鬼火

 角川文庫版と創元推理文庫版を比較してみました。我ながら暇な事を…。

 角川版 → 創元版

第一章

a) 句読点と改行

 角川版で除かれている読点が講談社版で四箇所残されている。これと関連して、角川版で句点になっているモノが創元版で読点になっている、他に角川版で一箇所余計に改行が行われている。

b) 誤記の修正

 跡も → 跡

 立こめて → 立こめて

 前者は角川版が、後者は創元版が正しい気がします。

c) 表現の修正

 思わずペッペッと唾を → 思わず唾を

 水鳥の音もこうであったかと思われるばかり → 水鳥の音にも劣るまじと思われるばかり

 カンヴァスである。 → カンヴァス。

 底光 → 底光

第二章

a) 句読点と改行

 角川版に無くて創元版に有る読点が三箇所。逆に角川版に有って創元版に無い読点が一箇所。また角川版で改行されていて、創元版で繋がっている箇所が有ります。

b) 表記の修正

 西陽 → 西日

 帰って → 還って

 一抹みの → 一抓みの

 判りますが → 分りますが

 あり得ない → 有り得ない

c) 表現の修正 

 先立たれて → 先き立たれて

 不思議でなりません。二人は → 不思議で、二人は

 蜻蛉のように、 → 蜻蛉のよう、

 うかべてついと → うかべるとついと

 手を → 手も

 帯びて来たのです。 → 帯びて参りましたので

 有様です。 → 有様。

第三章

a) 句読点と改行

 角川版のみの読点が五箇所。角川版で句点だったモノが創元版で読点に成っている箇所がひとつ。また創元版での改行が一箇所。

b) 表記の修正

 角川版で「言う」、もしくは「いう」と表記が、創元版では四箇所すべてで「云う」になっている。

c) 送りがなの省略

 励みが → 励が(「せい」とルビを振られている)

 打ち傷は → 打傷は

 惹き起さずに → 惹起せずに

第四章

a) 句読点と改行

 角川版のみの読点が三箇所。角川のみの改行が一箇所。

b) 表記の修正

 「言う」、「いう」 → 「云う」 四箇所

 プラットフォーム → プラットホーム

第五章

 後半の十行が検閲削除。後に復活。

a) 句読点と改行

 角川版のみの読点が二箇所。逆に創元版のみの読点が一箇所。他に角川版のみの改行が一箇所。

b) 表現の修正

 小さな小競り合い → 小さな競り合い

 女が → 突転(つっころばし)の女が

 出来る、とそういう風な絵でした。 → 出来る。

第六章

 検閲削除が数行。

a) 句読点と改行

 角川版のみの読点が五箇所、改行が三箇所。

b) 表記の修正

 「いう」 → 「云う」 二箇所

 寄り添うと、 → 寄り沿うと、

c) 表現の修正

 白っぽい洋服に着更えた代助の後についてお銀が → お銀が

 彼の → 万蔵の

第七章

 2P余りが検閲削除。

a) 句読点と改行

 創元版のみの読点一箇所。角川版のみの改行が一箇所。 

b) 表記の修正

 「いう」 → 「云う」 二箇所

 お互さま → お互いさま

 我 → 我れ

c) 表現の修正

 全体的に創元版は体言止めが多く、角川版は語尾が付け加わっている。

 検束して → 拘引して

 話です。 → 話。

 事なのです。 → 事。

 然し運命と → 運命と

第八章

a) 句読点と改行

 角川のみの読点が二箇所、創元版のみの読点が一箇所。角川のみの改行が一箇所。

b) 誤記?

 潜々と → 潜然と (「さめざめと」とルビ)

   お銀が → お銀が (これは本来台詞で有る事を示すモノなので角川版が間違い)

c) 表記の修正

 いう → 云う 二箇所。

 軽傷、 → 軽傷、

 泣きじゃくりながら → 泣きじゃくりしながら

 境を → 境いを

 後半へ続く