巻の拾壱

 

§1 子をとろ子とろ(続き)

 状況説明に地図を提示できるのが漫画の強み。

 お雛をめぐる頼宣と転生衆の論争。原作では柿色の頭巾を被っている転生衆だが、漫画では顔はむき出し。指がないから、と主唱する役目は原作では又右衛門なのだが、漫画では但馬守に。逆にその後の「先客があっては・・・」と言う補足を又右衛門が担当。

 転生を否定し、原作では口にしなかった「天下を取る」と言う言葉を口にする漫画版。珍しく「そうは参らぬ」と言葉を発する武蔵だが、漫画ではあっけに取られる一同の表情が描かれる。それを受けた又右衛門の台詞も但馬守と分担。

 その後の台詞まわしはかなり省略。逆に「いつ何が起こるのか」と問い詰められて、「わしにわかるわけがなかろう。宗意軒さまならともかく」と開き直る但馬守が描かれる。そこで思いついたように「道を変える」と頼宣。原作では、これを命じるために牧野兵庫を呼んだのだけど。

 原作ではこのシーンよりも先に書かれていた弥太郎と根来衆の追いかけっこ。そして弥太郎を追う戸田五太夫だが、弥太郎に追いついた後、原作では密書の回収に応じないのに対して、漫画では斬りだす間もなく根来衆に襲われる。逃げた弥太郎は柳生の侍と行きあい、彼らは五太夫に助太刀して満身創痍の根来衆を討ち果たす。しかしそこに現れたのは頭巾で顔を隠した但馬守。

 頼宣に挑発されたからというわけでもあるまいが、一足先に柳生城へ向かった但馬守は留守居役狭川源左衛門以下の柳生の侍を斬って、弥太郎を捉えてしまう。その前に出発の場面をベアトリスに見とがめられるシーンを挿入。

 この決着については原作では次章だったのだけど。

§2 奉書試合

 弥太郎を捉えて戻ってくる但馬守を見とがめる十兵衛一行。それを助けるためにお縫とおひろは敵陣へ乗り込む。原作では弥太郎の捕縛を知るのは別の状況なのだけど。

 二人に西の江殿への決闘状を託す十兵衛。西の江殿とは父但馬守の戒名からつけたモノ。父と子の決闘の場所は父の墓の前。もうし

 おそらく無駄をは承知で人質交換を申し出る十兵衛だが、構わず剣を抜く但馬守。但馬守が交換に応じていたらどうなったんだろうねえ。

 ともあれ戦いは一瞬で決まる。原作では但馬守は秘伝書が偽物だと知らずに斃れるのだけど、漫画では説明のために確認の台詞を残して逝く。

 十兵衛の言いつけを聞かずに追ってきた十人衆。その一人平岡は新手の転生衆に一刀の元に斬り伏せられる。その正体は残した台詞から概ね察しが付くのだが、原作では根来衆から「荒木殿」と呼ばれてヒントを与えている。

 柳生の庄へ入ったものの、抵抗が無く肩すかしを食った頼宣。反応を見たかった但馬守も既に討たれた後とあって、鬱憤晴らしに三人娘の一人を所望する。娘の一人お縫を連れてきた根来衆は舞い上がって軽口を叩いたために叱責を受ける。この辺の経緯は絵だとちょっと判りにくいかも。

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