廣済堂文庫 山田風太郎傑作大全
内短編集について紹介。ミステリー作品については山田風太郎推理帖にて紹介。またその他の長編については別に一覧を設けています。
徳間で短編の再編があったので、すべて纏まるかと思いましたが、最初の4冊で止まった模様。
1 妖異金瓶梅 ミステリー
2 十三角関係 ミステリー
3 修羅維新牢 その他の長編
4 誰にでも出来る殺人 ミステリー
5 売色使徒行伝 切支丹モノ 徳間文庫版「山屋敷秘図」に再録。
6 天国荘奇譚 ミステリー
7 叛旗兵 その他の長編
8 夜より他に聴くものもなし ミステリー
9 剣鬼と遊女
「剣鬼と遊女」 (徳間文庫「妖説忠臣蔵/女人国伝奇」に収録)
「元禄おさめの方」
元禄時代を代表する三人の男、将軍綱吉とその寵臣・柳沢吉保そして妖僧・護持院隆光。その三人を意図せずして動かした元禄の真の作り手たる女性の話。
「姦臣今川状」
今川氏真を評して善大将というのは上手い。歴史上愚者と見られる人物に対するこの種の逆転的な評価は他の作品にも見られる。
「筒なし呆兵衛」
忍者が登場すると言う事でちくま文庫へ滑り込みで収録。
「紅閨の神方医」
「陰萎将軍伝」
これも人物評価を逆転させる作品。
家定を徳川将軍中最低であると述べた後、実は韜晦であったと言う設定が語られる。で、納得し掛けたところで、ラストの一言。これですっかり判らなくなります。
10 青春探偵団 ミステリー
11 切腹禁止令
「殿様」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
養父藩西尾伯耆守は架空の大名である。
「一、二、三!」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
「三剣鬼」
三人の人斬りを女性の立場から描いた物。
「嗚呼益羅男」 評価B
忍法が出てこないとして、ちくま版からは漏れました。
「妖剣林田左文」
黒田家に仕えていたという剣術の名人林田左文(あるいは左門)の逸話と、後に起こる黒田騒動という全く無関係な二つの事件を巧妙に結ぶミッシングリング。
「南無殺生三万人」
三万人を殺したと言われる初代「火盗改め」中山勘解由の物語。
「切腹禁止令」 (筑摩文庫・山田風太郎明治小説全集第6巻にも収蔵)
明治政府の公儀人として切腹禁止令を提案した男が、遂に切腹に至る顛末。
12 赤い蝋人形 ミステリー
13 いだ天百里 その他の長編
徳間文庫に白波五人帖との合本あり。
14 長脇差枯野抄
「妖僧」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
「妖説太閤記」中でこのネタが別の時期に使われているので。これ以上、本能寺ネタはいらないと言う話も…。
「宗俊烏鷺合戦」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
河内山宗春。但し作中では宗俊と表記。
「山童伝」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
生き延びていた島左近。
「起きろ一心斎」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
柳生宗冬と由比正雪が戦ったという寛永御前試合については「山田真竜軒」(江戸にいる私」収録)にも記述有り。
「死顔を見せるな」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
柳生刑部と幕屋弓之介。
「売色奴刑」
「長脇差枯野抄」
敵討ちの成功、で話が終わらないところが意地悪である。
「盗作忠臣蔵」
後期の作品ですが、忠臣蔵のパロディとしては秀逸。
15・16 旅人 国定龍次 上下 長編
(講談社文庫版を所有)
17 死なない剣豪
「降倭変」 (徳間文庫版「山屋敷秘図」に再録)
「幽霊船棺桶丸」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
基本的に日本国外の話なので年表対象外作品。
「お玄関拝借」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
松平伊豆守の老中就任(寛永十年)から島原の乱(同十四年)の間。井伊直孝と屋敷で会談している。全くの独断で、これを寛永十三年とします。伊豆守の口振りから直ぐ乱が起きそうである、と言うのが表向きの理由で、単にこの年に事件が記述されていないからです。とすれば、伊豆守と井伊直孝の話題は清国の建国に対する幕府の対処についてでしょう。
「国定源氏」 (徳間文庫「地獄太夫」にて紹介)
水野左近将監の手下としてその出世に一役買う鳥居耀蔵。で出世を果たしたら一転して…。
「慶長大食漢」
家康を呆れさせた男。
かつて角川版に収録されましたが忍法が出てこないとしてちくま版では落ちました。
「死なない剣豪」
「お江戸英雄坂」
鳥居耀蔵はまだしも、相馬大作は知りませんでした。当時はいざ知らず、今ではローカルすぎて。但し、明治物にも落とし胤と称する人物が出てくるので、山風マニアには重要人物である。
18 魔群の通過 その他の長編
19 ヤマトフの逃亡
幕末モノを集めた短編集。
「からすがね検校」
二人の幕末の英傑(男谷精一郎と勝海舟)を孫に持つ怪人物・からすがねの検校と柳生家の因縁。最後に”柳生十兵衛”が斬られるところが何とも皮肉で良い。
脇役 柳生飛騨守
「大谷刑部は幕末に死ぬ」
国定忠治の遺児・大谷刑部国次の活躍と、その影で動く討幕派の大物。
「笊ノ目万兵衛外へ」
「伝馬町から今晩は」
牢より逃げ出した高野長英のその後。
何ともやりきれない話です。
「親切な」「情の濃い」「熱血の義侠の人」が立場が変わった時、他人に同様の態度を要求する(作者は穏便に「期待する」と言っているが)様は実におぞましい。強者の立場に有る時はいい人で居られるのに、弱者に成ると途端にエゴイズムが剥き出しになるのは日本人の特質だろうか。
「ヤマトフの逃亡」
久米蔵が語る日本人観は作者自身の物なのでしょうか。痛すぎてとても此処には書けませんが。
「新撰組の道化師」
新選組を書くに当たって芹沢鴨に着眼を置く辺りが流石というか。
20・21 八犬傳 上・下 長編
(角川文庫版を所有)
22 江戸にいる私
「山田真竜軒」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
伝説の寛永御前試合にまつわる裏話。ゲストととして荒木又右衛門が登場。
「悲恋華陣」 (徳間文庫「地獄太夫」に再録)
旧題「十字架姫」。ハルキ文庫「みささぎ盗賊」の解題では切支丹モノかと思われていたようです。
「黒百合抄」
高台院と淀の方の対立エピソード。作者の女性観が色濃く出ている作品。同系の「刑部忍法陣」や「幻妖桐の葉おとし」と合わせて読むと更に味わいが深いかも。
「明智太閤」 (徳間文庫「地獄太夫」にて紹介)
架空戦記?
「叛心十六才」
「くノ一忍法帖」との整合性については謎解録にて。
その他 松平長十郎
「江戸にいる私」
昭和の藪井庄一氏、源内の死(安永八年)と田沼山城守の刃傷事件(天明四年)を実体験する。一寸SFっぽい作品。
23 神曲崩壊 その他の長編
24 太陽黒点 ミステリー