鉄拳精細
本稿は「忍者黒白草紙」を漫画化した「アイゼンファウスト」に関して原作・史実との差分を精査するモノです。
「忍法がつまらないから、ほんとうにつまらない小説になった」
とは忍法創世記についての作者の弁ですが、これは後期の忍法帖作品に共通して言えることでもあります。
言葉は悪いけれどネタ切れと言うことなのでしょう。特に長編は史実と絡めることで話を作っていますが、逆に史実とのすりあわせに汲々としているところが見えます。おそらくこの時期には忍法を入れない普通の時代小説に需要がなかったのでしょう。逆に一発ネタでいける短編(特に史実と絡まない、それ故年表にも載せられなかったモノ)の方がまだ良作が有りますね。
改めて原作を読み返してみると、そうした悪い傾向がもっとも顕著に見られます。キャラとしては実在の鳥居耀蔵があまりに立ちすぎて、主人公達の影が薄い。特に裏へ廻った塵ノ辻空也は途中全く出てこなくなります。
また出てくる忍法と言えば無線機代わりの「箒木の術」と頭領から譲られた「精奬」と「卵奬」を用いる邯鄲の術くらい。箒天四郎はこれを独自にアレンジを用いて見せるのですが、忍法として見るべき所は逆にそれだけと言えます。
長谷川氏はこれを漫画化するに際して、絵的な派手さを狙ってか、原作にない様々な忍法が飛び交う忍法バトルを描いています。そこで今回は巻ごとの差分ではなく、キャラ単位での差分に当たっていくこととしました。
第壱相 主人公達
第弐相 裁かれる者達
第参相 見えざる政敵