「寛永無明剣」

 将軍家指南役として将軍家直属の秘密情報機関を指揮する。

 彼を初め柳生の一門は人類滅亡を防ごうとする一味と入れ替わっている。

 柴錬版 「赤い影法師」「柴錬立川文庫」「運命峠」 「徳川三国志」

 弟子を隠密として各大名家に送り込んで、改易に追い込む。しかし秀頼の遺児秀也を前にはじめて迷いを感じる。隠密としての任務が競合する為服部半蔵との確執を生じる。秀也を救い出そうとする主人公とこれに助力する武蔵を巧妙に噛みあわせる。(「運命峠」)

 家光の希望により実現した尾張柳生との対決に息子十兵衛を出場させ、狙い通りに引き分けで収める。御前試合の影で蠢く忍者を討つべく服部半蔵と図る。(「赤い影法師」)島原の乱に真田六文銭組が加わっていることを知り、板倉重昌に警告。

 石舟斎の三男。但し実父は上泉伊勢守。帰趨に迷う小早川秀秋の陣に使いに走る。彼の登場が秀秋の生殺与奪権を握っていた兄新三郎の決断を促したことを知らない。家康から千姫すり替えを命じられ、たまたま再会した兄の連れていた娘を替え玉にする。また淀の方を最後の妾にと望む家康の命を受けて大坂城から浚うが、家康が役立たずであった為こっそりと城に戻す。「柴錬立川文庫」)

 幕府内での派遣争いから息子十兵衛を松平伊豆守に接近させる。

 荒山徹 「柳生外道剣」「柳生逆風ノ太刀」「陰陽師・坂崎出羽守」「柳生薔薇剣」「柳生百合剣」「柳生黙示録」 「徳川家康」「柳生大戦争」「魔岩伝説」 「十兵衛両断」 「砕かれざるもの」

 友景サイクルでは完全に友景の引き立て役。しかし、息子友矩が切支丹に染まって十兵衛に討たれた後は、切支丹への敵意とともに野心を捨てる。(まあそのときには嫉妬の対象である友景も亡くなっていたわけで)帰国した高山右近からの切支丹蜂起の情報を幕閣に伝えるが相手にされず。

 鳳凰サイクル(「十兵衛両断」)では、柳生の出番そのものが少ないのだけど、息子十兵衛の体を奪った韓人が戻ってきて俺を嫡男として扱えという無理難題を持ちかけてきたとき、打算を優先してこれを了承。あまつさえ、異議を唱えた友景を斬ろうとしたヘタレっぷり。

 そして大戦争サイクルでは、長くなるので別稿で。

 第四サイクルでは、完全に敵役。家光の前田家取り潰し作戦には消極的であったが実現できるのは自分しかいないという自負を持って事に当たる。思いがけない第三勢力の登場に翻弄される。三老中からの責任転嫁を受けて、家光に越中入りを進言する。

 五味康祐 「村越三十郎の鎧」「兵法流浪」「無刀取り」「新陰崩し」「刺客」「真田残党奔る」「二人の武蔵」「曙に野鵐は鳴いた」「火と剣と女と」「柳生武芸帳」「名取三十郎と宗矩」「堀主水と宗矩」「近藤甚太夫と宗矩」

 政治家としての側面を強く押し出された、伝奇マニアにおなじみの”黒宗矩”の走り。「かなわぬ相手とは出逢わないようにする」「剣法も鉄砲には勝てないから、制度によってこれを使用を規制する」と言うのはせこいけど兵法としては正しいのかも。これも強いと言う前提があるから成立する発言である。

 父石舟斎と共に家康の警護に当る。家康が居ない事を見越して兵庫を通すが、結果として三成を逃す事になる。父と共に諸国を放浪。その勝ち方は外連がきつい、けど石舟斎の要求も無茶すぎるから。って関ヶ原の後は徳川家に仕えていたのでは?

