内挿人名事典 第三の反復

☆ 史実情報・註釈 ★ 架空人物の出典

オウエン,サー・リチャード(1804〜1892)

 高名な爬虫類解剖学者として登場。”恐竜”という名称を発案し、また恐竜が哺乳類や鳥類と同じように代謝が進んでいるのではないかと示唆。

 古生物学宮殿でマロリーとすれ違う。

☆簡潔な解剖学名の創始者にして分類学者。

オリファント,ローレンス(1829〜1888) ◎裏情報◎

 自称ジャーナリスト。地理学協会員として各地で得た情報を政府へ送る仕事もしている。

 54年末には東京使節団に加わり、狼藉を受けて負傷する。この時5人の日本人をロンドンへ連れ帰る。

 第三の主人公。 

 ラドウィク教授殺害の一件を調査する過程でマロリー博士の銃器密輸行為を知り、彼に警告を発する。またエイダ事件に関していくつかの助言をする。

エルギン伯の秘書としてアロー戦争同行、その途上に日本に立ち寄って通商条約の調印に関して著作を残す。その後初代駐日英国公使となったオールコックから一等秘書官に任命され、公使館襲撃(第一次東善寺事件)で負傷している。

ハクスリー,ノエル(1856〜1860)

 父を訪問したマロリー博士を紹介されて医者なのかと怯える。

☆早世したトーマス=ヘンリーの長男。

フッカー,ジョーゼフ

 キュー国立植物園長。

☆北軍の将軍に同名の人物有り。

フォーブス卿

 王立協会の要人。ハクスリーに彼が叙爵候補者である事を告げる。

ディズレイリ,ベンジャミン(1804〜1881)

 扇情的なロマンス小説を書く。

 彼をマロリーに紹介したハクスリー氏によれば、「無鉄砲だが、素面の時は頼りになる」という。ユダヤ系。

 マロリーの冒険談を脚色して”ファミリー・ミュージアム”に連載する。

☆小説家にして政治家。小説「シビル」の作者でもある。トーリー党の首魁として後に総理にもなった人物であるが、この世界では政治とは無縁。恐らく、父が改宗しなかったので、立候補出来なかったのであろう。

アガサ

 エドワードの妹でマロリー家の次女。既婚者、子供有り。ディズレイリ氏の著作の愛読者。

ダランベール,ジュール

 ハクスリーマロリーに紹介した発声教師。フランス人なのに美しい英語を話すという。

リークス,トレナム

 ハクスリーの下で副館長を務める役人。

 雷竜の骨格配置をフォーク博士の説に合わせるが、旧知であるマロリー博士の主張で見直される。

フォーク,ピーター

 斉一論者。ラドウィックの盟友でマロリーの論敵。雷竜が水棲で冷血動物だと主張する。

 ラドウィックの死にマロリーが関係していると信じて、二人の私立探偵(J=C・テイトジョージ・ヴェラスコ)を使って彼を探らせていた。

 十二才にも成らない女の子をベッドに連れ込んだとしてその社会的地位を失う。

バートン,サー・リチャード=フランシス(1821〜1890) 

 地理学協会の著名な探検家。メッカへの旅行で有名。

 特別会員の指名委員会でマロリーの審査に加わる。

☆実在の探検家。メッカへの旅行は史実では53年。

エリオット

 第一級の地理学者。コンゴの探検を行ったと見られる。

 特別会員の指名委員会でマロリーの審査に加わる。

☆実在確認できず。

ウェイクフィールド,アンドルー

 砂色の髪が後退しかけた青白いスコットランド男。

 中央統計局のQC=50担当次官で、ブリテンで活動する様々なグループの動向をオリファントに流す。

トバイアス,J=J 

 郷士、キノトロピー。

 ラドリーが関わったおかしなヤンキー政治家の講演も見ていた。

 中央統計局に勤めており、上司に代わってマロリーの応対をする。

 66年にギャリック劇場を手に入れて、55年夏の騒乱を題材にしたキノトロープを上演する。

バートレット,フローレンス=ラッセル ◎裏情報◎

 リヴァプール出身。毒殺魔。53年春、夫の殺害容疑で捕らえられるが、拘置の前に逃走。その後フランスで同様の事件を起こしたフローレンス・マーフィーも彼女ではないかと見られている。

