16 明治03 大阪事件まで

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明治十一年(承前)

 船戸巡査、安を逮捕し斬奸状の草稿を手に入れていたがそれを役立てることが出来ず、大警視より叱責される。(明治十手架)

六月 船戸巡査、斬奸状の件に関し十字屋を尋問、目論見を見透かされ狼狽する。(明治十手架)

06/10 陸奥宗光、西南の役に呼応しようとした土佐人との通謀により逮捕。(エドの舞踏会)

7月 井上馨、大久保暗殺の報を受けて帰国。(警視庁草紙・川路大警視)

07/27 大久保内務卿暗殺犯処刑。(警視庁草紙・妖恋橋お伝)

08/21 陸奥、判決により仇敵三島が県令を務める山形への収監がきまる。陸奥夫人、伊藤博文に、夫の危機を直訴。(エドの舞踏会)

 陸奥、牢内で女性を孕ませ、それを種にして身の安全を勝ち取る。(エドの舞踏会)

 安藤則命中警視、贋札事件の捜査のため関西へ派遣される。(警視庁草紙・川路大警視)

12月 川路大警視、パリへ出張。政敵・井上に追い出されたと言うのが世間もっぱらの噂であった。(警視庁草紙・川路大警視)

十二年

01/31 高橋お伝が打ち首の刑に処せられる。30歳(誕生:嘉永3(1850))。(警視庁草紙・妖恋橋お伝)

09/15 安藤中警視、藤田伝三郎を偽札造りの容疑で逮捕。(警視庁草紙・川路大警視)

九月 山形監獄で火災。陸奥宗光が焼死との誤報が流れ、伊藤博文陸奥の宮城移送を手配する。(エドの舞踏会)

10/13 川路、帰国途上の病状が悪化して死亡。(警視庁草紙・川路大警視)

12月 藤田証拠不十分で釈放。密告者木村真三郎は偽証罪で逮捕、安藤は免官になる。(警視庁草紙・川路大警視)

十三年

11/28 北海道初の鉄道が開通する。

十四年

 山本権兵衛中尉(当時)、時の海軍卿榎本武揚の私生活を弾劾し「非職」=閉門にされる。(エドの舞踏会)

07/21 黒田清隆が、官有物を不当な安値で払い下げようとしたことが判明し問題化する。(エドの舞踏会)

07/24 首斬り浅右衛門が斬首廃止で廃役となる。

 石川島の鳥居看守と警視庁の檜玄之助巡査、代言人星亨の車夫に言いがかりをつけ連行しようとするが、星の弁舌にやり込められる。(明治十手架)

10/11 御前会議にて干拓使官有物の払い下げが中止となり、それに絡んで大隈重信が罷免される。(明治14年の政変)(エドの舞踏会)

10/18 自由党が結成される。初の政党。

十五年

早春 橘屋円朝、福島県令に赴任直前の三島通庸の屋敷で一席うつ。(幻燈辻馬車)

02/08 開拓使を廃止し、北海道に3県を置く(函館、札幌、根室)

二月 三島通庸、福島県令になる。

04/06 板垣退助が襲撃される。犯人は小学校教員。

 十字屋より「板垣君自由遭難之図」が売り出され大当たりする。(明治十手架)

04/16 東洋議政会を合流させて立憲改進党の結成式が行われ、大隈重信が党首に選ばれる。

8月頃 三島県令の護衛を頼まれた檜巡査が彼に取り入るために自由党幹部の似顔絵を入手しようと画策したが、会津自由党員と会津帝政党が鉢合わせとなり失敗する。(明治十手架)

8月末 熊本新聞記者・徳富猪一郎、中江兆民を訪ね、その帰り道干兵衛の馬車で田山録弥少年(後の花袋)を拾う。(幻燈辻馬車)

09/10 神田で強盗を起こし逃げ込んだ犯人を追って根津遊郭に入り込んだ警官隊、演説中の自由党壮士と騒乱を起こす。犯人の朝太郎少年(落語家円朝の息子)は女郎姿の生母と出会し、東大生・坪井雄蔵(後の逍遙)と花紫花魁(後年彼の妻となる)の機転で脱出する。(幻燈辻馬車)

10/21 大隈重信・小野梓らが、東京専門学校(のちの早稲田大学)を創設する。(エドの舞踏会)

