10 達磨峠の事件 補遺編
三部構成。
PART1
通常の短編作品。
「達磨峠の事件」
探偵小説専門誌「宝石」の第一回懸賞入選作で、氏のデビュー作となる。
横溝正史が「達磨峠を書いた風太郎が、トモカクああなるんだから…」とと述べ、作者本人もこれを至言としているように、これ自体は(探偵小説としては)余りよい出来ではない。(区分としては本格篇に入れるべきだが、出来映えを考慮して此処に入れたのだろう)入選は選考委員の水谷準氏がつよく押した結果であったらしい。
「天使の復讐」(「天使の復讐」(集英社文庫)にて初読)
本人が言うように「珍しく内容が素直な」ため、これまでの作品群から漏れた。
「泉探偵自身の事件」
悽愴篇でも良さそうだけど、落ちがやや明るいので落ちたか。
「全き円は天上に」
これも戦争篇に入りそうで入らない。
「天誅」(「逗子家の悪霊」(ハルキ文庫)にて初読)
「疾風怪盗伝」
「旅の獅子舞」(「逗子家の悪霊」(ハルキ文庫)にて初読)
「死人館の白痴」
トリックは少年向け作品等で再利用された。
「片目の金魚」
「東京魔法街」
コミカルなサスペンスもの。
「下山総裁」
実際にあった事件の小説化。
「渡辺助教授毒殺事件」
実際にあった事件の小説化。
「霜月党」
後に少年モノへ改稿。
「ビキニ環礁午前四時」
戦争物に入ってもおかしくなかったもの。しかし、血液型に関する記述は間違っているような。
「一刀斎と歩く」(追悼特集山田風太郎(河出書房新社)にて初読)
一刀斎先生(これは本人じゃないけど)は相変わらず怪老人にされています。
「ふしぎな異邦人」
これも戦争篇からあふれた作品。
「女が車に乗せるとき」
煮え切らない男と、吹っ切ると強い女。入れるとすれば悽愴篇。
PART2
ショートショート。
「女」
「千人目の花嫁」
「鳥の死なんとするとや」
「無用な訪問者」
「幻華飯店」
「妖物」
「幸福」
「しゃべる男」(追悼特集山田風太郎(河出書房新社)にて初読)
「雲南」
PART3
デビュー以前の学生小説と少年編の補遺などのジュニアもの。
「石の下」
BRUTUS図書館山田風太郎にて初読。戦前(昭和十五年)に初めて懸賞に入選し「受験旬報」に掲載された作品。以下の五編はいずれも同誌に掲載された物。
「鳶」
「鬼面」
「三年目」
「白い船」
「陀経寺の雪」
「信濃の宿」
戦前に「受験旬報」(「蛍雪時代」の前身)に投稿していた縁で、戦後にその僚誌である「高校時代」に掲載された物。
「青雲寮の秘密」 第2回
九巻で抜け落ちたもの。
「肉仮面」
「笑う肉仮面」の原型。掲載誌の休刊により発端部のみで中断している。
解説・日下三蔵
シリーズ全体の編集後記。但しこの時点では八巻の出版を残している。