スポーツ国際戦略私論 3 あるいは北京オリンピック観戦雑感

 

§1 水泳

 前回のアテネは有る意味出来過ぎでしたが、北京ではほぼ順当な結果でした。

 種目によってはまだまだ世界との差が大きいですが、北島選手の連続二冠は圧巻でした。二〇〇Mでは追ってくる相手が居なくなってしまって記録を出し損ねた感があります。

 こうなると逆に彼が引退した後が心配ですが、この四年間の彼の苦闘を見ても、次に出ればまた勝てると言うモノでも無さそうです。本人的にはこれでやめるのが綺麗ではありますが、日本競泳界のためには次の世代の成長を見届けて(つまり国内で負けて)から止めて欲しいです。

 実は競泳競技をじっくり見たのは今回が初めてだったのですが、平泳ぎって他の泳ぎ方と明らかに違いますね。背泳はクロールの逆、バタフライは両手両足を交互ではなく同時に出すクロールと言った感じ。実際にはバタフライは平泳ぎから発展した(まずバタフライの手の動きが先に考案され、平泳ぎから独立。後にドルフィンキックが編み出されて今の泳ぎが完成された。考案者は何と日本人!)ようですが。他の泳ぎ方は絶えず推進力を加え続ける必要がありますが、平泳ぎは緩急の付け方がミソなようです。特に北島選手のあのゆったりとした泳ぎを見るとそう感じます。

 有る意味、国の総合力を試される四〇〇Mメドレーリレーで二大会連続の銅メダルを取れたことは喜ばしいことです。しかし、自由形のリレーではまだまだ及ばず、この分野での底上げが今後の課題でしょうか。

 さてもう一つ。今回の話題は着ると早くなる?水着の登場でしょうか。今大会の真の勝者は水着会社ではと思えますが。

§2 柔道とレスリング

 何となく人材を食い合ってしまいそうな両競技ですが、共に男子はいまいち振るわず、女子は圧倒的に強い。特にレスリングでは全階級でメダル(金2銀1銅1)という王国の地位を維持しました。元々、前大会から採用された競技で、我が国が圧倒的にリードしていた種目ですが、前回よりはその差が詰まり、また今のトップが引退した後に次が育っているのかが心配ではあります。

 柔道に関しては我が国起原ながら、いまや世界の潮流はJUDO。一本を取るよりもポイント狙いの、日本人から見ると面白くないモノになっています。これも有る意味グローバル化の宿命でしょうか。特に男子に顕著でしたが、組み手を取れないと何も出来ないと言うのでは困ります。最重量級の石井選手が徹底的に勝つ柔道に徹して最後の砦を守ったのが象徴的でした。そう言えば、二冠を成し遂げた内柴選手も自分の柔道は邪道だと言われたようですし、もはや日本式柔道では勝てない時代なのでしょう。

 両方を見比べて、どちらの選手が強いのかという(素人にありがちな)素朴な疑問を憶えました。勿論ルールが違うので単純には比較出来ないのですが。基本的には立ち技(スタンド)で投げて背中を付かせれば勝ちなのが柔道、投げは余りなく、むしろ倒してからの寝技(グランド)が主体のレスリング。両方の特性を活かせるルールというのは難しいのでしょうね。

§3 マイナー競技の逆襲

 さて今大会は国内的には余り知られていない、競技での健闘が目立ちました。その最右翼はフェンシングでしょうか。国内的には(やはり人材を食い合いそうな)剣道があって振るいませんが、国際的にはそれなりに知られる競技なのでしょう。

 世界に伍して戦うには金と人。その為の宣伝として今大会は有益だったのではないでしょうか。

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