二大政党制私論

 これははてなの日記に書いた記事をまとめたモノです。

1 二大政党制のシステム

 完全な自由経済社会では、貧富の差は必然的に拡大する。よって「小さな政府」派が政権にあるときは資本主義経済の原理に経済格差が広がる。収入が正規分布を描くとすれば、上下の幅が大きいほど平均値より高い収入を得るモノは少数派になる。

 民主政体と言うのは良くも悪くも「多数派による支配」する社会なので貧富の差が大きくなるとこれを是正しようとする動きが活発になる。そして政権交代により「大きな政府」派政権が誕生する。この時、社会全体の平等性は高まるが、経済成長は鈍化する。

 そして再び経済の自由化が叫ばれ、「小さな政府」派が再び政権を取り返すだろう。

 適正な民主政体ではこうした二大政党制が健全に機能する筈である。政権交代の存在しない社会とは安定した社会ではなく、停滞した社会である。

 では二大政党制による政権交代が存在せず、一党独裁になるとどうなるか?

 「小さな政府」派による独裁の場合、一部の金持ちが政府と結びついて立法を専断した状態、つまりはナチスドイツ型である。

 このケースでは経済成長を続ける限りは国民に不平不満は生じない。だが、拡大成長を保証するためには絶えざる領土拡張かバブル経済しかない。その行き着く先はもう言うまでも無かろう。

 だが、こちらの方が建て直しは容易である。問題はもう一つの「大きな政府」派による独裁の場合である。

 こちらの行き着く先は共産主義体制である。前者の崩壊パターンが拡散(バブル)型なのに対して、こちらは収縮型である。民衆の勤労意欲が著しく低下しているから崩壊後の建て直しが非常に厄介になる。

2 日本型政権交代

 日本では長く自由民主党による一党独裁が行われてきた。だが、その内部では「大きな政府」派と「小さな政府」派という構造が存在し、これが交互に総理総裁を出すことによって擬似的な政権交代を行ってきた。

 「大きな政府」派の優位を確立したのが今太閤と呼ばれた田中角栄元首相で、これに対抗していた「小さな政府」派・福田赳夫の路線を継承したのが現代の信長と呼ばれる小泉純一郎現首相である。(秀吉と信長の出番が逆ですが)

 田中派の系譜は今や民主党に移り(田中派の七奉行と呼ばれた後継者の内、三名が故人、三名が民主党に所属、そして残る橋本元総理は引退)、自民党は小泉路線で順化され「小さな政府」を目指す政党へと移行しつつある。民主党が「大きな政府」を主張してくれればすっきりした二大政党制が確立するのだが。

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