忍法帖謎解録 番外編 「忍法」の初出
§0 発端
「柴錬ひとりごと」と言うエッセー集の中にある、「忍法について」と言う一文を読んで。
「忍法」と言うのは私の造語である。〜
忍法と言えば山風と言う漠然とした思いこみがあったので、これは捨て置けないと思った訳です。
§1 調査過程
で、まず既知の柴錬センセイのファンサイト夢想正宗に問い合わせをしました。掲示板に書き込みをしただけですが。
残念ながら、「忍法」は、柴錬の造語ではありません。江戸初期の『正忍記』という忍術書(藤林正武・1681刊)に「忍法空に寄りて走る。尋ぬるに形なく、求むるにこころなし。」とあります。(byしゃらくさん)
“忍法”の初出については…ちょっと難しいですね。シバレン先生の忍者モノというと、「赤い影法師」が最初だと思うのですが、その中に“忍法”なる言葉が出てるのかどうか…?(byRYOH さん)
次ぎに柴錬センセイの忍者モノ二編「赤い影法師」「忍者からす」を購入読了しました。その後、更に「赤い影法師」の続編である「南国群狼伝」も読みました。
§2 暫定的結論
『赤い影法師』(60年2月から週刊文春に連載、同年に出版)中に忍法の文字が少なくとも二回登場します。それに対して山風忍法帖の第一『甲賀忍法帖』の連載が58年12月から、単行本が連載終了直後の59年11月となっています。と言う訳で、どちらが先かと言う点に限れば問題なく山風の勝ちと言うことになります。
まあ、実際に読んでみると、二人の扱う「忍法」の概念があまりに違うので、もうどうでも良いという感じでした。山風版「忍法」では人間離れした能力を表しているが、それに対して柴錬版「忍法」は忍者の使う特殊な武術と言う意味合いで使っているようです。
§3 追補(04/05/14)・改稿(05/04/25)
「眠狂四郎」シリーズにも忍者は出てくるので読み返してみましたが、「独歩行」(61年連載)に登場する風魔一族は自分たちの技を「忍法」ではなく「間法」と呼んでいます。パテントを取っていれば〜とまで言うならば忍法で統一すべきだったと思いますが。
逆に山風も長編三作目「軍艦忍法帖」では「忍法」の語を避けて幻法と呼んでいます。忍法帖ブームは三十八年に「山田風太郎忍法全集」全十五巻としてまとめられて以降と言うことなので、まだ用語として熟していなかったんでしょう。
実は、以前から手元にあった歴史読本臨時 増刊決定版「忍者」のすべてにあった縄田一男氏の文(忍者小説の歴史と展開)にその辺の経緯がまとめられていました。何とも間抜けですね。
§4 予告(04/07/10)
研究を元にして忍者を主人公とした時代物RPGを企画中です。時代小説とRPGにての公開を予定しています。