功利主義的天皇論
1 天皇の誕生
万世一系と言うのはただの幻想で、天皇家として確実に遡れる直系は継体天皇まで。応神天皇の五世の孫と言うのはおそらく後付で、実体としては旧王族の皇女を娶ったことによる女系継承であったであろう。
万世一系を言い出したのは”初代天皇”(天皇制を創設したと言う意味で)である天智天皇である。この目的は息子大友皇子に跡を継がせる為。それ以前の大王は兄から弟への兄弟相続であった。
その思想を形にしたのが娘の持統天皇で、日本書紀を編纂させて天皇家の系図を整備した。天皇家の歴史を継体以前に遡って記述したのはただの箔付けと思われるが、全く根拠の無いものではなかっただろう。おそらくは日本書紀作成の過程において、諸豪族の主張する系図をつき合わせて作成されたものと考えるが、今となってはその真偽を解き明かすすべは無い。
2 男系システムの利点
男系システムの利点を考えるに当たって、中国の皇帝システムと比較してみたい。
皇帝は天意によって徳のある人物が選ばれる。ゆえに現皇帝(王朝)の徳が衰えたと言う名目で平和的な王朝交代を起こすのが禅譲で、武力による交代を起こすのが放伐と言うことになる。
初代皇帝は言うまでも無く秦の始皇帝であるが、史記はこれに古代の伝説時代から続く正統制を与えた。古代の五皇の継承が禅譲で、殷周革命が放伐の第一例とされる。
儒教に基づくこの禅譲放伐システムでは力による王朝の交代が可能である。対して、血統主義の天皇ではそうは行かない。時の権力者は天皇を殺すことは出来ても、血統原理により自身は天皇にはなれない。もし女系天皇が可能であれば、皇女を娶ってその間に生まれた男子を次の天皇とすればよい。しかし男系システムでは娘を天皇に嫁がせて生まれた男子を次の天皇にすると言う迂遠な方法を取らざるを得ない。これだと皇統は守られるし、権力者にも箔がつく。どちらにも都合のよいシステムである。
この方法で権力を掌握してきたのが藤原摂関家であるが、そもそも天皇システムを持統天皇とともに整備したのが初代不比等であったのだから、これはまさに”藤氏家伝”と言える。
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