 懇意の坂崎出羽守が千姫の問題で叛意を示した際に、息子十兵衛を送り込んで始末させた。

 土井大炊頭と共闘して家光の三代将軍継承を目指す。宇都宮城における釣天井の仕掛けを知りつつ、往路では仕掛けてこないと判断して秀忠を泊まらせ、正純の油断を引き出す。

 十兵衛を使って岡本武蔵と皮袴組を噛み合わせる事には成功するが、岡本武蔵の暗殺には失敗する。二人の武蔵が手を組んで敵に回る事を危惧し、これを討ち果たそうと自ら乗り出す。

 後水尾天皇の命で徳川の血を引く二皇子を始末。その実行者を示す「柳生武芸帳」を巡って熾烈な争奪戦が繰り広げられる。山田浮月斎との立会いで左足首を切られ、義足になったことを理由に大目付を辞する。武芸帳を手に入れた土井利勝に糾問されるが、騒ぎに乗じて証人を始末。天海に手を回して窮地を脱した。と思われるがその後の顛末は(作品未完ゆえ)不明。

 菊地版 「魔剣士 黒鬼反魂篇」

 父宗厳を守るため奥月桔梗に挑むが、拭いがたい恐怖を植え付けられ剣士としての命数を断たれる。

 えとう乱星 「蛍丸伝奇」 「用心棒・新免小次郎」

 武蔵が細川家に雇われた刺客であることを知っていて、彼が徳川の敵を倒していることから彼を放置している。

 松山主水の心の一方を見て二階堂流の絶滅を息子十兵衛に命じる。

 天秀尼を謀反の芽として摘もうとするが、用心棒に立った新免小次郎に敗れ、右手を失う。末子六郎を小次郎に託して柳生の里へ落とす。自身は息子宗冬によって殺される。

 池宮彰一郎 「天下騒乱」

 土井大炊頭の指示に従い、河合又五郎を確実に討つ為の人選を息子十兵衛と共に行う。

 南原幹雄 「寛永風雲録」

 柳生家の立場を固めるために寛永御前試合を提案。

柳生十兵衛 (やぎゅうじゅうべえ:1607〜50)

 柳生但馬守の嫡子。実名三厳。父の所領は弟弟宗冬とで分割相続された為、彼自身は大名ではなかった。

 山風版 「伊賀の聴恋器」「柳生忍法帖」「魔界転生」「柳生十兵衛死す」「死なない剣豪」

 十兵衛の登場作品では敵味方を問わず妙に女っ気が多い。第一弾「柳生忍法帖」ではその設定上女性が多いのは当然であった。彼の役所は千姫の依頼で登場し仇討ちを手助けする助っ人であった。ちなみにこの作品の原題は「尼寺五十万石」という。

 第二弾「魔界転生」では転生した父但馬守や宮本武蔵すらも討ち果たす。これも実は原題は違っていて「おぼろ忍法帖」と言ったらしい。 彼の行動目的は頼宣を魔界衆の陰謀から解放し紀州藩を守ることであり、その意味で後援者である松平伊豆守とは利害を異にする。此処でも彼は敵側の女性に助けられている。何か女王陛下の国の情報部員を連想してしまった。

 第三弾「柳生十兵衛死す」は、まさに十兵衛の死を描くために構想を練られた作品だが、彼を倒した人物について書くのは主題ではない。この作品にはまさしく「女帝なりし人」が登場する。そう言えばどっちも頭文字はJだ。あれ何か論点が違うか。

 三部作以外でのちょい役は少ない。

 隆慶版 「柳枝の剣」「吉原御免状」

 弟友矩をを斬る際に右目を奪われる。父の死後所領を分割相続させられたのは恋人を殺された家光の報復だった。生涯に人を切りすぎたために怨霊に悩まされたため、指南役を放り出して柳生の里に篭る。弟義仙から庄司甚右衛門の存命を知りこれと戦ってその奇剣に討たれる。

 光瀬龍 「寛永無明剣」

 この時期、大和柾木坂にあって諸国探索の網を張る。

 人類滅亡を防ごうとする一味と入れ替わっていて、敵対する時空管理局の現時駐在員と寛永御前試合にて戦う。

 柴錬版 「運命峠」「赤い影法師」 「徳川三国志」

 大久保彦左衛門と共に武蔵を目撃。武蔵の仕込んだ少年と戦おうとするが、父但馬守に制止される。父の命を受け目付朝比奈弦右衛門を斬りそのまま行方をくらます。

 生きていた真田幸村の依頼で薩摩へ潜入し、大坂より落ち延びていた秀頼がもはや再起不能であることを見届ける。

 家光御前における試合(いわゆる寛永御前試合)において、大和の浪人正木市之丞の変名で尾張柳生兵庫次男(こちらも尾張郷士石川新太郎を名乗る)と立ち会う。結果は父の狙い通り、引き分けとなる。

