§5 亜人類学・序論

5−1 亜人類の定義

 ここで言う亜人類とは生物学的に異なる種であり、基本的に混血が不可能である種族を指す。西洋風ファンタジーに登場する一部の亜人類種は人類との混血可能となっているが、それはまた別の種族として扱うモノとする。

 以前取り上げた人型魔獣と亜人類の違いは、単に知性の有無を問うのでなく、人類と異なる独自の文化・社会体系を築き上げているか否かである。たとえばミノタウロスメデューサが群れを成して集団行動を取るとは考えにくい。

 逆に、RPGにおいてPCとして選べない敵性種族の中にも亜人類と呼べる種族が存在するが、これら種族についての各論は別稿にて考察したい。 

5−2 進化論的アプローチ

 そもそも一つの世界で二種類以上の知的生命体が別個に発生しうるだろうか。発生したとして、互いの文化レベルに極端な差が有れば(史実に見られたように)一方が他方に吸収されてしまうだろう。まして起源の異なる二種族では混血も起こらない。となれば一方が完全に駆逐されても仕方がない。但し、勝つのが文化レベルが高い方と限らないのは史実からも明らかである。

 別の可能性として、人類が別々の環境で進化した結果として互いに混血が不可能なほどの遺伝的差異が発生した場合である。遺伝レベルでの差異が文化の発展進度にどの程度の影響を与えるのか、興味深いが、この場合にはむしろ環境の影響の方が大きいだろう。

 社会進化論では社会が一直線に進化していくと言う原則に基づいて「進んでいる」か「遅れている」かが判定される。しかし亜人類に対してその原則が当てはまるかどうかは疑問である。まあそれ故に人類同士の文化比較より相対性が保たれる気もするが。

5−3 創造論的アプローチ

 多くの西洋風ファンタジーでは多神教が採用されており、それぞれの神が自分たちの僕として有限寿命種族を創造した結果、人間を含む多種の亜人間たちが世界に満ちる事となる。ただし、神も人間の想像の産物とする魔法世界ではこの設定は使えない。しかし亜人類が存在する世界では一神教が発生しにくい事は確かだろう。

5−4 構造機能主義的アプローチ

 非常に難しく、自分でも内容を完全に理解しているとは言えないが、構造とは「社会の骨組み」を意味するらしく民族・種族の特徴が顕著に現れる部分であろう。対して機能とはそうした構造同士の相互作用と定義される。

 構造として具体的に考えられるモノとして衣食住(=経済活動)・言語と文化・家族制度そして宗教や禁忌などが挙げられる。亜人類を考案する際にはこれらの要素を少なくとも一つは考慮する必要があるだろう。

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