忍法帖以外の長編
一般に忍法帖に分類されている十兵衛三部作もここに含みます。
「婆沙羅」
婆娑羅大名の代表格、佐々木道誉高氏の一代記。これ一冊で、一区分。
「室町の大予言」
「室町少年倶楽部」
「室町お伽草紙」
戦国のオールスターキャスト。出来れば年表に加えたいのだが、光秀の存在が上手く整合しないので。
(普通の)時代小説
「妖説太閤記」 上下 (講談社大衆文学館文庫)
天野絵の表紙で復活しています。(05/11/02追記)
登場人物 多数に付き略
「叛旗兵」 (廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全7「叛旗兵」) 評価B
直江山城守とその四天王を巡る物語。山城守の娘伽羅の婿となった正木左兵衛を鍛え直す為に、婚礼に参加した大名達(加藤清正・福島正則・蜂須賀家政・伊達政宗・浅野長政等)を相手に一暴れする。
武蔵と小次郎がセットで出てくるのは、石川版「柳生十兵衛死す」に継承されている。その上司はもっと大物だったけど…。
娯楽時代小説としても特出すべき作品である。いくつものエピソードから構成され、全体として一つのまとまりを持つというのは、ミステリー以来の氏の得意手法なのだろう。中でも二条城松の廊下浅野と吉良の先祖による逆刃傷事件は皮肉である。
徳間文庫から上下巻で復刊。(副題の「妖説直江兼続」というのは狙いとして上手いかも)
その他登場人物 家康・本多正信・本多長五郎・加藤清正・庄司甚内・伝心月叟
「いだ天百里」 (廣済堂文庫 → 徳間文庫・白波五人帖との合本) 評価D
忍法帖シリーズに先行する時代小説。主役は忍者ではなく撫衆(なでし)と呼ばれる山の民。後の忍法帖に出てくる重要人物も何人か登場。
シリーズ全体の構成から見ると評価が低いのはやむを得ないか。作者が室町物を書けない理由として挙げている「書けない言葉」に微妙に抵触する所為かもしれない。コードに引っかかる、と言う点では評価から外された「忍法創世記」にも通じる。
コミック版。
「白波五人帖」 (集英社文庫 → 徳間文庫・いだてん百里との合本)
忍法帖を書き始める直前の作品。木曾川の治水工事に始まり、弁天小僧の意外な素性や、加賀騒動との絡みなど仕掛けが盛りだくさん。加賀騒動に連座して赤星十三郎と心中するお麻は、実際の加賀騒動の登場人物浅尾の変形であろう。史実と違う最期を遂げる場合には人物名前を意図的に変えているらしい。
「八犬傳」上下 (廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全20・21) 評価A
馬琴の執筆風景を描いた実の部分を転記。「忍法八犬伝」でも書いたけど、その内に八犬伝の話をそっくり年表に組み込むかも。
ゲスト 葛飾北斎
「御用侠」 (小学館文庫) 評価E
文政年間としか書かれていないので、年代の特定が難しいかと思ったんですが。高野長英が江戸に出てきたのが文政三年で、河内山宗俊の獄死が文政六年ですからその間の話だと判断出来ます。
「旅人国定龍次」 (廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全15・16)
国定忠治の遺児・龍次の渡世人修行。次郎長一家とも懇意になり荒神山の決闘にも一役買う。博徒同士でやりあっている間はまだ良いんですが、薩摩の討幕運動に巻き込まれてからがどうにも悲惨である。黒幕は例によってあのお方。新撰組や坂本龍馬も登場する。
天狗党に加わっていた異母兄大谷国次(短編「大谷刑部は幕末に死ぬ」の主人公)と行き会って父の形見小松五郎義兼を受け取る。
「魔群の通過」 (廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全18 魔群の通過) 評価A
作者が日本国唯一の内戦と位置付ける水戸天狗党の悲話。脚色がほとんど無いはずなのに、作者の味が滲み出ている。ネタと作風とが見事に一致したんでしょう。
行軍に紛れ込んだおゆんが、体を張って脱走者を生み出してゆく様は忍法忠臣蔵に通じるモノがある。くノ一達が一人落とすのにも苦労してたことを考えると凄い手腕である。あるいは落とされる方の覚悟が足りないのか?
「修羅維新牢」(廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全3「修羅維新牢」) 評価C
「神曲崩壊」 (廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全23 神曲崩壊) 評価C
年表のラストを飾るオチになっています。
「柳生忍法帖」 (同名の講談社文庫・忍法帖全集上下巻) 評価A
十兵衛先生のキャラがいまいち掴みにくいと言うか、余り好きじゃないんですが。むしろ脇キャラの方が好ましい。出るはずじゃなかったのに出してみたら、後々までキャラが定着したと言う点では「本陣殺人事件」の金田一耕助と双璧かも。
映像化作品。自己責任でご覧下さい。「くノ一忍法帖 柳生外伝 江戸花地獄・会津雪地獄」
「魔界転生」 (同名の講談社文庫・忍法帖全集上下巻) 評価A
改めて読み直してみるとやはり凄い作品ですね。評価に関してはAAAでしょう。
作中に年代確定の難しい事件が何件か有るのですが、その内に推定で出します。
但馬守と胤舜の対決。荒木又右衛門のみがこれを見分。(鍵屋の辻の決闘の数年前)
十兵衛、父・但馬守に片目を潰される。(十兵衛二十歳前後)
兵庫、江戸へ行き叔父・但馬守との手合わせを所望。但馬は拒絶。(武蔵との出会いの前か後か)
劇場版。
「柳生十兵衛死す」 上下(同名の富士見書房・時代小説文庫) 評価B
十兵衛三部作の最後を飾る快作。忍法帖ではなく室町物に属するらしい。「魔界転生」ではあれほど柳生家の存続を気遣っていたのに、此方では殆どお構いなしで、下手すると弟宗冬をも斬りかねなかったほど。まあ中味が別人だったんですけど。
小学館文庫にて現役。