巻の捌
§1 剣道成寺
十兵衛の指示を受けて一行を出発させる五太夫。但し漫画版では圧縮して事後承諾にしてある。伊達左十郎が十兵衛とお品の不在を指摘するとおひろと小栗丈馬がそれぞれ弥太郎と金丸内匠がいないと言い出す。ここで五太夫の説明が入る。主人公不在で動きの無いシーンなので軽く流して、今度は根来衆のターン。先行した三名がやられているのに気付いて驚愕しつつも反撃の意思を固めるのだけど。
道成寺の鐘を興味深げに見つめる三人娘。小栗が「清姫が焼いた鐘が残っているはずがない」と殺風景な事を言うのは原作通り。後ろで磯谷と逸見が軽口をたたき合う仲、突如一行を囲む根来衆が出現。鐘に近づいていたお雛に四方から縄が飛ぶ。そこへ颯爽と登場する十兵衛。原作では先に手裏剣を飛ばして縄を切るのだけど、漫画では先に一人を切り倒してそれから。
十兵衛に気圧される根来衆だが、そこに現れた新たな転生衆。原作では柿色の頭巾とあるが、漫画ではビジュアルを考慮して笠である。しかも無言で殺気を放つ。その下からちらりと見えるのは柳生如雲斎。
ここで出発前の但馬守とのやり取りが挿入。「わしのせがれを倒せるか」と挑発する但馬。生前の因縁からにらみ合う二人。
剣を抜くや互いに八双にかまえて対峙する十兵衛と互雲斎。原作での細かい心理描写は省略して、斬り合う二人。すれ違いざまに互いの右目を奪い合う。元々隻眼だった十兵衛は単なる負傷で済むが、片目を失って間合いが取れない如雲斎は動揺が隠せない。とっさに鐘楼の近くにいたお雛に向かって走り出す。
逃げろと言われたお雛だが、原作では逃げる余裕が有りながら剣を抜いて立ち向かったように描かれている。一方漫画では抜き切らずに如雲斎の剣で制されてしまう。この方が如雲斎の凄さが際立つけど、文字だと状況がイメージしにくいですね。
例の娘だなと確認する間もなく、丈馬が柱を斬り倒す。原作では反対側を指示を受けた小三郎が斬り倒すのだけど、そんな余裕は無し。逃げろと言われたお雛だが、如雲斎に捕まって二人で鐘の中に閉じ込められる。鐘の中のお雛に声を掛けた丈馬は如雲斎の鎧通しによって絶命する。
お雛を質に取られ引くしかない十兵衛。若い小三郎は反対するが老練な五太夫がお雛の命を気遣って諭す。その後の瀬兵衛の無念の言葉はカット。去り際に如雲斎からもう一人の柳生の人間の存在をほのめかされ動揺する十兵衛。ここで再生という言葉を使われるのだが、そこを突っ込むゆとりもない。
§2 髪切り評定
原作に無い章題。前話の終わりで四郎に問い詰められるクララお品。原作とやや口調が違うのはキャラ設定が若干違っているから。
原作では眼をつぶらせて髪切丸でなぶるのだけど、漫画では先に髪切丸を仕掛けてから眼をつぶらせる。原作では「私を殺したら宗意軒が黙っていない」と言われて怯んでしまうが、漫画では「あんたなんか嫌い」と言い放つ勝気なお品。
そこへ如雲斎がお雛を連れて戻ってくる。片目を失った如雲斎をなぶる但馬守。原作ではけらけらと描写されるが、漫画だとにたにたと言う感じだ。この辺も漫画版の方がキャラの崩れ方が激しい所為である。そんな二人の絡みを放置して、根来衆に状況を問いただす又衛門。十兵衛が来るかと疑問を呈するが、来ると断言するのはその父親。
§3 西国二番札所
眼を覚まし、自分を抑えつけているのがお品だとしって混乱するお雛。四郎の髪切丸でなぶられてとっさに舌を噛もうとして、背後のお品に落とされる。この時に肩を外されて献上が日延べされる。
根来衆より十兵衛一行の動向が報告され、それを聞いたお雛が安堵する。原作ではそれを聞いて微笑むのだけど、漫画では落とされて朦朧とした状態である。
悩みつつも和歌山城下の手前で、三井寺の門前で幕を張って青空道場を開設する十兵衛。これからの行動を思い悩んでいるのだけど、これはもう絵にならない。
一方、目が慣れた事を確認する為に、原作ではお雛の簪を、漫画では四郎がもて遊んでいた歯を試し切りに使う如雲斎。原作では又右衛門が志願して但馬守がそれに異議を唱える(斬り捨てるならともかく、殺さないなら自分か武蔵にと言う)が、そこは省略。如雲斎の回復を確認して継続を了承するだけ。そこへ牧野兵庫頭が一人の女を伴って現れる。
江戸に残っていたベアトリスお銭は宗意軒の使者として現れたのだが、それを聞いてお品とお雛が入室。原作ではお雛が先にとあるが、漫画ではひもに繋がれて後から付いてくる。また小指は食いちぎられて居らず、お雛も顔の下半分を包帯で覆われているが顎が外された様には見えない。それだと絵的にきついからだろう。ここでベアトリスからお品は四郎と同じく髪切丸が使えると語られる。
宗意軒は紀州大納言の出府を諌めるが、聞き入れなかった次善の策として転生衆に護衛を命じた。転生衆からの換言は原作では宗意軒の指示だが、漫画では四郎から主張する。万が一の転生準備として忍体を準備しておけと言う命令を聞いて、自分の行動を正当化する如雲斎。但馬はそれをスルーして手を出さなくて良かったなと四郎に振る。四郎は笑って流すが、原作のような苦笑ではなくニタニタ笑いなのはキャラ付の違い。それを見てそっぽを向いて苦笑いするお品。
十兵衛との対決が後回しにされて不服な如雲斎。大納言は宗意軒の危惧を一笑に付す。とここで次巻へ続く。