スポーツ国際戦略私論 14 ブラジルW杯観戦記

 

§1 順当な敗戦

 日本が一次予選で敗退したので書くのを止めようかと思ったけど。前回とは真逆に直前の強化試合が良かっただけに期待が過剰になりすぎた。でも終わってみればランキング通り。

 面子だけ見れば過去最強だと思う。のだけど、勝てなかったのはむしろ海外組が多すぎた所為かもしれない。海外組は、クラブでは自己主張がきっちり出来ていると思うのだけど、何故か代表に来ると他人任せで自分が決めてやろうと言う意思が感じられなかった。加えてこれまでの日本と違って研究されていたように見える。選手が海外に流出した所為で、情報も一緒に出てしまった感じだ。

 最終選考ではそれまでのチーム作りを重視して怪我上がりの三選手を選んだが、果たしてコンディションは万全だったか。海外では有力選手でもコンディション次第ではバッサリ切ると言うこともあるのだけど、外国人のザッケローニ監督にはそこまで踏み込めなかったかもしれない。監督がやろうとした3バックは遂に完成せず、最後までザック・ジャパンには未完成だったと言うことだろう。

§2 アジアのお客さん

 前々から思っていたけど、アジアの出場枠は多すぎた。アジアには東にかつての世界二位の経済大国日本があり、現在二位の中国がある。更に西にはアラブの産油国と金持国が多い。アジアの出場枠優遇は言って見ればパトロンに対するサービスだったのではないか。

 今回、日本を含めた四ヵ国のアジアの出場国が予選で一勝もできなかったことで出場枠は間違いなく減るでしょう。しかしこれでお客さん待遇は終わり、本格的な戦いが始まるともいえる。さてここから抜け出せるのはどこの国か。

§3 開催国の事情

 スタジアムの建設が開催まで間に合わないとか、経済危機から開催反対のデモが展開されるとか、事前に様々な問題が持ち上がった開催国ブラジルですが、いざ大会が始まってみればそこはサッカー好きの国民。大会そのものは問題なく進行しました。まあ未完成といっても外装なので実際の競技には支障有りませんでしたし。ただ二年後のリオ五輪には課題を残しましたが。

 悲願の開催国優勝は果たせず、準決勝でドイツに歴史的大敗。三位決定戦のオランダにも完敗でした。ブラジルと云えども、エースを欠くとこんなものなのでしょうか。まあ日本も、エースが出てくるまでは善戦していましたし。

§4 個人技と組織

 優勝したのは組織のドイツ。でもMVPは負けたアルゼンチンのメッシ。更に得点王はベスト8で敗退したコロンビアのロドリゲス。決勝トーナメントに入って守りの意識が強くなった結果ですが、ドイツがあれだけ点を取りながら得点者が一定せず、言い換えればどこからでも点が取れる。と言う点もまさに組織のドイツの面目躍如。W杯得点記録を更新したベテランのクローゼに替わって入った若手のゲッツェが決勝点を決めるあたりが順調な世代交代をアピールしました。

 考えてみれば前回優勝のスペインは当時最強だったバルセロナ主体。そして今回のドイツ主力はバイエルン・ミュンヘン。国内クラブの強化が代表チームの強化にも繋がると言うことでしょう。日本のように大きな大会だけ代表を応援するけど普段のJリーグには興味なし、ではやはり勝てない。

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