男と女の差異論

§2 男女関係の社会学的考察

 男と女のどちらが賢いか。

 これは間違いなく男だと言い切ってしまおう。これは賢さというのが男社会の作りだした価値観のひとつだからである。女性がこの様な男社会の幻想に追従する必要性は全くない。

 前稿と一部重複するが、生物学的に見て真の人類と言えるのは女性であり男性というのは種の多様性を補完する為の亜種・変種である。種の保存という唯一にして最大の生存意義を受け持つのは女性であり、男性はタネツケ以外には本質的な指命役割を保たない。

 女性は家庭にあって子を産み育て、男性は外で食料調達に奔走する。これは男社会の用語では分業と言うことになるが、女の側から見れば育児に対する謝礼と言うことになるだろう。

2−1 男性社会の文化幻想

 肥大化した大脳は男性に余暇を埋めるための想像力の発揮を促す。男性は単に腕力のみで女性を支配するよりもっと有効な、男性優位を固定するような様々な文化幻想を構築していくのである。

1) 価値幻想

 宗教や芸術がこれに当たる。ほとんど全ての宗教が男性を優れたものとし女性を低く貶めるのも当然であろう。また芸術分野で男性が優位なのもこれが極論すれば人生には役に立たない無駄、冗長な部分だからである。

2) 権力幻想

 これは腕力によって発生した上下関係を固定化しようとする試みである。これは女性にとってもある種都合が良い。権力者の妻は権力者の威光を自分にも投影出来る(依存順位という)し、男の権力を自分の産んだ子に継がせることによって子孫の繁栄が保証される。

3) 優越感

 男性が女性に比べて勝っている分野を優劣の基準として過大評価する。この男性原理主義が有る限り女性はいつまで経っても優位に立てない。女性は相手の土俵で勝負しても勝ち目がないことを自覚するべきであろう。

4) 自己満足

 趣味に没頭する。女性には解らない、「男のロマン」と言う代物である。女性の方々には温かい目で見守って欲しい。

 これに対して女性原理とは、文化的右傾化への穏やかなブレーキにある。女性の立場から見れば、男性はタネツケというその最低限の職務さえこなしてくれればあとは好き勝手にさせておけば良いのである。少し前にあったCMコピーにあったではないか。

「亭主元気で留守が良い」

 いずれにしても女性の方が常に現実的であり、空想的なのは男性の方である。

2−2 婚姻制度

 男性社会における文化幻想の最たるモノがこの婚姻に関する様々な制度慣習ではないか。

 原始に置いては乱婚社会が常態であったと考えられる。*1親子関係は母子のみで確認され、父親の存在感は希薄である。この様な社会では子供は一種の共有財産であると言える。

 私有財産の発達により父権が強化されてくる。財産を作り守るには男性の腕力が物を言うからである。今に繋がる父権社会は突き詰めれば「力を正義」とする社会であると言える。その様な社会へ女性が進出するのは至難であろう。

 乱婚から父権社会への過渡期に母権社会が存在したという確たる証拠はないらしい。但し父権社会の中で閨閥外戚という母系制の遺構が見られる事もある。日本の古代社会でも妻問い婚という母系的な婚姻制度が存在した。藤原摂関政治もこの母系制を利用した権力形態を取っている。

 婚姻制度とは父系による親子関係を保証する意図がある。親子関係が明白であ母権母系社会ではこうした制度は必要ない。この制度には「早い者勝ち」的なニュアンスがあるが、一夫一婦制にはさらに権力者による「独り占め禁止」条項が加わっている。一夫一婦制というのは父権社会における一種の紳士協定である。同じ集団内での女性を巡るトラブルを軽減する為にはこうした制度が必要であった。他人の妻を奪う行為は多くの場合権力者の致命傷となった。古代ローマの王制が倒されたのもこの種の王の専横が原因であったらしい。

 元々禁欲的な教義をもっていたキリスト教は只一度を条件に結婚を容認する方向へ向かう。これすらも禁じていたらキリスト教は広がらなかったであろう。性交渉に敵意を抱きながらも、教祖にまつわる伝説から売春を必要悪として容認している。これは西洋文明の中に抜きがたい二重規範となって残存している。売春に付いては次稿「経済学的考察」にて語ることにしよう。

 独身生活をおくれない者の為に一夫一婦制を設けたキリスト教に対して、イスラムは一夫一婦制を守れない者のために一夫多妻制を認めた。イスラムに於いては女性は男性によって保護されるべきモノと規定されている。これも行き過ぎれば女性蔑視に繋がる訳であるが、イスラムの一夫多妻は基本的には女性を保護する制度であった。

*1 原始社会における乱婚については最近の学説では否定的であるらしい。夫婦関係は固定されており、近親婚に対するタブーは文明以前(無文字時代)でも厳然として存在していた。乱婚説はエンゲルスに影響を与え原始共産制学説を生み出した。要するに乱婚説はマルキシズムと密接に結びついていたのである。(05/07/25改訂追補)

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