スポーツ国際戦略私論 2 野球vsサッカー

§1 サッカー

 日本サッカー界には明確な戦略目標があった。それは日本のサッカーを世界レベルに高める事であった。プロリーグ=Jリーグの創設はその目標に沿ったモノであり、それは確実に効果を上げていると思う。

 如何なる分野でも発展を企図するならば必要なのは人と金であろう。Jリーグの創設はそれを可能にした。経済効果(入場収入・放映権料そしてtotoの収益)はもちろんのことだが、確実にサッカー人口を増加させた。サッカー人口の増加とは単に”する人”ばかりでなく、”見る人”が連動しなければならない。

 かく言う私自身が好例である。

 私はJリーグ以前にははっきり言ってサッカーには全く興味がなかった。それがJリーグがTV放映されるようになってからは、何となく見るようになった。積極的に見るようになったのは2002年のWカップ以降だろう。

 しかしそれだけならWカップ終了の後にはサッカーから離れてしまったかも知れない。私がサッカー観戦にはまるようになったのは、地元プロチームの存在が有ったからだと言って良い。これがJリーグ成功の一つのキーワードとなる地域密着戦略である。

 我が”郷土の誇り”は2001年、2002年と二回続けて惜しいところでJ1昇格を逃しています。しかし結果的にこれが(私にとって)吉と出ました。私がWカップでサッカーにハマル前にJ1への昇格を決めていたら、あれほど地元チームに入れ込むことは無かったでしょう。三年掛けて昇格したことでチーム力(及びサポーターの動員力)が格段にアップしたと思いますし、すんなり上がったら、逆にあっさりと一年でJ2に逆戻りして尻すぼみになっていたのではないかと思います。

§2 野球

 さて対して野球です。日本の野球界には現在明確な戦略目標がありません。打ち出すとしたら打倒メジャーリーグでしょう。そもそも、日本のプロ野球はその為に創られたのではなかったでしょうか?それが、いまやMLBの草刈り場と化そうとしています。スター選手が新天地を求めて渡米している現状は日本野球界の発展という見地から見れば問題が多いでしょう。

 NPB(日本のプロ野球)の実力は現状ではMLBの3Aクラスと思われます。その事は図らずもアテネオリンピックで金メダルを逃したことが証明したと思います。日本の打撃陣は3Aの選手であったオーストラリアのエースをうち崩せませんでしたから。

 野球の最大の問題点が巨人軍中心主義に有ることには異論は出ないと思います。今回(04年)の球団合併騒動も元を正せば1リーグ10チームにして巨人戦を均等に配分しようと言う意図に基づいていたと思われます。結局選手会とファンの猛反発を受けてこの大リストラは頓挫したようですが。

 この弊害を生んでいる理由は色々あるのでしょうが、野球界を統括する協会が存在しないことに有るようです。野球はプロアマが完全に断絶し相互交流が禁じられていると言う現状があります。つまり野球界には前稿で示したようなピラミッド構造が存在しないのです。

 プロ野球は企業の野球部にして宣伝広告塔に過ぎず、多くは地域自治体と切り離されて存在します。対して地域密着と言えば真っ先に思いつくのが高校野球でしょう。私は(かなり最近の傾向ですが)あの夏の甲子園というのがどうも痛々しく感じられてしまいます。炎天下の中での連戦で(特にエースピッチャーが)壊れない方が不思議という気がします。いや実際に甲子園の優勝投手はプロで大成しないと言う法則めいたモノが有るようですし。

§3 まとめみたいなモノ

 今後の実行課題としては、夕べ(04/09/24)の「朝まで生テレビ」でもいくつか出ましたが、日本野球協会(仮称)を創って野球界を代表する組織を作ること、コミッショナーにもっと権限と財源を与えること、セ・パの交流戦ばかりでなく、プロアマの交流戦、たとえばサッカーの天皇杯みたいな大会を創ること、そして最終目標としてメジャーとの決戦場を設けること等でしょうか。

 それにしても夕べの朝生は久しぶりに見ましたが、良い意味で議論に成っていませんでした。どちらかというと提言大会と言った感じですね。出演者がそれぞれの立場で野球を愛しているのが解る微笑ましい内容でした。田原氏も初めは持論へ頻りに誘導しようと目論んでいましたが、だんだんとただの聞き役に成っていました。司会としてはそれが正しいんでしょうけど。

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