内挿人名事典 第一の反復

☆ 史実情報・註釈 ★ 架空人物の出典

ジェラード,シビル ◎裏情報◎

 第一の主人公。有名なラッダイト扇動者ジェラードの娘。その為現政府や急進貴族を嫌う。

 父の処刑後、娼婦に身を墜とした彼女はホワイトチャペルにアパートに住み、チャドウィック氏キングズリー氏という二人の常連客を持つ。

 ヒューストン将軍の宣伝係を務めるミック=ラドリーと出会い、彼の誘いに乗ってフランスで新たな人生を歩むことを決めるのだが…。

 1905年、恐らく自宅から、英仏海峡横断飛行船”ブルネル卿”号を眺める。

★作中にも登場するベンジャミン=ディズレイリ氏の書いた小説「シビル」の登場人物。

ラドリー,マイケル(ダンディ・ミック) ◎裏情報◎

 マンチェスター出身の腕のいいクラッカーサム=ヒューストン氏の秘書で宣伝担当。彼のテキサス復位を画策する。

 ダンスアカデミーで出会ったシビルがあこがれの英雄ウォルター=ジェラードの娘だと知り、彼女をパリへ誘う。だが、シビルとコーニィにやらせたお芝居が効き過ぎてヒューストンからお払い箱にされる。将軍が盗んだカードを取り返そうとするが、様子を見に行ったときに部屋に潜んでいた暗殺者の凶刃に倒れる。

★「シビル」の登場人物の一人。

ウィンタホールター夫人

 シビル達に顧客を世話する遣り手婆さん。

 自分のところの女の子が自室で商売をするのを厳しく禁じる。

ジェラード,ウォルター

 シビルの父。46年、エグレモントの裏切りによりラッダイト煽動者として逮捕、処刑される。また31年のウェリントン侯爵暗殺の罪も擦り付けられた。 

 実体は労働者の権利拡大を謳ったチャーティストであったと思われる。

★「シビル」の登場人物。

ヒューストン,サミュエル(1793,3/2〜1863,7/26) ◎裏情報◎

 テキサスをメキシコより独立させた建国の英雄。テネシー州の生まれ。アンドルー・ジャクソン将軍の元でクリーク族と戦う。

 南北戦争の勃発時に反英勢力に大統領の座を追われ亡命。フランスの影響下にあるメキシコで義勇兵を集めて復位を狙う。

 ロンドン滞在中、テキサス人の刺客に撃たれるが、胸に入っていたパンチカードに阻まれて辛くも一命を取り留める。

 70年、フランス人支配下のメキシコ・ヴェラクスルで客死。(つまりメキシコ帝国は70年代にも健在であるらしい)

☆史実より10年早い(独自の算定)南北戦争により大きくその運命を狂わせた。

エグレモント,チャールズ ◎裏情報◎

 元はラッダイトであったが、指導者であったウォルター=ジェラードを密告し、下院議員の地位を手に入れる。

★「シビル」の登場人物の一人。

バイロン,ジョージ=ゴードン男爵(1788〜1824) ◎裏情報◎

 妊娠中の妻アナベラチャールズ=バベッジを紹介される。

 30年の総選挙で急進派を躍進させる。30年代の騒乱の時代を乗り越えて、産業急進党の時代を築き”蒸気王”と呼ばれる。

 娘エイダは世間一般からは”機関の女王”と呼ばれるが、彼自身はリトルダァと呼ぶ。

 55年の大悪臭の最中に死亡。

☆史実では、妻の妊娠中に英国を出国、ギリシアの独立戦争に荷担しようとして途中で客死した。娘とは一度も会っていない。

チャドウィック氏

 シビルの常連客。C氏。

 フラムに嫉妬深い奥さんが居る。

キングスリー氏

 シビルの常連客。K氏。

 シビルが一番良いカフスリンクスをくすねたことを勘づいている。

アーロン氏

 アーロン父子商会の店主。ホワイトチャペル出身のユダヤ人。

 ミックと共に来店したシビルにカシミアのショールを掠め取られた。

ダーウィン,チャールズ

 進化論を急進派に評価され、貴族に列せられる。

 史実同様に本人は進化論の議論そのものには無関心である。

☆「種の起源」の作者。史実では発表は59年だが、この世界では既に世に出て論議を醸している。

エドワーズ,ハリエット(へティ)

