§6 重農主義経済と重商主義経済

6−1 商業の発生と展開

 まず、用語の定義から、本稿では交易を前市場経済における物々交換、貿易を貨幣による流通と定義して区別して使う。

 一人の人間が生活に必要なモノを全て自分で作り出すことは出来ない。そこで共同体内部で分業し相互に補い合うと言う発想が生まれる。それが拡大すると、ことなる共同体間での生産補完という形式が発生する。そこに生じる交易は物々交換が原則である。

 やがて共通の価値をもつモノとして貨幣が利用されるようになると、商業は一気に拡大する。この場合、流通を請け負うのは元々非定住生活を営む遊牧民達である。つまり重農主義と重商主義というのは元々異なる起源を持つ文化形態であると考えられる。

 前工業化社会では生産の主軸は農業であるが、産業革命を越えると工業の比率が高まる。それまでは分化していなかった農業=第一次産業と工業=第二次産業とが分化し、商業=第三次産業の重要性が増すことになる。ここにいたって重商主義経済の優位が確立する。

 工業化社会は前工業化社会に比べて大きな人口を支えることが出来るため、一度この段階に達すると逆行はほとんど不可能である。

6−2 流通手段の発達

 近隣の村との交易レベルでは輸送手段は人力で間に合った。だがより多くの物品を寄り遠くまで運ぶためには蓄力は不可欠である。家畜の利用は農業だけでなく商業の発展にも大きく寄与している。家畜を利用した農業・商業のためには車輪の発明が不可欠である。そこから逆に大形の家畜を持たなかった史実の新大陸文明では車輪は考案されていない。

 舟を利用した水上輸送は効率に置いて陸上輸送を凌駕する。大河は古代には農業基盤として利用され、さらに商業の発達と共に流通路として、そして工業化社会には置いてはエネルギー源の一つ(水力発電)として活用される事になる。

 なお、航海術については別途一稿を設けたいと思います。

6−3 魔法社会の商業

 魔法を用いた製造業については産業革命についての稿にて扱う予定ですので、ここでは商業に関した魔法の運用について考察します。

 まず警戒しなければ成らないのが魔法を使った詐欺行為である。RPGなどでは財宝の幻影を作り出す呪文などが見られるが、この様な術が一般化すると経済が混乱するだろう。また魅了など相手の心理を操る呪文は扱いが厄介である。悪用されると詐欺行為が可能になる。

 魔法社会では町中での魔法の使用を禁じる手段が必要であろう。町中で破壊的な呪文を使うなど持っての他である。この辺りはPPの魔法原理学3(予稿)にて扱いたいと思う。

 コミュニケーション系の呪文は非常に便利である。異なる言語を用いる相手との会話(未知の言語を習得する呪文を含む)は交易を容易にするであろうし、相手の心裏を読む呪文などは詐欺行為を実質的に不可能にする。これらの呪文は移動の多い遊牧民の間で見出されるであろう。

 3番目に注目されるのが呪詛系の魔法である。具体的には魔法を介した拘束力の強い契約が発生することである。例えば、契約に魔法的拘束性を持たせることで保険金詐欺を防止出来る。もしかするとかなり早い時期にリスク分散を考慮した株式会社の制度が発生するかも知れない。

 次稿・§7 金融システムの発生

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