仮面舞踏会

 神門財閥に関わる「貸しボート十三号」事件を含める。読み返すと「悪魔の百唇譜」も実は神門財閥絡みである。

 飛鳥忠熈 鳳千代子 田代信吉

明治四十一年

 飛鳥元忠公爵の次男として誕生。 

明治四十四年

 飛鳥公爵、軽井沢に別荘を建て万山荘と名付ける。

大正14年

 鳳千代子出生。父鳳千景は美人画の大家、母歌子は新橋の名妓。

昭和8年

 神門財閥の総帥雷蔵の長女寧子と結婚。長女熈子が生まれる。

昭和10年

 イギリスの探検隊に聴講生格で参加しエジプトで発掘作業に従事。

5月 反乱軍によって飛鳥元忠公爵が暗殺される。飛鳥家の書生村上達哉、公爵をかばって真っ先に殺される。秋山卓蔵、眠りこけていて事件を知らず。

 王家の谷で訃報を聞きロンドンへ戻る。メソポタミア・インダスの遺跡を見物し半年後に帰国。

昭和11年

 飛鳥家女中お静、村上の遺児を出産。実は飛鳥元忠公爵の胤。

 秋山、陸軍騎兵学校へ入学。

昭和14年

 女学校二年。父千景死亡。

昭和15年

 女学校三年。東洋キネマへ入社。笛小路泰久とコンビを組んで映画を撮る。

昭和17年

 村上一彦の母お静死亡。その出生の秘密を伝える。

9月 笛小路と駆け落ち。映画界を追われ移動劇団へ加入。そこで後に二番目の夫となる阿久津謙三と出会い厳しい指導を受ける。

昭和18年

10月 笛小路応召。この時妊娠五ヶ月。

昭和19年

 娘美沙を出産。笛小路の母篤子、二人の入籍を認め美沙を引き取る。 

昭和20年

3月9日 東京大空襲。麻布市兵衛町にあった笛小路邸も焼失。

 笛小路篤子、孫の美沙を伴って岡山へ疎開。

6月28日 笛小路篤子、岡山大空襲に遭い、津山の知人の元へ逃れる。

 美沙を失い、身代わりをどこからか連れてくる。 

8月15日 九州の炭鉱都市にて終戦を迎える。所属していた移動劇団は解散する。

10月下旬 千代子、津山で一年二ヶ月ぶりに娘と再会。

 この年、実母歌子を失う。

 兄の飛鳥公爵、敗戦により自殺。義父神門雷蔵が公職追放となり、その事業を受け継ぐ。

昭和22年

 吉祥寺に家を買い、篤子と美沙を津山から迎える。

昭和23年

 笛小路復員。成城に家を買って同居するも長続きせず。

昭和24年

 笛小路と円満離婚。

昭和25年

春 阿久津の劇団に客演。

秋 糟糠の妻を捨てた阿久津と結婚。

 美沙白血病を患い、継父となった阿久津から輸血を受ける。阿久津、血液型から美沙の出生に疑問を抱く。 

昭和28年

春 阿久津と円満離婚。

 美沙の喘息がひどく、軽井沢に別荘をあてがう。篤子の策による仮病の可能性有り。

昭和29年

5月 洋画家槇恭吾と結婚。千代子の恋愛遍歴が話題に登り、この結婚も長くないのではと囁かれる。

昭和30年

 銀座の百貨店で鳳千景の遺作展。

 長女熈子、桜井鉄雄と結婚。まもなく妊娠するも不注意から交通事故に遭い流産。もう子供が出来いと宣告される。

昭和31年

 槇と離婚。パリで作曲津村眞二と出会う。

秋 帰朝する千代子を追って来た津村と電撃結婚。

昭和32年

 岳父神門雷蔵死去。

秋 阿久津、前妻夏江を劇団に誘うが断られる。その際に漏らした千代子に対する疑惑が夏江の執念に火を付ける。

秋 試験別居。

 軽井沢の高原ホテルを買収。

昭和33年

秋 寧子夫人、狭心症で急死。これを期に神門財閥を義弟貫太郎に任せて引退する。

 忠熈の秘書村上一彦、学校へ舞い戻り美学を専攻。

 神門産業専務川崎重人(神門貫太郎実弟)の令嬢美穂子、弟の家庭教師をしていたX大学ボート部の選手駿河譲治と婚約する。

