巻の玖 

 

§1 西国二番札所(続き)

 宗意軒の占いを一笑に付して出府の意思を曲げない大納言。宗意軒の代弁者としてそれを諌める四郎だが、連敗続きの転生衆への疑念を漏らす大納言に、自分がその汚名を晴らすと主張する如雲斎。

 行くなら勝手に行けと言い放つ大納言。それを受けて十兵衛を城に誘き出して御前にて討ち果たすと提案する四郎。その上で自分たちの同行を承知させる。

 大納言退出後、お品に十兵衛の誘い出しを命じる四郎。裏切りの疑いを晴らすためにもそれを受けざるを得ないお品であった。十兵衛との再戦にいきり立つ如雲斎は「片腕を斬ってお前にくれてやる」と豪語する。これを聞いた但馬が忠告を発するが、原作では、「そうなるかもしれぬ」と謙虚な対応なのに対して、「ことの終わりに笑っているのはわしだ」と言い放つ。

 そして十兵衛の元に向かったお品。原作では木の下の縁台に寝転んでいる十兵衛だが、漫画ではただ寄りかかっているだけ。御品が現れるのも原作では木の影だが、漫画では天幕の裏。十兵衛はその気配に気付くのだが、絵では表現しにくいと見えて、漫画では十兵衛の方から誰何している。

 原作では別れ際に戻りたくなったら戻ってこいと言った事を受けて「その気になったか」などと軽口を叩くが、原作では直ぐにお雛の安否を聞く。場合によっては自害もしかねないと言うが、顎を外されていたから無理と答えるお品。それをしたのは当の本人なのだだ。ともあれ半分本音をちらつかせながら、十兵衛を城へを誘うお品。それを半ば罠と知りつつ乗るしかない十兵衛。

 この誘いを利用して柳生衆と二人の娘を逃し、且つ密書をもって走っている弥太郎を止めるように指示し死地へと向かう。

§2 生死一眼

 原作では出迎えて道筋を説明するだけのお品だが、漫画では頭巾をかぶらせた後自分で道案内をする。その方が絵になるからね。抜け穴の井戸から城の中へと進む十兵衛。

 天守の最上階で待ち受けていたのは頭巾をかぶった男と全裸の女。初めは大納言とお雛かと思ったが、殺気から別人だと悟る。天守の外の匂欄で対峙する二人。原作ではここで女を投げつけるのだが、漫画では外に出る際に女を捨てて反対側へ走る。何れにしても十兵衛は如雲斎と顔を隠したお品に挟まれる格好になる。

 鍔競り合いで押し切られるかに見えたところで、お品の含み針が如雲斎の残った左目を奪う。ここで戦局は逆転して十兵衛の勝利となるのだが。原作ではこのお品の裏切りはこの時点では説明されない。

 この光景を下から見ている大納言と転生衆。十兵衛の勝利を見て追撃に動く四郎。又右衛門は如雲斎の異変を指摘し、師匠の但馬守もそれに同意を示す。漫画ではこの相槌は武蔵と二人同時にした様に見える。

 如雲斎の死体を見つけた四郎は、その死体を逆から見た時にまるで笑っているようだとせせら笑う。これは但馬とのやり取りからの伏線であるが、漫画ならではの表現だ。ともあれ、その死体を調べてお品の裏切りに気付いたと思われる。

§3 西国三番札所

 お品の忍び綱を陽動にして無事に城を抜け出す十兵衛。予定の刻限を迎えて、出発を宣言する大納言。原作ではここで章替わり。

 柳生衆を追っていた根来衆の前に現れたお品。根来衆を騙して城に戻らせると、柳生衆に手裏剣の投げ文で出発を促す。字が十兵衛の物でないと指摘する五太夫だが、一方でこれが十兵衛の意に沿ったものだと断じて出発を決める。その一方で一人を残して様子を見届けさせる周到ぶり。(原作では戸田老と書かれているので、もう少し老けた容姿にすべきだったかな)

 柳生衆が去った粉河寺に姿を見せたお品の前に現れた四郎。根来衆を配して包囲する。根来衆の放った縄で両手を封じられるお品。原作では和歌山城での裏切り行為を指摘されて動揺した隙を突かれたが、漫画では捕えられた後になっている。原作ではここで始めて含み針の話が出てくるのだけど。

 両手を塞がれたまま四郎に圧し掛かられるところで次巻に続く。

 

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