悪霊島

 事件の関係者の略歴、併せて磯川警部の半生について。

 金田一耕助 磯川常次郎警部 越智竜平

文治元年

 壇ノ浦の合戦で平家が滅ぶ。

 妻恋島に隠れていた平刑部幸盛郎党も詮議を恐れて入水自決。島の娘との間に子孫を残す。子孫は刑部姓を名乗る。

享保8年

 刑部家の娘が領主の寵愛を受け刑部一族に名字帯刀が許される。島や神社も刑部の名で呼ばれる様になる。

明治26年

10月14日 台風が岡山県一帯に大惨事をもたらす。刑部神社も崖崩れで埋まる。 

昭和7年

秋 鬼首村の殺人事件を担当。青池リカと知り合う。まだ駆け出しで意見は採用されず。(「悪魔の手毬唄」)

昭和12年

 「本陣殺人事件」を担当し金田一と知り合う。

 日華事変勃発。七つ違いの兄平太郎、応召し上海で散華する。

昭和17年

 岡山で保険金殺人事件に携わるが未解決。(「墜ちたる天女」)

 陸軍に徴兵され中国大陸を転戦。

昭和19年

 一度復員するが、再応召して南方戦線を経巡る。この時、妻が身籠もる。

8月中頃 刑部巴と駆け落ちする。吉太郎の裏切りにより発見され一ヶ月ほどで連れ戻される。その後、赤紙を受けて出征する。

秋 岡山医大へ進んでいた甥の健一が学徒動員に取られる。

昭和20年

6月 刑部巴、疎開先でシャム双生児を出産。巴、錯乱して子供を手に掛ける。

6月28日 磯川夫人、男子を出産。表向きは死産とされ産婆の手で(巴の産んだ子を受け取るはずだった)三津木夫婦へ渡される。

夏 終戦。磯川健一召集解除となり医大へ復籍。

昭和21年

春 南方より復員。警部に復職。(従軍のため昇進が遅れ、ついに警視には成れず)兄の忘れ形見健一の学費を援助する。

9月 「獄門島」事件で金田一と再会。

11月 蓮池家の失踪事件。(「鴉」事件)

昭和22年

10月 金田一から「悪魔が来たりて笛を吹く」事件についての問い合わせを受ける。

 糸子夫人亡くなる。腰に疾患をもつため二度と妻を持たなかった。

 大陸より復員。巴の結婚を知る。

昭和23年

5月 「夜歩く」事件。

6月 「八つ墓村」事件。

7月6日 妹尾四郎兵衛の社中、刑部神社の祭礼に招聘される。

9月中旬 金田一を誘って温泉宿で湯治。「人面瘡」事件に遭遇する。

10月? 「死仮面」事件の発端となる野口慎吉の遺書を金田一に見せる。

10月6日 妹尾四郎兵衛の一人息子松若、後月郡の家を出たきり蒸発。後に二人の息子を残す。

 戦後の大改革で力を失った網元に見切りを付け渡米する。

昭和24年

11月上旬 金田一と温泉に逗留。三年前の未解決事件(「鴉」事件)が片付く。

昭和28年

 「墜ちたる天女」事件。金田一の情報提供により上京し昭和17年の保険金殺人事件の犯人を捕まえる。

昭和29年

 「蜃気楼島の情熱」事件。志賀泰三、アメリカへ戻った後、二世婦人を娶る。

昭和30年

7月 「悪魔の手毬唄」事件。この当時はまだ金田一とは家族ぐるみのつきあいではなかった。

昭和30年代

 同郷の志賀泰三と知りあい、彼の援助を受けて成功する。

昭和33年

 岡山総社の薬売り失踪。

昭和34年

 兄嫁の家に同居する。実家の医療器具店は株式組織になっている。

昭和36年

 淡路の人形遣い山城太市失踪。

昭和39年

 新幹線が東京と大阪を繋ぐ。

 帰国。以来、日米を行き来して商売を広げる。

 三津木五郎の父癌で亡くなる。

昭和40年

 志賀泰三の紹介で金田一を訪ねる。

昭和41年

暮れ 三津木五郎の母肺炎で夫の後を追う。

昭和42年

春 三津木五郎、東京の(最高級の秀才でなければはいれない)大学を現役で卒業。両親の菩提を弔うために西国を旅行する。

5月5日 片腕と頼む青木修三を刑部島へ調査に送り込む。

 20日 雲竜丸、坂出から下津井へ向かう途上で遭難者を拾う。乗り合わせた船客がその最後の言葉を録音する。

6月 越智竜平より刑部島での静養を名目に青木氏の調査を依頼される。

 15日 三津木五郎、浅井はるを訪ね両親の素性を尋ねる。はるはその場逃れの嘘をつく。

 16日 はる、磯川に手紙を出す。

 18日 山陽電鉄で爆弾事件。一人死亡、十八人が重軽傷を負う。

 19日 はるの手紙を受け取る。

 20日 はるを訪ねその死体を発見する。

 23日 倉敷に到着し磯川警部と連絡を取る。

 24日 磯川と鷲羽山から刑部島を眺める。ヒッピー風の青年三津木五郎と出会う。

 25日 三津木五郎、刑部島に渡る。

 28日 上京した刑部守衛と会見。神社の御神体として黄金の矢を寄進する。

 29日 一度帰京し青木氏の動向について中間報告を行う。

7月1日 刑部島に渡る。巴親子と一緒にいる三津木五郎を見る。

 2日 刑部大膳と会見。

 5日 帰島。

 6日 妹尾四郎兵衛、無形文化財の神楽を舞う。神殿で火事騒ぎ。刑部守衛、内陣で御神体に胸を差し貫かれて発見される。

 越智吉太郎の操船で島を一周する。

 7日 未明 聞き取りに参加。

 吉太郎、大膳の命で双子の一人片帆を捜索する。阿修羅(どう猛な土佐犬)と格闘し、目指す少女の死体を発見する。

 8日 隠していたはるの手紙の残り部分を金田一に見せて岡山へ戻る。三津木青年の正体を知る。越智と共に真帆を捜索し紅蓮洞に潜入する。

 9日 洞窟内で事件の黒幕、刑部吉太郎と対決。

 10日 失踪した淡路の人形遣いの素性の情報を持って岡山より戻る。三津木五郎、大膳から本当の両親の名を聞く。

 三日間の大捜索が行われるが、巴の行方は遂に知れず。

 14日 巴の最後についての推理を越智竜平に語った後、刑部島を去る。

年譜→昭和42年