初冬 西郷四郎、干兵衛の親子馬車で師・嘉納治五郎の元へ駆け付け、共に山川捨松を救う。干兵衛はそのまま彼女のお付き御者兼護衛を依頼される。(幻燈辻馬車)

11/04 伊庭想太郎、提灯製造所経営と新聞に掲載。(明治暗黒星)

 干兵衛、捨松がダンスを教える延遼館で門番となっている鬼歓・斉藤歓之助に会う。(幻燈辻馬車)

11/28 福島県令三島通庸の圧政に抗議して自由党員や農民千数百名が弾正ヶ原に集結し、警官と衝突する(福島事件)。

11月末 鬼歓、嘉納治五郎を無手の野試合で敗る。(幻燈辻馬車)

12/06 鬼歓、何者かに殺される。その後、嘉納が容疑者として掴まる(8日)が犯人が別にいることが分かり間もなく釈放。(幻燈辻馬車)

12/24 捨松と大山中将の婚約が纏まり、干兵衛は護衛の任を終える。(幻燈辻馬車) 

この年 偽札事件の首謀者・熊坂長庵、仲間の密告により逮捕。翌年無期刑に処せられて北海道へ送致。(警視庁草紙・川路大警視)

十六年

春 福島士族・広谷錠四郎、福島事件に巻き込まれないようにとの両親の配慮から三春より上京。(斬奸状は馬車に乗って)

02/07 福島事件の首謀者58人、東京へ護送。干兵衛、赤井景詔からの伝言を河野広中に伝え、その後彼の隠れ家である妻の実家錦織晩香宅へ同行。(幻燈辻馬車)

半月後 干兵衛の長屋へ匿われた赤井の妻・眉輪と妹麻子、警察に捕縛される。(幻燈辻馬車)

03/19 高田士族・赤井景詔、捕らわれた妻と妹を救うため計画を断念し警視庁へ自首する。高田天誅党事件。(幻燈辻馬車)

03/20 延遼館で大山中将と山川捨松の婚約披露の祝宴が開かれる。干兵衛児玉源太郎大佐を乗せて会場へ向かい、森林太郎軍医中尉と出会う。(幻燈辻馬車)

04/12 福島事件の関係者として拘束中の58人の内、52人が無罪放免。

09/01 福島事件の首謀者6名に有罪判決。河野広中が七年、残りの五人が六年の禁獄。

9月 十字屋より福島事件の重要人物の絵図が「天福六家撰」として発売されが、翌日には発売禁止を通告される。無料配布を断行したが原胤昭は逮捕される。(明治十手架)

10/01 原胤昭に禁固三ヶ月・罰金三十円の判決が下る。

12/17 赤井、9年の禁固刑を受ける。

12月下旬 眉輪と麻子とお雛、攫われる。蔵太郎、お雛に頼まれて盟約書を冥界へ持ち去る。三島の妾お竜がお雛の生母、お鳥であることを知る。(幻燈辻馬車)

 干兵衛、攫われたお雛の救出を警視庁へ頼みに行くが拘束。3ヶ月の禁固刑を受ける。(幻燈辻馬車)

 干兵衛、牢内で原胤昭と同部屋になる。(幻燈辻馬車)

12/25 原、担架に乗せられて出獄。(明治十手架)

十七年

正月 原胤昭、十字屋の妹おひろと結婚し、教誨師として一生を捧げることを決める。(明治十手架)

 錠四郎、隣家・草土十左衛門を訪れた高利貸し馬町竜算の手代を追い返す。(斬奸状は馬車に乗って)

春 草土十左衛門、馬車に撥ねられる。錠四郎金策に走るが、草土父娘は姿を消す。(斬奸状は馬車に乗って)

二月 相馬誠胤の診断書に偽装の疑い。警視庁、錦織剛清の訴えで捜査に乗り出し、鉄格子の撤去を命じる。(明治忠臣蔵)

三月半ば 相馬誠胤、本郷田町の加藤私立癲狂院へ入院。錦織剛清、情人東明しげ子を付き添い看護婦として送り込む事に成功。加藤院長、剛清の連日の訪問に閉口して実家に引き取らせる。(明治忠臣蔵)

 相馬夫人・京子死去。剛清、葬儀の日に訪れ、志賀を詰問。(明治忠臣蔵)

3月下旬 眉輪と麻子、自決。お雛も殺されるところであったが、突然母性に目覚めたお鳥によって救い出される。(幻燈辻馬車)