 後日、勝ち構えて再試合を持ちかけるが、忍者の邪魔が入って果たせず。

 父但馬守の密命を受けて松平伊豆守に接近した。父よりも伊豆守の方に親近感を覚えるようになる。

 松枝蔵人 「瑠璃丸伝」

 天海の手下となって裏柳生忍軍を組織する。

 魔王の秘密を知って狂死したらしい。

 荒山徹 「柳生薔薇剣」「柳生百合剣」「友を選ばば」「柳生黙示録」「竹島御免状」 「十兵衛両断」「韓流夢譚」「剣法正宗遡源」 「柳生大戦争」 「砕かれざるもの」

 友景サイクル(「薔薇」「百合」)では、シスコン(姉萌)。これはじゃじゃ馬キャラの姉を含めて山風作品「伊賀の聴恋器」を踏襲していると思われる。愛する姉を奪った幕屋大休を生涯の宿敵とする。この時のトラウマで腑抜けになるが、勘当された事で断脈の術の影響から免れる。百済団との戦いで復活を果たす。その後は隠密活動に従事。弟列堂の早世を利用して死を装って裏柳生を維持統括する。孫娘の婿幸徳井友信(友景の曾孫)とともに最後の戦いに臨む。

 鳳凰サイクル(「十兵衛両断」)では、「剣の道は天稟がすべて」と豪語するが、肉体を韓人の妖術で奪われてその言葉が自分自身を苛む事になる。鍋島元茂の依頼を受けた筧柴風庵の指導を受けて復活し、宿敵を見事討ち果たす。までは良かったが後半生を掛けた生き甲斐が幻と知って倒錯を起こす。

 そして大戦争サイクルでは、父但馬守を斬って逃亡中の弟友矩を討つ為に朝鮮半島へ渡る。どうにか友矩は討ち果たしたモノの…。

 第四の逆十字サイクルではヨーロッパに渡って密命を果たし、帰国後は島原の乱でその巨魁森宗意軒天草四郎を討つ。前田家の護符「乾雲」「坤龍」の奪取に成功するも、第三勢力の横槍を受ける。八丈島で流人の宇喜多秀親を奇策を用いて倒すが、その弟秀景に敗れる。

 五味康祐 「二人の武蔵」 「曙に野鵐は鳴いた」「火と剣と女と」「居斬り」「無明斬り」「秘し刀 霞落し」「少年連也と十兵衛」 「柳生十兵衛八番勝負」 「柳生武芸帳」 「十兵衛と竹村頼角」 「柳生天狗党」

 坂崎出羽守を討った際に片目を刺された(「柳生武芸帳」)。この際に出羽守の遺児主馬之助を引き取って面倒を見るべきと父に進言し受け入れられている。

 父宗矩の指示で岡本武蔵を辻斬りに誘い、皮袴組とかち合わせる。

 将軍家光直々の密命を受けて隠密活動を行い各地でその剣を振るう。その動向を知るものは父宗矩一人。時には父すらもその消息を知らない。隠密行の過程で各地に隠し子を残しており、彼らの年齢を検証すると十兵衛の隠密活動の一端が垣間見える。

 その切っ先は同門も容赦しない。尾張柳生へ偽名で入り込んで、将来の禍根となるであろう天才児連也を始末しようと目論んだ。 

 えとう乱星 「蛍丸伝奇」 「用心棒・新免小次郎」

 父但馬守の指図で柳生の庄へ籠もって剣士の育成に当たる。剣理の探求に明け暮れ、各地の達人を倒してはその技を奪い、柳生流に取り込む。

 疱瘡を患って右目を父にえぐり取られる。以来、精巧な義眼を入れる。助九郎が作り出した(本人とは逆の左目を隠す)偽の十兵衛を逆用して松山主水の心の一方を破る。

 新免小次郎と戦い、五年殺しを受ける。宗冬の打ち出した忍びの統制政策に反旗を翻した忍び達の襲撃に倒れる。

 池宮彰一郎 「天下騒乱」

 荒木又右衛門を殺すに惜しい男として助太刀から外そうとする。だがこれが逆に又右衛門の評価を高め、抜擢を受けることとなる。

柳生友矩 (やぎゅうとものり:1612〜1639)

