巻の拾

 

§1 西国三番札所(続き)

 お品を押し倒した四郎は、原作ではまず両肩を脱臼させて戦闘力を奪うのだが、絵にしにくいと思ったのか、縄で拘束されたままにしてある。その後犯すのは髪切丸の材料を取るためなのだけど、材料は女を犯して恍惚にする必要があるからだ。

 そこへ十兵衛が到着。原作ではお品がその名を教えるのだけど、漫画では自ら名乗る。お品が口を利けなかったのは四郎が切り取った髪の一部を咥えていたからで、それを使って四郎の髪切丸を封じる事で十兵衛に助力した。これが原作ではお品は自らを傷つけて髪切丸の忍法の発動を阻害したのである。ただ、漫画版では両手が塞がっていてその手が使えなかったのだ。お品が髪切丸を操れるという設定もこの為だろう。

 十兵衛に斬られた後、味方の根来衆の手裏剣を受けて息絶え絶えの四郎だが、最後に十兵衛の疑問に答える。すなわちもう一人の柳生の名前。十兵衛の父但馬守宗矩の存在であった。

 お品の方はなぜ絶命に至ったのか。原作では自分で付けた傷が致命傷になったと思われるのだが、漫画では手裏剣の流れ弾が致命傷になったようだ。そのお品は四郎が持っていた宗意軒の指を飲み込んで始末する。原作では初めから四郎が持っていたようだが、漫画ではお品が持っていて、この場で四郎が取り戻したように描かれている。

 一人居残ってお品と四郎のやり取りを聞いていた小三郎が状況を説明するが、それでも謎は残ったまま。特に髪切丸や魔界転生については詳細に説明されても理解は難しいだろう。

 ともあれ、駆け付けた柳生衆と合流し、磯谷千八と戸田五太夫の二名を弥太郎の追跡に向かわせる。これが原作では千八と小屋小三郎になっていて、なぜ変更したのか不明である。

 これを草陰からこっそりと聞いているベアトリスお銭。戻ってきた根来衆から五名を追手に差し向ける。原作では頭巾を被っている為にお品と間違われるのだが、漫画ではどちらも顔をさらして動いているので直ぐに気付く。

 転生衆の元へ戻ったお銭。報告を受けて、弥太郎を密使に使った事を褒めたのは原作では武蔵なのだが、漫画では又右衛門と宗矩に振り分けられている。お銭は二人の死体を探ったようだが、肝心の宗意軒の指を見つけられなかった。ここに及んで十兵衛の転生は無くなり、また当面大納言に用いる為の指が無いのでそれを採りに戻る事になる。

 そして弥太郎追跡作戦へ移る。

§2 子をとろ子とろ

 この追跡劇はかなり改変されています。まず途中で拾った野犬が登場しないこと。三匹の犬は弥太郎の友達の名前が付けられるのだけど、その名前が出てくる話がそもそもカットされていましたかrね。

 弥太郎を先に発見したのは根来衆。弥太郎が出くわした謎の少女千登世。そして根来衆を退けた謎の老人与五郎。かつて武蔵とも打ち合った事が有ると言う彼こそ「剣鬼喇嘛仏」の主人公長岡与五郎その人でしょう。言うまでも無く、漫画作者の遊びですね。原作の方だと与五郎は死んだっぽいですけど。

 谷を渡る駕籠に乗る弥太郎を捉えた根来衆。綱を切って落とす手も有ったが、敢えて綱を渡って追いつく方を選ぶ。その後方から現れた千八と五太夫。二人掛かりで綱を斬る事に成功するが、千八は手裏剣の一撃で絶命。しかし値ごろ衆も二人が谷底へ落下して文字通り落命したから、実力差からいっても大殊勲でしょう。

 大納言の慰みものになりかけたお雛を救ったのは皮肉にも転生衆。指が無い状態では後々に転生のさわりになるからなのですが。ここで次巻へ。

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