鏡ヶ浦の二つの殺人

 昭和31年夏、金田一耕助は鏡ヶ浦*1に一ヶ月余り滞在し、ここで立て続けに二件(「傘の中の女」と「鏡ヶ浦の殺人」)の殺人事件に遭遇した。

 この二件、別の年の可能性もありますが、両方とも等々力警部が顔を出していますし、同時期に重なったと考える方が自然です。それにしても、等々力警部は一泊で帰るはずが随分と長逗留になってしまいましたね。

 年表ではこの直前に百円札偽造団の尻尾を掴んで、その報復からの保護を等々力警部に求めている。もしかすると鏡ヶ浦への長逗留はある種の避難だったのかもしれない。

 「傘の中の女」事件 「鏡ヶ浦の殺人」事件

大正末

 加納辰哉、結婚に失敗し失意の渡米。

昭和29年

 加納辰哉、三十数年ぶりに帰国。

昭和30年

 石原慎太郎「太陽の季節」を発表。第1回文学界新人賞を受賞(翌年には第34回芥川賞も受賞)

 加納辰哉、江川市郎の紹介で久米未亡人との再婚を決め、鎌倉に家を買う。併せて妹の忘れ形見である都築正雄を引き取る。

春 久米未亡人、鎌倉からの帰り道に自動車事故で亡くなる。

昭和31年

5月17日 日活映画「太陽の季節」公開。主演の長門裕之と南田洋子はこの共演をきっかけに結婚する。

8月始め 金田一、鏡ヶ浦に滞在。

 金田一、加納辰哉と知り合う。

18日(土) 

 午後四時過ぎ、週末の休暇で駆けつけた等々力警部が合流。隣のビーチパラソルの中で死体を発見。

 午後五時頃、江川市郎教授と助手の加藤女史の会話を聞く。

 夜、ホテルを尋ねてきた地元の坂口警部補に目撃談を語る。

 夜遅くまで警部と話し込む。

19日(日)

 ネプチューン祭。

 九時頃、警部と共に朝食。

 正午過ぎ、ミス・カガミガウラ・コンクール。等々力警部と共に審査員として参加する。

 午後二時、ミスと準ミスが選ばれる。

 江川教授急死。加藤女史毒殺を主張、ひそかに法医学の最高権威・古垣重人教授(「病院坂」にも登場)に出動を依頼。

 夜、望海楼で江川教授のお通夜。

 20日(月)

 御前十一時、江川教授の遺族と古垣教授が駆けつける。

 加藤女史、事件の凶器を披露する。

 21日(火)

 午後、江川教授の遺体解剖。皮膚から血管に入る毒物によ中毒死と判明。 

 22日(水)

 一柳芙美子の溺死体発見。

 夜、金田一の大博打。関係者を集めて犯人に罠を掛ける。

*1 どこか架空の場所だと思っていたけど、南房総の館山湾の別称なんですね。

 

等々力警部の事件簿→昭和31年