十三の階段
氏が参加した連作ミステリーの全録。
作家名は執筆順に紹介。また、企画の目的上から寸評は山風パートを中心に展開します。
「白薔薇殺人事件」
香山滋・島田一男・山田風太郎・楠田匡介・岩田賛・高木彬光
六人中三番目に登場。恐らく枚数が少ない為であろう、自分の色を強く出そうとして、発端で殺された被害者の少女が精神異常だったというあんまりな設定を付け加えている。ラストに新たな謎を残しながら引くのはこの手の作品の常道ですね。
ラストを飾った高木氏のまとめは流石である。自分の持ちキャラである名探偵神津恭介をしっかり登場させている。(なんとこれが神津モノの第二作らしい)
「悪霊物語」
江戸川乱歩・角田喜久雄・山田風太郎
三人中のラスト。前二人の持ちキャラ、乱歩の明智小五郎と角田氏の加賀美課長を登場させている。この辺のパロディは後の作品を彷彿とさせる。
連作という形式が元々、書けなくなっていた江戸川乱歩に書かせる手段であったらしく、乱歩は大抵トップを飾るらしい。
「生きている影」
角田喜久雄・山田風太郎・大河内常平
三人中の真ん中。発端で暗示されていた主人公の影と直接対面する事になる。しかも、ご丁寧に血液型についての考察を加えて双子説はおろか、兄弟説までも否定してしまう。
無茶を押しつけられた大河内氏は、しかしそれを逆手にとって見事な落ちを付けている。
「十三の階段」
山田風太郎・島田一男・岡田鯱彦・高木彬光
四人中トップ。他人の作った設定をいっさい背負わないので、思いっきり山風風(ややこしい)である。ダンテの神曲からとった地獄篇というサブタイトルを後の方達も踏襲したのであろう。ラストを飾る高木氏を当て込んで、最初から神津恭介を登場させている。
昭和30年以来実に46年ぶりの再録というから、山風マニア以上に神津恭介マニアにとって貴重な作品であろう。
「怪盗七面相」
島田一男・香住春吾・三橋一夫・高木彬光・武田武彦・島久平・山田風太郎
七人中のラスト。七人の作家による連作だから七面相なのであろうが、トップの島田氏がこれを怪盗の名前としてネタを振ったので、続く六人は自分の持ちキャラを登場させて対決させると言う美味しい展開になった。ラストの山風は当然、荊木歓喜先生である。これは単独で荊木歓喜物の短編集にも収録されており、光文社文庫版の全集にも含まれている。
「夜の皇太子」
山田風太郎・武田武彦・香住春吾・山村正夫・香山滋・大河内常平・高木彬光
七人中トップ。立太子式という記述があるから年代の特定が可能。って此処はそう言うネタではないな。主人公の少年の薬師寺という姓から某不死身の忍者を連想してしまいましたが、書かれた年代はこちらの方が早いですね。