 但馬守の次男。兄十兵衛、弟宗冬とは異腹。夭折した事に加え、家光に愛でられたというその美貌から様々な解釈を為される。

 隆慶版 「柳枝の剣」

 その美貌により家光の寵愛を受けて大名に取り立てると言うお墨付きを得るが結果としてこれが彼の命を縮めることとなった。刺客として現れた兄十兵衛と戦って命を引き換えにその右目を奪う。

 五味康祐 「柳生武芸帳」「堀主水と宗矩」

 弟宗冬がくノ一の術(女装術)を会得するためにその歯を抜く役目を果たす。

 労咳を患って死期を悟っていた彼は死に場所を求めてか、加藤明成の元を退転した堀主水一行に対する刺客を志願。人知れず討たれる。

 菊地秀行 「柳生刑部秘剣行」 「からくり師蘭剣」シリーズ

 離魂病による二重人格。死より甦って隠密任務を果たす。

 蘭剣を追う過程で彼の操る祖父石舟斎と数度の対決を経てこれを超える。

 荒山徹 「柳生百合剣」「柳生黙示録」 「十兵衛両断」「剣法正宗遡源」 「柳生大戦争」 「砕かれざるもの」

 彼の死に方でサイクルが分かる。(ある意味ネタキャラ)

 友景サイクル(「百合」)ではブラコンのレベルを超え、兄十兵衛に密かな思いを寄せているらしい。その続き(「黙示録」)では切支丹となり、兄十兵衛に斬られる。が不死人として再生し別人として再生する。

 鳳凰サイクル(「十兵衛両断」)では、朝鮮妖術師に体を乗っ取られた十兵衛に斬られる。その後日談(「剣法正宗遡源」)では烈堂の実父であるとされる。

 そして大戦争サイクルでは、隠密活動の過程で上泉伊勢守の高弟・神後伊豆と出会いその技を継承する。神後新陰流を用いて父但馬守を退ける。朝鮮へと逃れるが追ってきた兄十兵衛に斬られる。

 第四の逆十字サイクルで、初めて兄以外の相手に斬られる。船に弱いという弱点が判明。

柳生宗冬 (やぎゅうむねふゆ:1613〜1675)

 但馬守宗矩の三男。飛騨守。十兵衛の同母弟。

 父但馬守の死後、柳生家は長兄十兵衛三厳に八千三百石、飛騨守宗冬に四千石、末弟義仙に芳徳寺の寺領として二百石と分割され、一時大名でなくなった。十兵衛はこれを不服として柳生の庄に籠もってしまったらしい。

 兄の死によりその遺領を継ぐが、自身の四千石は召し上げられる。宗冬は一代でその不足分を埋めて一万石の大名へと返り咲く。これを見ると父に一番似ていたのがこの三男坊であったのかも知れない。神君家康の後を継いだのがやはり三男秀忠であったというのは偶然であろうか。

 山風版 「魔界転生」 「柳生十兵衛死す」

 張孔堂の探索でへま(柳生如雲斎に打ち据えられて、腰に”尾”の文字を刻まれる)をして、父但馬を嘆かせる。

 柳生家を守るために暴走気味の兄十兵衛(実は能で入れ替わった室町の十兵衛)を斬ろうとするが、あのままであったら返り討ちにされていたかも知れない。

 隆慶版 「ぼうふらの剣」「柳枝の剣」「吉原御免状」

 兄弟の中で唯一剣の素養に欠け、それ故に人を斬らずにきれいなままで一生を過ごす。剣から遁れるために能楽に嵌ることで却って剣の道に目覚める。

 弟義仙の暴走を懸念して、宿敵松永誠一郎に柳生の剣を全て見せて討たせようと目論む。

 荒山徹 「柳生黙示録」 「剣法正宗遡源」 「柳生大戦争」

 友景サイクルでは「黙示録」が初登場。兄十兵衛の妻となったヤスミナ姫に意外に筋がよいと褒められる。

 鳳凰サイクルでは、日本の剣法の起原は朝鮮にあると言う妄言を吐く韓使と、それに阿る朝鮮数寄の儒者達に呆然と成る。同席した松平伊豆守は同情的であるが、役には立たない。

