剣鬼喇嘛仏

 山田風太郎忍法帖12「剣鬼喇嘛仏」ちくま文庫 他に収蔵。

究の壱 その後の武蔵

 もはや国民的文学である吉川武蔵のラストから引き継がれる冒頭部。

 武蔵の台詞回しが原作と多少違いますが、これは小説と漫画の違い。武蔵の心理をト書きで書ける文字媒体と違って、漫画では極力説明を省いて絵で表現しないといけません。逆に与五郎との対決シーンでは漫画の方がやはり分り易く、この辺は一長一短があります。

 秀逸なのが大坂城にてあの姿の与五郎と再会したときの武蔵の表情。これは絵じゃないと表現出来ませんねえ。

究の弐 与五郎興秋

 与五郎興秋については別の作品で誕生時のエピソードが書かれているのですが、それはそれとして、青龍寺組との対決、特にお登世との一戦はほぼ原作通りなのに受ける印象が微妙に違います。連載の展開上もあって第一回のラストで父袋兵斎とお登世は顔見せしているのですが、それが「ここ一、二年の間に」青龍寺組一の剣の使い手となったと言う逸話がまるで将来を見通したかのような伏線っぽく成っています。あの”勝ち方”は青竹でないと成立しないんですが、まあ曲がった部分が頭に当たっているのは受けが間に合わなかったと言う認識なんでしょう。

 与五郎とお登世の二度目の対決は絵で見るとやはりインパクトがありますねえ。この作品が絵になると見たせがわ氏の目は確かです。服の着方とか、お登世の履く高下駄を作る与五郎とか、これは文字だと説明しにくいし煩雑ですが、絵で見ると微笑ましくて良いですね。

究の参 モブ

 大坂城に集った諸将の中に、前作でもちらっとだけ登場した真田幸村の姿も。あれから十四年たっているのでお髭を蓄えていますが、容貌はほぼそのまま。家康の方もバジリスクや前作の風貌をそのまま踏襲していましたからある意味で律儀ですね。とすれば春日局もあの絵のままと言うことなので、「くノ一忍法帖」が書かれる可能性は無いですね。

 原作では全く登場しない千姫様も顔出しだけかと思ったらちょっとだけ重要な伏線と共にご登場。引き連れている七人の侍女は真田のくノ一ですね。

 千姫様は与五郎と別れて大坂城に居残ったお登世を助け出し、与五郎と再会させると言う重要な役割を担い、原作とは違ったハッピーエンドとなります。まあたまにはこう言うのも良いですね。

戻る