 川崎美穂子、婚約者の殺人を目撃。狂乱した駿河に襲われて弾みでこれを殺傷する。駿河の親友八木、二つの死体を心中に偽装する。

 神門貫太郎、金田一を介して事件の真相を知り二人を警察へ差し出す。

 試験別居中の鳳千代子と知り合う。

12月28日 阿久津の劇団で忘年会。津村真二と密談。阿久津は「あの男ももうながいことないな」と漏らす。その二時間後、不慮の事故死。

昭和34年

春 津村と正式に離婚。

春 笛小路、サギ罪に問われる。

夏 阿久津の元妻藤村夏江、先輩の樋口操と再会。彼女の隣の貸しバンガローに津村が住んでいることを聞く。

8月13日 夕方。軽井沢の高原ホテルに入る。

 14日 笛小路、未決により保釈され(保釈金は千代子が出す)軽井沢へ来る。夏江、津村と接触を持とうと軽井沢へ向かい偶然に同じ列車に乗り合わせる。

 一時頃。笛小路、津村と会って美沙の出生にまつわる疑惑を知る。

 千代子とゴルフコースを廻る。笛小路からの面談申し込みを断る。

 15日 笛小路、津村から美沙の秘密を聞かされる。

 夏江、津村を訪ねる途中で笛小路を目撃。予定変更してこれを尾行。ミモザ近くで熈子に目撃される。

 笛小路、酔ったまま軽井沢神門プールに入って心臓麻痺を起こす。翌未明に発見される。

 夏江、プールから出て来る女性を目撃。

 16日 小宮ユキと山中で心中未遂を図るが一人金田一に助けられる。金田一は名刺を預けて去ったのだが、笛小路の事件で立て込んでいてそのままになる。

秋 村上一彦、飛鳥氏の秘書を辞め学校へ戻り、考古学者的場英明教授に師事する。

秋 鉄雄、妻を伴って日展の洋画を見学。そこで熈子の同窓だった女性を伴った津村と出会う。

 笛小路泰久、詐欺罪で捕まる。

昭和35年

6月24日 白金会館の掃除夫藤野磯吉が「悪魔の百唇譜」事件の捜査線上に浮かぶ。

8月12日 津村、飛鳥氏を訪問する。何か言いたげだったが切り出さず。金田一に笛小路の死について調査を依頼する。

 夜 藤野、犯人に刺されるも、尾行していた警察に救われて一命を取り留める。

 13日 軽井沢に台風が直撃。停電が起きる。

 14日 矢ヶ崎の別荘にて槇恭吾の死体が発見される。警察の訪問を受けた千代子、飛鳥氏へ電話する。千代子からの電話を受けて、南條邸の金田一と連絡を取る。

 金田一、迎えの車で事件現場へ向かう。的場教授と一彦も同乗。途中、笛小路家の別荘に立ち寄り、一彦のみ降りる。(一時半頃)

 現場検証。現場に謎のマッチ棒。槇の死体がどこか別の場所から運び込まれたことが判明する。

 笛小路篤子、軽井沢へ向かう車中で等々力警部と知り合う。長野原駅でタクシーが捕まらず難儀しているところ、桜井鉄雄(飛鳥氏の娘婿)を見かけ、彼の車に同乗する。

 津村の別荘で等々力警部が合流。ここが事件現場であることが確認される。(七時過ぎ)

 15日 飛鳥家恒例のゴルフ大会。等々力警部も最終組に参戦、金田一は観戦。

 一彦、美沙の色盲を暴露。

 飛鳥氏を銃撃。その隙に美沙は姿を消す。

 熈子の告白。捜査陣が見落としていた藤村夏江の動向を聞かされる。金田一の提案で津村の別荘を張っている捜査陣を撤退させる。隣家の樋口操夫人、捜査陣の撤退を期に夏江を誘って別荘を探索。津村の死体を発見して狂乱する。そこへ捜査陣が到着し夏江の身柄を確保する。

 飛鳥氏の容態が落ち着く。電話での呼び出しを受けて笛小路邸へ向かう。熈子の指示で千代子を追ってきた鉄雄の制止により毒殺を免れる。

 捜査陣が到着。金田一、篤子と千代子に事件の詳細を語る。

 美沙を道連れに無理心中を遂げる。

年譜→昭和34年