幻の大洪水時代
史実に大洪水時代と称される大国ポーランドの凋落期は発生しない。
その条件は一つにポーランド王権の基盤強化、加えて国内外の諸問題の解消にある。
§1 選挙王制
世襲ではなく選挙制を取る王国は王の権力が弱い。諸国乱立で統一が遅れたドイツ(神聖ローマ帝国)然り。ポーランドに至っては近隣諸国によって分割されて国家消滅の憂き目を見ている。
ポーランド=リトアニア共和国の場合には、継承法(ポーランドは選挙制、リトアニアは世襲制)の違いに加えて宗教(ポーランドはカトリック、リトアニアはプロテスタント・正教)の違いもある。そこでヴァーサ朝が本拠スウェーデンに戻るついでに両国を分離してしまう。のが第一段階。ポーランドの王権の弱さを宗教権威によって補完する。
更に時期国王をプロイセン公とすることで継承順位を生前に明確化しておくことで実質的な世襲体制に持ち込める。
§2 国内問題
ポーランドとロシアにまたがって居住するコサックの問題。これが国境問題とも絡んで両国の確執を生む。国境問題については教会の存在がある程度緩和してくれる。カトリック化した東方典礼教会(史実に存在したウクライナ典礼教会と架空のロシア典礼教会)が民族的な統一感をもたらし、両教会の勢力分布がそのまま両国の国境線を形成する。
コサックについては自治権を認めポーランド=ルテニア共和国(史実ではポーランド=リトアニア=ルテニア共和国として構想されたがロシアの干渉により失敗)として次の時代へと進む。
§3 対外関係
国外の敵、最も厄介な北方のスウェーデンとはきわめて良好。史実におけるスウェーデン・ヴァーサ朝の断絶も起こらないので、両国間に火種は無い。西のブランデンブルク(史実ではプロイセンとの連合)との間の領土問題も存在しない。
ロシア動乱時に生じたロシア・ツァーリの請求権も発生していないので両国の間の火種は小さい。ただしスモレンスク他の領土問題による小さな軍事衝突は起こる。
ポーランド・ハンガリーがともにハプスブルク家によって押さえられたためにバルカン半島における対オスマン戦争は効率よく進むだろう。
§4 王朝交代
史実のポーランドのヴァーサ朝は三代で断絶してしまうのだけど、スウェーデンにおけるヴァーサ朝については別のところで。プロイセン公からポーランド王へと進むハプスブルク系王朝であるが、史実ではちょうどこの大洪水時代にハプスブルク系のドイツ騎士団長が途切れてしまう。そこで史実でもポーランド王となったヤン2世・ソビェスキ(史実ではヴァーサ朝のヤン2世に続く3世)が少し早めに選出される。(史実上では74年に即位)
§5 ロシア・ポーランド戦争
史実では大洪水の一環であるロシア・ポーランド戦争によりウクライナの半分がロシア領となる。これはウクライナコサックの反乱をきっかけにしたモノで、この反乱の眼自体を先に摘んでしまえば何も起こらない。のだが、それでは面白くないのでロシアがクリミア・タタールと結んで攻め込んできたことにする。
史実ではクリミアタタールはポーランド側に付いて戦ったのだが、カトリック絶対王政のポーランドとムスリムのクリミアが共闘する可能性は低い。