探偵小僧の事件簿補注あるいは由利先生の事件年譜への架橋
御子柴進の略歴
戦災で両親を失い、姉美智子と二人暮らし(怪盗怪盗X・Y・Z)。遠縁の唐沢雷太の家で世話になっていたこともある(幽霊鉄仮面)。中学卒業後に新日報社に入社し、探偵小僧のあだ名でかわいがられる。
「幽霊鉄仮面」では邸宅が麹町三番町と有るのだけど、これは戦前のモノ。(この作品が書かれたのが戦前の昭和12年だから仕方がないのだけど)「蝶々殺人事件」によれば開戦(真珠湾攻撃の昭和16年を指すのだろう)と同時に国立へ移ったとある。しかし探偵小僧の活躍の多くが戦後である事は他の事件から明白である。
終戦後、三津木が先生の仲介で麹町の旧邸に間借しているので、麹町との関わりを完全に絶った訳ではなく、ある時期に取り戻したと考えられる。そのきっかけは先生が田舎に飽いたと言うより、現役復帰した千恵子夫人の提案ではないか。国立も戦後には開発され閑静な土地ではなくなっただろうし。
「蝶々」を再読したら、売ったのではなく「ひとに預け」たようだ。(11/03/07捕捉)
「夜光怪人」ではあの獄門島が、事件の現場ではなくて中継地点として、登場します。島の網元の鬼頭儀兵衛氏と清水巡査が居ることから同じ島であることはほぼ確実でしょう。金田一ならば清水巡査とは既知で紹介状など無用でしょうから、これは元の通り由利先生の事件とするのが妥当です。
早苗さんは登場しませんが、本鬼頭は既に没落したんでしょうか。
「まぼろしの怪人」で登場した社長邸の抜け穴が誰が作ったのか。「鉄仮面王」にてその謎が解き明かされる。かつて鉄仮面王を名乗って活動していた建築家宮本忠吉が自分の作った家に秘密の抜け穴と隠し金庫を設けて盗んだ宝石を隠していたらしい。
まさか二件続けて抜け穴突きの家に当たるなんて事はあり得ないだろう。「まぼろしの怪人」の一件で抜け穴の存在が明らかになっていたから、「鉄仮面王」の時には使えないように塞いであったと考えられる。
第一稿では入社を32年としていましたが、再読の結果一年繰り下げて33年としました。
年代確定の基準とした「姿なき怪人」の第3話が昭和34年8月。その前の第2話が6月でしかも入社二年目とあります。2話と3話の間に一年空いている可能性もありますが、それではあまりに間延びしすぎ。
入社を33年にしたことで、怪人たちとの対決が非常に錯綜していますが、その辺に付いてはまた項を改めて。
第一稿では32年のクリスマスに等々力警部の掛け持ちが起こっていました。この年は金田一モノの「悪魔の降誕祭」で等々力警部が出動しています。探偵小僧の入社年度が繰り下がったことで池上社長邸でのまぼろしの怪人の捕縛も可能となりました。ご苦労様です。
探偵小僧と戦った数ある怪人の中で最後まで捕まらず、また実名も明かされなかったのが白蝋仮面。彼は二度登場しているのですが、一度目は単独で、二度目は青髪鬼との三つ巴で。
二度目と言いましたが、「白蝋仮面」が5月で「青髪鬼」が3月なので、順番を逆にしたほうが流れとしては無理が無いのですが(実際にこの両作品はほぼどう時期に発表されています)、どちらも探偵小僧の入社の年と書かれているので致し方ない。
白蝋仮面と同様にその実名が明らかでない怪人としてまぼろしの怪人がいる。変装の名人と言う点でも共通点が多いのだが、捕縛されなかった前者に比べて、後者は度々入獄している。一つの可能性として後者が前者の部下ないし弟子ではないか。
未確定作品
「赤いチューリップ」
残念ながら年代を特定出来る要素が全くありません。
「魔人都市」
「鋼鉄魔人」と改題長編化されているのでそちらを読んでから検証します。