魔法原理学

§1 魔法の根源と魔力の区分

 魔法を発生させる根源は、何度か述べたが、人々の思念である。そして、人の願いを具現化する技術体系として魔法が成立した。魔法使いというのは魔法システムを維持する管理者であってその主体ではない。彼らはいわば触媒のような存在であり、魔法に対して中立でなければならない。彼らは魔法を生み出す根源である混沌とアクセスする能力を生まれながらに持ち、それを制御する術を学んでいる。

 魔法使いの使う力は以下の四つのカテゴリーで分類される。これらは強さと言うより発生順に並べられている。

1−1 妖力(ヨウリキ)

 先天的な自力魔力は妖力と呼称される。妖力を持つ物は”魔性”体と呼ばれる。魔性体はその存在自体が魔法であり、魔力の元(マナと通称される)の薄いところでは生きられない。また、妖力以外の魔力は身につけられない。彼らは人間の想像力が生み出した生物であり、有る意味では人間に依存して生きていると言える。彼らが人懐っこいのは忘れ去られない為であろう。

1−2 験力(ゲンリキ)

 後天的に身につけた自力魔力は験力と呼ばれる。古代の魔法体系が確立する以前の魔道師、聖人はすべてここに分類出来る。

 験力を使う者は魔道師の用語では準魔性体と言う。一方神学用語では同じ者を半神(デミゴッド)あるいは使徒と命名している。彼らは信仰の対象になる事で事実上の不死を得る事になる。

1−3 法力(ホウリキ)

 信仰により上位魔法存在(妖力や験力の使い手を含む)より力を借りる物で法力と呼ばれる。これは前の分類から言えば後天的で他力性の魔力である。

 法力と験力の境界は非常に曖昧ではあるが、厳然として区別すべきものである。何故ならば、験力は個人の資質であり、その体得者は(神学的に見て)神を名乗るに足る資格を持つのに対し、法力は借り物でしかないのである。法力の持ち主は、魔道師用語で半魔性体と称される。神学的には験力と法力は区別されない。

 これは本人にも容易には判別が出来ない為、両者を混同し勘違いを起こす似非生神(まがいもの)は(決して数は多くないものの)いつの世も後を絶たない。

1−4 魔力 

  最後が(非常に矛盾した表現に聞こえるしれないが)先天的で他力性の物で、これが狭義でいう魔力である。(差を明確にするため、広義の物を”まりょく”、狭義の物を”まりき”と読む事もある)

 一般に言う魔道師とは、この力の使い手のみを指す。つまり魔道師とは「魔力を扱う能力、言い換えれば混沌への耐性を“先天的”に有するが、魔力を“自力”で発生出来ない存在」と定義される。

 法力と魔力との違いは力を借りる対象への認識の差でしかない。少なくとも魔力の使い手は自己を神に擬す事はない。他者からそう呼ばれる事はあっても。

 魔力の使い手は一般に非魔性体に分類される。これは魔法を使えない全ての存在を含む雑多な存在である。

 関連稿・魔法社会学・概論

 次稿に進む

 PPの表紙に戻る