 シビルと同じくミセス・ウィンタホールターの世話を受ける娼婦。デヴォン出身の大柄で騒がしいブルネット娘。

 しばしば自室へお客を連れ込み騒ぎになるが、大家のケアンズ夫妻は夫人に密告する様子がない。

 クレマーン・ガーデンズでマロリーを客にした。直接に面識のない二人の主人公を結ぶ糸。

マンディ

 シビル達の同僚。

ケアンズ氏

 シビル達のアパートの大家。家賃はウィンタホールター夫人が払っている。

 階下は《雄鹿》と言う酒場。

デュマ・アレクサンドル

 フランス製のトニック”ヴァン・マリアー二”を推薦。

☆言わずと知れたフランスの大作家。

バベッジ,チャールズ(1792,12/26〜1871,10/20)

 バイロン産業急進党の黒幕として、ヴィクトリア時代のロンドンに君臨。産業革命期のニュートンと称される。バイロンとは対照的に、礼儀正しく聡明で浮世離れしていた、とは二人を引き合わせたバイロン夫人の評。バベッジの政治理念を持ち前の弁舌で実現化したのがバイロンであった。

 またバイロンの娘エイダは母譲りの数学的才能を持ち、機関の完成に貢献した。

 その晩年には蒸気動力の限界にしびれを切らし、抵抗器(レジスタ)と蓄電器(キャパシタ)によるシステムを発想したと言う。

☆計算機械の原理を発案したが、物理的・経済的制約から完成しなかった。

ナポレオン三世 ◎追加情報◎ ☆国際問題考察☆

 ナポレオン一世の甥、ルイ・ナポレオン。フランス皇帝。イングランド人を皇后にしている。

 イタリア遠征がナポレオンの出世の第一歩であったことからイタリア統一の動きには積極的な介入を見せた(と思われる)。

☆ 恐らくナポレオン贔屓であったバイロン首相の後押しにより、史実より登場が早い。

シムズ,コーニィ

 ミックの依頼で、ギャリック劇場でシビルの相手役を務めた役者。

ラドウィク,フランシス ◎裏情報◎

 古生物学者。斉一説論者。ケンブリッジの研究所ではバベッジと一緒に研究をしていた。

 羽龍(ケツアルコアトルス)の発掘から気力学を構想する。

 自由貿易委員会から資金提供を受けてテキサスでの発掘作業を行う。帰国後、テキサスでの再活動を切望してミックを通じてヒューストンとの接触を図る。手足が長くて目の冷たい男につけ回されていた。どことなくテキサス風でヒューストンの密偵ではないかと勘ぐる。

 驚くほど容貌醜怪で大柄な男性とシビルに評される。

コリンズ,ウィリアム ◎裏情報◎

 いわゆる配当屋でレディ・エイダに対する恐喝者。ラドウィック教授にとんでもないことを言い出す。

☆年齢から見て犯罪小説の作家として知られるウイリアム・ウィルキー=コリンズと思われる。

グリーネイカー,ウィリアム

 ヒューストンの講演会で彼に声を掛けられた少年。

ジャクスン,アンドルー(1767〜1845)

 1812年戦争で英軍を撃退する。その為一部のブリテン人は今も彼に良い感情を抱いていない。

☆テネシー義勇軍を率いてクリーク族を打ち破る。将軍として、また大統領(1829〜37)として合衆国の領土拡大に多大なる貢献をした。

 24年の選挙でも選挙人獲得で第一位であったが、過半数を獲得できず二位三位連合に敗れた。

ジョーンズ,エドワード

 シビルヒューストンの講演会で呼んだ架空の兄。

キーツ,ジョン(1795〜1821)

 ギャリック劇場のキノトロピスト。如才ない青い瞳の小柄な男性。

 芝居を終えたシビルを介抱する。また、講演のためのキノピストとしてハクスリーマロニーに紹介したのも彼である。

 シビルとマロリー博士の両方と面識を持った数少ない人物。 

☆ロマン派詩人。史実では既に死んでいるはずだが、作中ではまだ存命。

 彼に先行するコールリッジとワーズワースが海外でのユートピア計画に成功して創作活動を行っていないため、これに続く彼も詩人の道を進まなかったのであろう。

スタンリー

 法廷弁護士で、へティの常客。チェーンスモーカー。

ウォレス

 テキサス人。ゴーリアドの生き残り。テキサスの巨人。

 サム・ヒューストンへの復讐のためにグランヅの部屋へ侵入。先に忍び込んでいたシビルを見つけ、殺そうとするが、様子を見に来たミックに矛先を移す。ミックの持っていた銃で戻ってきた本命を銃撃したが殺し損ねた。

 ラドウィック教授をつけ回して殺したのも彼である。持て余したバートレット夫人により毒殺される。

”アナグマ”

 シビルが以前に知っていた風俗取締官。

 レスター・スクエアとソーホーを持ち場にしていた。