テーマ15 用法用量を守って…

 切り口としては第八回の応用・変形になるのでしょうか。今回の題材は「忍者黒白草紙」(山田風太郎)です。考えてみると、対照作品でなく本題として山風作品を取り上げるのは初めてですね。

実在と架空と

 時代小説の手法として、架空の人物である主人公の引き立て役として実在の人物を登場させることが良くあります。しかし、これはある意味で諸刃の剣です。

 まず、登場する実在人物が有る程度名の知れていないといけません。その人物の説明に頁を割きすぎては興醒めですから。そして更に問題なのが実在人物の取り扱い。引き立て役である以上、ある程度割を食ってもらわなければなりませんが、扱いを誤るとひいきの引き倒しになりかねません。これが今回のテーマである「用法用量」になります。

 しかし最適な「用法用量」と言うもモノは有りません。何故ならばもう一つの重要要素として人物の知名度と人気が有るからです。歴史上の人物というのは時代と共に評価が変わります。顕著な例がかつては汚職政治家の走りと見られた田沼意次。昨今ではその経済センスが評価され、逆に政敵松平定信は経済音痴の反動政治家として落とされる傾向が見られます。

 本作の影の主人公である鳥居甲斐守も執筆当時から見れば知名度の点では相当に低下しているでしょうが、評価という点ではさほど変化していないのではないでしょうか。それは彼の評価がその攘夷論的な政治思想でなく苛烈な政治手法から来ているからでしょう。

知名度と再評価

 さて、山風作品で知名度の変化による再評価が期待されるのが「叛旗兵」です。この作品の主人公は直江左兵衛。実在の人物ですが、その実像がほとんど知られていない人物です。しかしこの人物、史実に詳しい読者なら、正体を見抜けたはずですね。

 再評価というのは主人公の岳父である直江山城守兼続。今年(2009年)の大河ドラマの主人公であります。大河の話は別の場所でやっているので此処では扱いませんが、他にも近年急激に人気・知名度が上がっているかの前田慶次も登場します。

 恐ろしいのがこの作品はほとんどの逸話が史実であると言うこと。作者の創作部分は”松の廊下の刃傷事件”と武蔵・小次郎の隠密活動ぐらいでしょうか。

再構成

 本稿を書くきっかけとなったのが、漫画化作品である「アイゼンファウスト」(作画・長谷川哲也)です。史実を元にしたアレンジのうまさでは、すでに実績のある漫画家なだけに今後が期待されます。

関連稿・鉄拳精細

戻る