男と女の差異論

§0 大前提

 論者は男性である。女性に敬意を払い男尊女卑には反対の立場であるが、いわゆる女権擁護論には同意出来ないと考えている。

 本稿は参考文献のひとつとしてあげた「男は女より頭がいいか」に対するアンチテーゼになっている。特に明言していない限り「」による引用部分は同書からである。

§1 男女関係性の生物学的考察

 何故性は二種類あるのか、そして何故二種類しかないのか。

 生物の中には単性(単体)生殖するモノがある。だが、これは親と子が同一の遺伝子構造を持つクローン生産でしかない。これでは進化は至極希に、コピーミスという形でしか発生しない。そこで、多くの生物では二個体が互いの遺伝子を混合させて子孫を作るという”複体生殖”が行われる。

 初期段階では性の役割分化は想定されていない。性の分化は配偶子の大きさの二分化によって始まる。巨大で動きの鈍い少数精鋭主義を選択したのが雌であり、遺伝情報のみを残して小型で活発な配偶子を量産するのが雄と呼ばれる。ドーキンスは前者を「着実な生存戦略」、後者を「こすい生存戦略」と呼んでいる。生殖という分野に限ってみれば、全ての雄は雌にぶら下がるひもと言うことになる。

 さて、性の分化が配偶子の大小二極化に起因するとすれば、第三の性が存在し得ない理由は明白であるが、第三の戦略が存在しないという訳でもない。つまり、状況によって雄にも雌にも変化出来ると言う戦略である。その様な生物が文化を持つまでに進化したらどのような社会を構成するかは非常に興味深いところではあるが、本稿の主旨から外れてしまうので取り敢えず置く。

 話を人類の男女に移す。長い進化の結果として男女間には様々な身体的な差異が生まれている。最も顕著なのが男女の体格差であろう。これは生殖戦略の選択と大いに関連が有る様に思える。

 女子は男子より先に体の急成長が起こり、「子供が産めるぐらいに体が大きくなる前に妊娠が可能なほど性的成長を遂げることはない」。そして性徴が起こると、それ以上は体が大きくならない。これらの作用は女性ホルモンによって引き起こされる。

 「性的に早熟な男子でも、同じ年の女子への願望を無理矢理遂げられるほど腕力が強そうな者はまずいない」。男子の肉体的な成長は性徴の後に起こる。成長期には男子の脂肪率は減少し筋肉の割合が増えていく。

 女子は子供が産める程度の大きさで安定するのに対して、男子は生殖に必要な以上に体を成長させる傾向がある。これは成長期のずれと栄養状態の変化が関連しており、婚姻の形態とは無関係であると思われる。大抵の動物は雄の方が大柄であり、人類がその例外となる理由は無いように思える。女子が背の高い男子を婚姻相手に選ばなければ、男女の体格差が縮まるかと言うとそうとは限らない。背の高い父親の子は男女いずれも背が高くなると期待されるではないか。男女の体格差をなくそうとするなら、背の高い父親からは女子が、背の低い父親からは男子ばかりが産まれるようにすれば良い。しかしこれはあまりに作為的ではないか。そもそも男女の体格差が良くないと言う意見が極端すぎるのである。

補足 間引きの原理

 人口圧力が問題となるとき、女児よりも男児の方が歓迎される。男性が二倍に増えても次世代の人口が二倍になることはないが、女性が二倍に増えれば単純に次世代は倍加すると考えて良い。これを避けるには女性一人あたりの出産率を下げるしかない。

 第二に女性が一生の間に産める子供の数には限界があるが、男性が一生の間に作れる子供の数はそれより遙かに多い。人口増加に上限があるならば、そして育てられる子供の数に限界が有るならば、男子を選ぶ方が多くの子孫を残せるのが道理であろう。

 これは極めて合理的な判断であり、差別とは呼べない。差別というのはもっと非合理的なモノであると思う。

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