テーマ6 歴史改変時代劇
さて今回のネタは「AZUCHI」(すずきあきら ソノラマ文庫)です。
タイトルの方はさほど悩まなかったのですが、比較対照がすぐに思いつかなくて…。洋ものなら幾つか有るんですが、この企画の主旨(そんな物が有ったのか?)と合わないし。
歴史改変時代劇
歴史小説であれ、時代小説であれ、歴史そのままではあり得ないのですが、定説となる歴史的事実を動かす事は有りません。それに対して歴史改変小説では積極的に事実の書き換えが行われます。で、史実と記述との食い違いを説明するだけで頁を喰い、もしくはその説明をネタとして展開するのが通常です。しかし此処で取り上げる「歴史改変時代劇」は基本的にはその説明を省きます。歴史改変をパラレルに処理するため、その手法はSF的に見えます。その意味でこの稿はテーマ2の続きでもあります。
さて「AZUCHI」の内容ですが、戦国架空戦記物でよく見られる「信長が本能寺で死ななかった」世界を取り上げています。主人公は信長の息子で明智光秀の養子と言う事になっています。この辺が本能寺を不発に終わらせる一つのくさびなのでしょう。それ以外にも幾つか(本能寺以前の段階での)史実との違いが見受けられます。
信長を殺そうとする黒幕(内緒)は向うの世界、つまり史実を知って秀吉や家康に謀反を促します。この辺が多層世界的なのですが。教唆に引っかかった人物が本能寺を信長を襲う事になります。これで信長が殺されてしまうと有る意味で予定調和と言う事になるのですが、結果は伏せておきます。
比較対照物
さて、比較対照として思いついた作品とは、「ウエスタン武芸帳」(菊地秀行 ソノラマ文庫 全三巻・未完)です。奇しくも同じ版元の作品となりました。
こちらは新撰組モノです。幕府が薩長をうち倒した世界において、アメリカへ逃げ延びた坂本龍馬を沖田総司以下の新撰組隊士が追撃すると言う内容ですが、沖田がかの有名な決闘に介入した所で中断しています。
この世界の沖田は向うの魂を取り込んだ所為で二人分の精神力を持った魔人と化しています。彼の存在が二つの世界を繋ぐ接点となっている訳ですが、他にも(史実通りに)死ななかった人物が何人も登場します。
非常に面白いのですが、何せ中断作品ですので是非とも続きを期待したいです。
おまけ
主旨から外れますが思いついた「洋モノ」を作品名のみ紹介します。
「ディファレンス・エンジン」(W・ギブスン+B・スターリング 角川文庫 上下巻)
「錬金術師の魔砲」(J・グレゴリイ・キイズ ハヤカワ文庫 上下巻)
「高い城の男」(P・K・ディック ハヤカワ文庫)
反省
今回は全くRPGの話がありませんでした。