03/27 赤井ら4人の自由党員破獄する。これを遮った宿敵柿ノ木義康、赤井によって討ち果たされる。干兵衛は牢へ戻り翌日に正規に出獄。(幻燈辻馬車)

 干兵衛、お鳥、お雛、錦織邸に世話になる。(幻燈辻馬車)

07/07 華族令。相馬誠胤、子爵となる。(明治忠臣蔵)

七月 相馬子爵、府立癲狂院へ再入院。(十一日)剛清、子爵を救おうとして家宅侵入罪に問われ入獄。(明治忠臣蔵)

08/24 森鴎外が、ドイツ留学のため、横浜港を出発する。

九月 錠四郎宅に転がり込んでいたかつての同志三人が、草土の娘が灯籠大尽と言われる小松寿盛に身請けされた事を聞きつけてくる。(斬奸状は馬車に乗って)

09/09 錠四郎、三人の手助けをして強盗をするが、仲間の一人が捕らえられる。逃げ込んだ先の高利貸し馬町竜算は警視庁の探偵から彼らを庇った上、五百円を用立てる。(斬奸状は馬車に乗って)

09/10 赤井、加波山蜂起に使う爆裂弾を持って錦織邸を訪ねる。干兵衛、その時に老車夫を殺した赤井に怒り彼を縛る。干兵衛と晩香、彼が運ぶはずだった爆裂弾を持って加波山へ向かう。(幻燈辻馬車)

10/29 自由党解党決議。

10/31 秩父困民党事件。

11/09 秩父困民党軍壊滅。錠四郎の友人二名もこれに参加し捕縛される。(斬奸状は馬車に乗って)

十八年

二月半ば 警視庁探偵小国幹杖、秩父事件の犯人の処罰について司法次官小松寿盛に意見する。幹杖、司法次官への無礼を詫びて切腹。忍び込んだ錠四郎に意見書を託す。(斬奸状は馬車に乗って)

翌日 錠四郎、幹杖の意見書を持って司法大臣山田顕義に面会。大臣、幹杖の意見を採り入れて秩父事件の犯人への極刑を決める。小松次官、これに反対し辞職を願い出る。(斬奸状は馬車に乗って)

02/20 秩父事件の首謀者七名に絞首刑が宣告される。(内二名、菊池寛平・井上伝蔵は欠席裁判)執行直前に逃亡を謀り斬首された。(斬奸状は馬車に乗って)

春 多摩で粘菌を探していた南方熊楠、警視庁の密偵と間違われ自由党の残党に捕まり、川口村の梁山泊・秋山子竜宅へ連れて行かれる。(明治波濤歌・風の中の蝶)

 北村は石坂の姉・ミナに思いを寄せ、自由党から離れるが、石坂は女壮士・景山英子に引かれ自由党への傾倒を強める。(明治波濤歌・風の中の蝶)

六月 石坂公歴、北村門太郎、大学予備門を受験。北村は合格するが、石坂は落ちる。北村、熊楠と再会し、同窓の夏目金之助と正岡升を紹介される。(明治波濤歌・風の中の蝶)

九月半ば 大矢正夫、北村を訪問。蜂起計画の軍資金を作るための強盗計画に誘うが、北村は既に自由党の活動に熱意を失っていたためこれを拒絶する。(明治波濤歌・風の中の蝶)

09/27 石坂の姉・ミナ、北村を訪問し、弟を助けてくれと頼まれる。(明治波濤歌・風の中の蝶)

秋 井上馨夫人武子、夫が妾に産ませた娘を引き取る。(エドの舞踏会)

十一月 北村、親友・石坂を抜けさせるため、大井憲太郎と景山女史の不倫関係を暴露する。(明治波濤歌・風の中の蝶)

11/05 山本権兵衛海軍少佐、横須賀の帰りに西郷従道陸軍中将と出会い鹿鳴館への出席を持ちかけられるが、これを固辞する。(エドの舞踏会)

11/22 石坂、大井の爆殺を狙うが、警視庁の密偵に押さえられる。彼の暴露により大井の計画が未然に防がれる。(明治波濤歌・風の中の蝶)

11/23 大井憲太郎らの朝鮮でのクーデター計画が発覚し逮捕される(大阪事件)。(明治波濤歌・風の中の蝶)

11月末 石坂、大阪事件への関与無しと認められ釈放される。(明治波濤歌・風の中の蝶)

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