8 怪談部屋 怪奇編
出版順はラスト。「既刊第九巻(少年篇)に入りきらなかった少年ものと、第十巻(補遺篇)の刊行後に発見された短編も併せて収めた」為に特に分厚い。
明記の無い物は本文庫での初読作品。
PART1 怪奇編
一言で纏めると「腑に落ちない(論理に落ちない、素直に笑えない)作品」であろうか。山風作品は一見荒唐無稽なのに何となく納得してしまう作品が多いので、この手の作品は以外に少ないと思う。
後の忍法帖の原型となる作品も多い。
出版芸術社版「階段部屋」(*を添付)に六編を増補し再編したモノで、その内「陰茎人」のみが(その内容から)七巻に収録されている。
「蜃気楼」 *
「人間華」 *
後の忍法帖を思わせる、美しい作品。
「手相」 *
「雪女」 *
何となく横溝作品を思わせる。
「笑う道化師」 *
「永劫回帰」 *
「まぼろし令嬢」 *
「うんこ殺人」 *
「万太郎の耳」(講談社大衆文学館「山田風太郎奇想小説集」にて初読)
「双頭の人」 *
これもはじめは横溝風かと持ったら…。
「呪恋の女」
「畸形国」 *
「黒檜姉妹」 *
「蝋人」(講談社大衆文学館「山田風太郎奇想小説集」にて初読) *
「万人坑」(講談社大衆文学館「山田風太郎奇想小説集」にて初読・徳間文庫の「山屋敷秘図」にも収録)
「忍者明智十兵衛」の原型。
「青銅の原人」
「二十世紀ノア」 *
外交官上がりの老首相(=吉田茂)の老獪さを揶揄。その一方でやがて来る原子力時代への警鐘を鳴らす。
「冬眠人間」 *
同一タイトルが三つあるが、少年向けの残り二編は九巻に収録されている。
「臨時ニュースを申し上げます」(山田風太郎傑作大全6「天国荘奇譚」(廣済堂文庫)にて初読)
当時恐れられていた第三次世界大戦モノ。而してその結末は…。
「1999年」(「男性滅亡」(ハルキ文庫)にて初読)
未来小説。しかし、ご本人もまさかこの年を越えて生きているとはお思いにならなかったようで。
PART2 少年篇
九巻に入りきらなかった少年物。
「あら海の少年」
海洋冒険モノ。
「ぽっくりを買う話」
「びっこの七面鳥」
少年名探偵一郎君。
「エベレストの怪人」
「とびらをあけるな」
少年モノの定番の一つ、悪の秘密結社モノ。
PART3 (補遺篇)
十巻の刊行後に資料提供を受けた物。
「無名氏の恋」
「私のえらんだ人」
七巻の「童貞試験」の類似品。
解説・菊地秀行
原本である出版芸術社版「階段部屋」にも帯に推薦文を寄せている。