 大戦争サイクルでは弟友矩との確執から、半島へ渡って対決するが全く歯が立たず。友矩の弟子に葉を折られ、妖術師安巴堅にしゃべる入れ歯を入れられる。

 五味康祐 「柳生武芸帳」「柳生天狗党」

 兄友矩に歯を抜かれくノ一の術(女装術)を身に着ける。

 口臭の為、将軍との稽古に際して天狗の面を着ける。これを利用してしばしば替え玉を稽古に送り込んでいた。病床に伏していてなかなか登場しなかったが、実は仮病で仮面を利用して暗躍する。

 将軍家綱の後継を巡る陰謀に巻き込まれた兄十兵衛の遺児達を非情に斬り捨てる。

 えとう乱星 「かぶき奉行」 「用心棒・新免小次郎」

 御前試合の際に疋田陰流の剣士に小細工を仕掛ける。主人公に柳生連也の身代りを依頼。

 知矩として家光に仕えていたが、修道の関係を疑った父但馬守の命で死んだことにされ、顔を変えて宗冬と名乗る。その際に歯をすべて抜いて義歯を入れる。(元ネタは「柳生武芸帳」であろう)

 死期を悟って弱気になった父を排除して柳生忍軍の全権を握る。大老酒井讃岐守と結んで慶安事件や承応事件を裏でコントロールして得点を稼ごうとするが、光圀の関与を見逃して伊豆守に功を持って行かれた。

 柴錬版 「南国群狼伝」

 隠居した父の助言を受けつつ影を追う。

 烈堂義仙

 柳生但馬守の末子。柳生家の菩提寺芳徳寺の住持・義仙。柳生モノでは裏柳生の総帥として描かれる事が多い。

 隆慶版 「慶安御前試合」「吉原御免状」

 兄宗冬との試合に向かう柳生連也を襲撃するが失敗。

 大和笠置で庄司甚右衛門と遭遇、これを聞いた十兵衛はこれを討ちに行って返り討ちとなる。十兵衛亡き後の裏柳生の総帥となり、兄宗冬の意に逆らって酒井忠清と結んで吉原との暗闘を繰り広げる。

 左門友矩の同母弟で、友矩の非業の死に憤っていた生母お藤は義仙の柳生家離反に肩入れした。(実際に義仙に助力したのは従兄の小夜だったが)

 荒山徹 「竹島御免状」 「剣法正宗遡源」 「魔岩伝説」

 友景サイクル(「竹島」)では早世し、兄十兵衛に名前を利用される。

 鳳凰サイクル(「剣法」)では韓人・柳十衛に斬られた刑部少輔友矩の遺児とされる。伯父十兵衛が朝鮮柳生を殲滅するために創設した芳徳寺衆の総帥となる。そして朝鮮柳生殲滅のために渡海して…。

 逆十字サイクル(「魔岩」)では裏柳生最後の総帥として名前だけ登場。

 えとう乱星 「用心棒・新免小次郎」

 新免小次郎に護衛されて兄宗冬の追撃を逃れる。途中、猿飛佐助から忍びの技を教わる。十兵衛の死で一時荒みそこを宗冬に付け込まれ利用されるが、小次郎に諭されて正道に戻る。

 宗冬の死後の柳生を裏から支配する事になる、らしい。

 五味康祐 「柳生天狗党」

 名前だけ登場。剣術は弱いらしく姪のもゆら(十兵衛の遺児)にすら負けると言う。この末娘は最後まで登場しなかったが、兄たちの悲運を思えば出てこなくて良かったと言うべきか。

忍び組頭列伝 外伝・壱 柳生一族

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