スポーツ国際戦略私論 9 南アフリカW杯観戦記あるいはスポーツ中継私論
§1 祝ベスト16
記事のリストを見返すと、前回のドイツ大会に関する記事を書いていない事に改めて気付いた。試合を見てなかったのかと言うと、そんなことはない。只、やはり日本が勝てないと個人的にも社会的にも盛り上がりに欠ける。
ドイツ大会はその直前のアジア選手権での劇的な優勝もあって非常に盛り上がっていた記憶がある。対して、今回の南アフリカ大会は前評判があまりに悪く、国内的にも盛り上がっていなかった。
その雰囲気が初戦のカメルーン戦での勝利によって一変した。結果から見ればカメルーンは全敗でグループリーグを敗退し、そのチーム状況の悪さを露呈したが、これも日本戦で勝っていれば展開は変わったかも知れない。逆に日本はこの価値ある一勝で一気に波に乗った。オランダ戦に善戦し、デンマーク戦では快勝。海外でのW杯では初めての決勝トーナメント進出という歴史を作った。
パラグアイ戦では惜しくもPK戦で敗退したが、これはもはや運のレベル。重要なのは日本でもきっちりチームを作れば世界と戦えることを示したことだろう。逆にチームが纏まらなければ、前回優勝のイタリアや準優勝のフランスのように燦々たる結果を招く。
試合内容について分析するのは本稿の目的ではないし、またその能力もない。ここで問題に取り上げるのはマスコミの報道についてである。
§2 マスコミの一喜一憂
開幕前の岡田監督への評価は最悪だった。しかし、一つ勝ってその評価はがらりと変わる。本大会での岡田采配は、意地悪な見方をすれば開き直ったと取ることも出来る。これは現地入りして余計な雑音が遮断されたことが大きいのかも知れない。交通の便の悪さがプラスに働いた。他にも今大会では南アフリカならではの要因が日本に有利に働いた面がある。
本田の成長は日本にとって全くの嬉しい誤算であって、次の本田を期待してチームを作ることは避けなければならないが、守備に重点を置いて組織で動く戦略に関しては、日本の持ち味として今後の代表チームにも継承すべき点であろう。マスコミの煽てに乗らず、この経験を入念に次の代表監督へ引き継いで欲しい。
マスコミ、と言うか主にTVメディアだと思うが、事前の戦略分析が盛んに行われていた。これは有る意味で自国の戦力を漏らしてしまう危険な行動ではなかったか。恐らく対戦相手は日本のTV番組などいちいち参照しなかっただろうけど。解説者に今後の展望を聞いても無意味だ。W杯での勝ち方を知っている日本人なんか皆無なのだから。
岡田監督は今回限りだと言っているし、二度目だからマスコミのおだてにも簡単に乗ったりはしないだろう。問題はまだ次がある選手達だ。幸いにも本田や松井は国内リーグの選手ではないので、所属チームへ戻れば日本のマスコミの毒はあまり受けないだろう。海外からオファーを受けている選手は次の備えて実力を蓄えて欲しい。問題は国内に残る選手。マスコミは持ち上げては落とす名人なのであまり本気で一喜一憂しないように忠告したい。
§3 放映権料
W杯と平行して進んでいた大相撲の不祥事についても少し触れておきたい。
ブログでは繰り返し触れているが、私はそもそも大相撲をスポーツとは考えない。さらには(外人力士の多寡に依らず)国技とも認めない。
大相撲を支える重要な財源の一つとしてNHKが支払う独占放映権料がある。日本のプロ野球がTV中継によって国民的な人気を勝ち得たように、相撲人気もNHKのTV中継に依るところが大きい。
相撲ファンの中心は高齢者層であろうし、彼らが相撲を支えたいというのはいっこうに構わないが、それなら実際に場所を見に行けば良く、受信料で経営される公共放送に依存するのは止めて欲しい。これも広い意味で世代間格差である。
NHKも大相撲中継を中止してその明いた予算でもっと若者を勇気づける番組を構想して欲しい。あの時間帯では若者は見ないだろうけど。それを言ったら全体的に若者のTV離れは進行中なのだ。受信料を強制的に取る手法を検討するよりも、受信料を払いたくなる番組作りに軸足を置いて欲しい。
スポーツ中継に話を絞れば、高い放映権料は広告収入で経営している地上波TV局には大きな負担となっているのだろう。しかし多チャンネル化によってBS・CSの有料放送が伸び、視聴者の選択の幅が広がりつつある。デジタル化もこの退潮傾向を止める決定打にはならないだろう。放映権も一社独占ではなく共有して選択受信購入が出来る様にすればもっと楽しめると思う。こうした受信購買代金をそのスポーツの振興へ還元出来ればもっとマイナーなスポーツにも日が当たる筈だ。