 錐刀の男と共にレディ・エイダを脅していた赤髪の女。マロリーが中央統計局の機関を廻して特定する。

マロリー,ルース

 エドワードの妹。五女、末っ子。55年現在17才。

 兄に近況報告の手紙を出す。

マロリー,ブライアン

 エドワードの弟、マロリー家の三男。第六子。

 クリミア戦争の帰還兵。インドではセポイの反乱と戦う。

 6月17日に帰郷。弟トムと共に兄を訪ね、フレイザー警部を含めた四人でゴロツキ達の潜む西インドドックへ向かう。

マロリー,マデリン

 エドワードの妹でマロリー家の四女。55年現在22才。

 6月29日にブライアンの同僚であったローリングス,ジェリーと4年来の婚約が果たされるはずであったが、エドワードへの中傷攻撃の巻き添えで破棄される。

ローリングス,ジェリー

 砲兵中尉。ブライアン=マロリーの戦友で、その妹マデリンの婚約者。

 クリミアより帰国し、55年の6/29に結婚式を挙げる予定だったが、彼女への誹謗により流れた。

アーネスティーナ

 エドワードの妹でマロリー家の長女。既婚者で、現姓は不明。子供有り。

マロリー,ドロシー

 エドワードの妹、三女。消息不明で、家族の間では話題にされない。

ウェリントン公爵(1769〜1852)

 アーサー=ウェルズリー。

 トーリー党を率いて政権にあった30年、総選挙で躍進した急進派を押さえようとして30年代の騒乱の時代を招く。31年に爆弾テロで死亡。ナポレオン戦争での功績も「英仏の間に無用の誤解をもたらした」として悪評にすり替わってしまった、不幸な人物。

 かつてハイド・パーク・コーナーにあった彫像も、英仏協約を記念してルイ・ナポレオンから贈られたナポレオン門に代わる。

☆史実では30年に政権をホイッグ党へ明け渡す。ナポレオン戦争における英国の英雄だが、政界に転身してからの業績はあまりぱっとしない。公爵位なんか貰わなければ良かったのかも。

テイト,J=C

 元刑事、現在私立探偵。裏取引屋のヴェラスコとコンビを組む。咳男。

 某碩学に雇われてマロリーをつけ回すがかつての同僚フレイザー警部に尻尾を捕まれて寝返る。その碩学が没落した後、某政治家に雇われてオリファントの部下ベタレジを連れ去る。

ヴェラスコ,ジョージ

 テイトの相棒。裏取引屋。父はスペイン王党派の難民。本人は生粋のブリテン市民だと主張するが。

 相棒に気を取られているマロリーを後ろから殴り倒す。

ブライ

  オリファントの執事。

 襲撃を受けたマロリーを介抱し、また来客と共にその落とし物を探しに行く。

オリファント家の客

 オリファントが日本から連れ帰った若者。

 マツキ・コウアン氏、モリ・アリノリ氏、フクサワ・ユキチ氏、カナエ・ナガサワ氏、サメシマ・サヒノブ氏。

☆松木弘安(1832〜93)寺島宗則の別名。61年の幕府の遣欧使節や65年の藩命の遣英使節に参加。

☆森有礼(1847〜89)藩命によって渡英。オリファントの招きで渡米し、新生活教団で一年間生活する。作中年代ではまだ八歳の筈だが。

☆福沢諭吉(1835〜1901)森と共に明六社の創設メンバーの一人。この世界設定だと蘭学ではなく、いきなり英学を学んだで有ろう。

☆長沢鼎(1853〜1934)本名磯永彦輔。オリファントと親しくなり渡英、トマス・レイク・ハリスの門人となる。作中の年代ではわずか二歳である。彼だけ名前が逆なのは別人としたい為であろうか。

☆鮫島尚信(1846〜80)オリファントの影響でトマス・レイク・ハリスの創始した新生活教団に入る。長沢ほどではないにしても、作中年代ではまだ九歳である。

ケリィ

 古生物学宮殿の管理人。アイルランド人。

ベルショー

 内閣関係者。

スィデナム

 博物館の職員。

キャプテン・スウィング

 バートレット夫人の連れの錐刀の男。

 レディ・エイダを殴ったところをマロリーに見咎められ、彼のボクシングで撃退される。

 マロリーに脅迫状を送り、また彼のする中に部屋に放火する。

 西インドドックでマロリー達と対決し、最後はフレイザーに手錠を掛けられる。

フレイザー,エベニーザー

 中央警察裁判所(ボウ・ストリート)の特別公安部の警部。

 マロリー博士と協力してバートレット夫人の一連の事件を解決。

 その後はレディ・エイダの親衛隊(お目付)を勤める。

ジェフリイズ

 ラドウィックの発見した翼手龍が跳べないと言い張った碩学。

 地下坑夫組合がバベッジ卿に出した嘆願書に対し口を挟んでストライキを誘発した。

 騒乱が納まった後、マロリーにやり込められる。

ラウドン卿

 マロリーが南アメリカで最初に発掘に携わったときに責任者。

バックランド

 ラドウィック教授の師。故人。古生物学会の重鎮。

☆ウイリアム・バックランド メガロサウルスの発見者。

パンサー・ビル

 マロリー博士フレーザー警部を取り囲んだ少年ギャング団のボス。

 車輪付きの靴で突進してきてガラス板に飛び込む。