白と黒

 短編「渦の中の女」の改稿。しかし、他の作品のような書下ろしではなく、新聞連載であったので原型を生かしつつも新作と言って良い。

 事件が早期解決しなかったのは金田一の無能と言うより、関係者が事情を語りたがらなかったと言う点が大きい。

 

 根津伍市 一柳忠彦 岡部泰蔵

昭和6年

 水島浩三、叙情画家として売り出す。

昭和16年

 戦争の開始と共に水島の絵が売れなくなる。

 結婚。

昭和17年

 娘勝子が出来る。程なくして応召。

昭和20年

 終戦直前。身を挺して部下を救う。

昭和21年

 郷里へ戻って結婚。

昭和22年

 娘由紀子誕生。

昭和23年

 かつての部下一柳に就職の世話を頼むが麻薬中毒の所為で駄目になる。

昭和24年

 妻と離別。娘には母親は死んだ事にされた。

昭和30年

暮れ かつての部下だった渡辺達人を訪ね仕事を世話して貰う。

昭和31年

(事件の4〜5年前) 立花隆治、中東で石油を掘り当てて東邦石油を興す。

昭和32年

7月下旬 郷里に帰省。神戸の一柳家にもに立ち寄る。

 25日 妻洋子、須磨沖で事故に遭い行方不明。

 洋子の事故を知ってお悔やみに訪れる。

 金田一と等々力警部、スリーXにしばしば通う。

昭和33年

春 スリーXのホステスハルミ(緒方順子)、日疋恭助の世話を受ける。

5月22日 第28回衆議院選挙にて初当選を果たす。

9月 白井寿美子、岡部梅子が校長を務める中学へ勤務。

昭和34年

三月 二十年以上連れ添った妻梅子を亡くす。新規まき直し(妻の下で働いていた白井寿美子との再婚を含めて)を企図して団地に応募。

 ハルミ、日疋から店を持たせてやると持ちかけられたが、これを断って須藤達雄と結婚し店を辞める。

昭和35年

 京美、東大受験に失敗。

春 兄に預けてあった娘由紀子を引き取る。その際に渡辺の口利きで日の出団地の管理人となる。

4月の終わり頃 片桐恒子と名乗る女が日の出団地近くの店舗を借りる。五月の初めに越してきて洋裁店「たんぽぽ」を始める。

5月8日 亡き妻の姪戸田京美と共に日の出団地に入居。

 19日 寿美子の兄直也の元に届いた怪文書により縁談が暗礁に乗り上げる。

5月の終わり頃 京美、タンポポに通い出す。

6月 須藤順子、日の出団地に入居。

 タンポポのマダムの素性に気付く。それを報せに行った時のお礼がきっかけで再び麻薬に手を染める事になる。

7月の初め S・Y先生、信州に避暑。

 初め頃 順子、タンポポのマダムに弟子入り。

7月25日 妻の失踪から三年。再婚が可能になる。

8月半ば 盆踊りの晩。榎本、京美に忠告。(彼が怪文書を受け取ったのはそれ以前)

9月 中旬 S・Y先生、信州より戻る。ぶり返した東京の暑気に当てられてのびる。

 16日 地元政界の大物で彼の後ろ盾であった渥美俊政の娘繁子と再婚。

 17日 姫野三太、京美を中傷する怪文書を受け取り、憤慨して京美の家の扉の下へ入れる。

 21日 京美、怪文書が原因で自殺するが、須藤順子に発見されて一命を取り留める。怪文書は管理人の根津の手に保管される。

10月1日 先妻と再会。当座の資金を求められる。

10月3日 順子、横浜の臨海荘ホテルで日疋氏と密会。そこでタンポポのマダムと遭遇。日疋氏は逆にマダムの同行者に見覚え有り。

10月10日 須藤達雄、怪文書を見て日疋氏を訪ね、脅迫者がタンポポのマダムではないかと疑う。その後の行方は不明。順子、怪文書の犯人がタンポポのマダムではないかと疑って抗議に向かう。

 元妻あき子の訪問を受ける。これを榎本が目撃。

 11日 日本シリーズ第一戦。S・Y先生、三ヶ月ぶりの散歩に出て日の出団地の出現に驚く。その夜再び喀血し金田一の訪問を断る。

 須藤順子、金田一を自宅に招き夫の行方について相談する。京美と会い、タンポポのマダムの不在を知る。

 12日 事件関係者の聞き取り。

 14日 マダムの似顔絵が新聞に公開される。

 15日 事件の重要容疑者として須藤達雄の顔写真が夕刊に載る。

24日 衆議院解散。

25日 S・Y先生、回復。倒れて以来の新聞を読みふけり、日の出団地の事件に興味を持つ。但し、現場があの日見た団地である事に気付いていない。

 宮本寅吉、怪文書を受け取る(投函は14日)。夫婦げんかを起こし、以来冷戦状態になる。

 29日 順子、パトロンの日疋氏と渋谷で面談。その後、根津を見かけ、これを尾行する。

 順子の尾行に気付いてこれをまく。

 順子、根津を見失った後、今度は京美の伯父岡部泰蔵を見かける。

 立花の二号の家で寿美子と密会。

 30日 寅吉の妻加奈子の告白。

 順子の元へ届けられた怪文書に従って太郎池を探る。それを知った水島が失踪。

 寿美子の兄が保管していた怪文書を提出。

 池から脅迫状を作るのに使った雑誌と、行方不明の須藤達雄の死体が見つかる。

 31日 金田一、日疋氏と面談。日疋氏、マダムの密会相手が一柳忠彦議員であることを明かす。

 容疑者として逮捕。家宅捜査により自宅より麻薬が発見される。死体遺棄については認めるが、殺人容疑は否認する。

 榎本夫妻、根津の娘由紀子を預かる。

11月1日 金田一、宇津木慎策に一柳議員に関して調査を依頼する。

 別れた妻辻村あき子の証言でアリバイが成立する。あき子はその足で娘由紀子が世話になっている榎本家を訪ねる。親子の名乗りは無し。

 2日 伊丹大輔が新たな容疑者として逮捕される。

 3日 宮本タマキ、金田一に電話。そのまま行方知れず。翌日、死体となって発見される。

 5日 毎朝新聞にてマダムの素性が明らかにされる。

 6日 重要参考人として出頭。

 7日 由紀子、犯人に襲われるがカラスのジョーに助けられる。

 水島、駅のホームから飛び降りた際に頭を強打し病院へかつぎ込まれる。

 

 S・Y先生、金田一の訪問を受けて、事件の概要を聞かされる。

 20日 第29回衆議院議員総選挙。一柳氏の当落は不明。

年譜→昭和35年