テーマ8 混ぜるな危険?
前回の予告では捕物帳を取り上げるとか書いていましたが、急遽予定を変更します。
本歌取り
さて今回取り上げるのは「火星の土方歳三」(吉岡平)です。これ自体を時代小説と呼んで良いのかやや疑問は残るのですが、要するに蝦夷地で死んだ土方歳三(まさかこの人物に注釈は必要ないでしょうね)がなおも戦いを求めて火星へ転生すると言うお話です。火星と言っても我々の知る不毛の大地ではなく、バローズが書くところの古典SF的な火星世界です。
私自身は元ネタを読んでいないので作品世界についての評価は出来ませんが、この手の作品はバローズタイプとして独立した分野を形成するそうです。私が読んだ唯一のバロウズタイプがムアコックの「火星の戦士」シリーズなんですが。あのムアコックですら、このシリーズではバロウズタイプの枠を越えられなかったというくらい影響力の濃いモノらしいです。
で、例によって類型作品を紹介しようと思うのですが、この選定がなかなか難しいのですね。他人の作品を利用して、と言う視点だと思いつくのは山風忍法帖の一つ「忍法八犬伝」でしょうか。元の「八犬伝」がそもそも日本版水滸伝を目指したモノであるらしいのですが、たいして山風の忍法帖も同じく水滸伝を意識して、登場する豪傑の武術を忍法で置き換えたモノとされていますから、これは先祖帰りといえるでしょうか。
異物混入
もう一つの見方として、確立した作品世界に異物を持ち込んで再構築すると言う手法が考えられます。その方向だと同じく「忍法忠臣蔵」が挙げられます。本来の火星シリーズに抵触しない、元ネタの外伝として読める、と言う点でも共通項が見いだせます。
異物と言うにはやや疑問が残りますが、世界の方が行った先の世界が現実世界の珍妙なパロディになっているのが「魔天忍法帖」です。歴史・時代小説でおなじみの面々が僅かにずれた、それでいてなるほどと思わせる役割で現れるので、かなり混乱します。
夢オチである点が評価を落とす要因ですが、忍法帖としての味は充分に残していると思います。
付け足し 05/02/18
すでにご承知の方もいると思いますが、吉岡氏は「火星の〜」の続編を書きました。その題名は「金星のZ旗」!
私は主人公の名を見てもすぐにぴんと来ませんでしたが、オタな友人に見せたらすぐに当てました。まあ、確かに日露戦争100年とか言って一部では盛り上がっていましてけどねえ。