都市構造学 試案

§0 都市の定義

 本稿で取り扱う”都市”とは、最小限の政治的なまとまりを持つ人口密集地帯を指す。更に内(自由市民層)と外(中央政府)から承認された代表(市長)によって管理統括されている事を必要とする。中央政府を持たない、それ自体で完結した都市国家は此処では扱わない。

§1 人口の規模と構成

 まず都市を人口規模によってランク付けする。具体的には桁数=ランクで表記する。つまり1〜9人までをランク1、10〜99人までをランク2と言う具合である。一般的にはこのランクだと村落と呼ばれるであろう。

 次に問題となるのはその人口構成である。一般に高い出生率を持つ発展途上の街で有れば若者ほど多いピラピッド型になるだろう。対して医学の進歩により乳幼児死亡率が下がれば、自然と出生率も落ちて(つまり子供が幼くして死ぬことを前提にして多めに生むと言うことが無くなるので)少子高齢化(当然ながら老人も死ににくくなるので)と呼ばれる構造になる。

 年齢別の死亡率は出生直後が最大でそこから15歳前後で底を打ち、後は老化に対応してなだらかに上がってゆく。このカーブは平均余命の違いに依らず奇妙に相似している。

 死亡率だけを下げて出生率をそのままにしておくと人口爆発が起こる。これに食料生産力が追いつかなくなると危惧したのがマルサスの「人口論」であった。現実には産業革命の到来によってこのマルサスモデルは退けられた。(つまり前工業化社会に”人道”の名の下に医療支援だけを行うと却って悲惨な状況を招く事になる)

 出生率を下げる要因として電化率の上昇による”明るい夜”が指摘されている。安価な照明が無い社会では他にすることがないから(下世話な言い方だが)子造りに精を出すことになると言うことらしい。

§2 地理的要因

 都市の規模を決定する最大の地理的要因は気候環境であろう。寒帯地域や砂漠地域では大人口を支えるだけの食料調達は望めない。こういった地域では隣接するよりより温和な地域に住む農耕民族に対する略奪によって集中した人口を支えることになる。

 赤道直下の熱帯多湿地域では食料調達が容易であるために却って農耕が生まれない。その外側では雨期と乾期が分れるサバンナ地帯が広がる。最初に人口集中が起こるのはこの地域である。しかし農耕文明が起こるのはその更に外側、半乾燥地帯である。人口が大河川周辺に集中し灌漑技術を発達させて大規模農耕が営まれることになる。

 最も農耕に適しているのが温帯湿潤地域であるが、自給自足が可能であるが故に逆に人口集中が起きにくい。この地域では工業化によって輸送手段が確立すると一気に大都市が生まれる。温暖で雨量の少ない草原地帯は農耕には不向きで、必然的に遊牧が主体となる。この端境に絢爛たる魔法文明が花開くことになる。

§3 都市圏の人口構成

 本稿で扱う都市は基本的に生産に寄与しない消費主体の人口集中地域である。そして都市人口を支える食料は周辺地域から集められてくる。この一蓮托生である都市部と周辺農村部を合わせて都市圏と呼称する。都市部では出生率が死亡率を下回る為に人口減少傾向にあり、農村部では逆に出生率が死亡率を上回る人口増加傾向を示す。そして農村部で余剰となった人口が都市へ流れ込んで均衡が取れる。と言うのが前工業化社会における(旧式の)人口調整システムである。

 農村部には農民(地域によっては漁民)を主体とする第一次産業従事者が、都市部には職人や商人といった第二・第三次産業従事者(前工業化社会では明確に分離されていない)が居住する。この両者の比率は農業生産性によって変動するだろう。当然ながら農業生産性が高いほど都市部への集中度が高まる。その最大値は50%程度であろう。(これは経験則である。農業国・地域では今でも政治の中心地に人口の50%が集中している

関連稿 魔法世界の資本論 §7 都市と農村

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