忍法魔界転生・換装 巻の伍

 

§1 黄泉坂(四)

 十兵衛と転生衆の霧の中の対峙。原作ではたったの一行なのに、漫画では数ページを費やす力の入れよう。武蔵がつぶやいた「惜しい」の一言も余韻を感じさせます。

 原作では転生衆が現れる前に行われた木村助九郎の遺言は漫画では転生衆が去ったあと。つまり原作では敵の名前を知った上で(信用したかどうかは別にして)の対峙だったのに対し、漫画では先に対峙した後で敵の名前を聞かされたことになります。

 十兵衛に命じられて和歌山城下を探索したのは、原作では磯谷千八一人ですが、漫画版ではほかに逸見瀬兵衛と平岡慶之助を加えた三名。(と言ってもこの話数ではまだ名前が紹介されていませんが)

 目覚めて和歌山に帰ると言い出す三人娘。かたき討ちを主張する三人娘に対し、助九郎の遺言はかたき討ちではない。と諌める十兵衛。但しこの後の台詞は漫画では省略。実際に転生衆と対峙した経験から簡単に討てる相手ではないと悟った故でしょうか。

 一番特徴的なのが原作にあった「十兵衛は軍師となる」と言う台詞が削らていること。構造的には前作の「柳生忍法帖」と同様に「娘達を守って強敵と戦う」ことになるのですが、「魔界転生」では敵味方ともに強さが桁違い。十兵衛が矢面に立たざるを得ないと言う大きな違いを示しています。

 そして原作には無かった転生衆の帰途が挟まれます。ここでクローズアップされるのが裏ヒロインのお品。今回も敵方に居た女性がヒロインの座を食ってしまうのですね。山風作品では敵の悪女が如何にも魅力的なのです。

§2 柳生十人衆

 なんとここで原作とは異なる章題が用いられます。原作にあった「やるか」と言う勇ましい章題が替えられている十兵衛の決意の程が表されているようです。

 原作では三人娘に「いくぞ」と声を掛けているのですが、漫画版では明らかに同行を渋っている様子。とは言え、十人衆を呼んだ目的が三人娘の護衛なのだから、彼女達の覚悟を確認しただけのようです。ここで台詞を与えつつ十人衆を紹介していくわけですが、小説だと一人一人を描写する必要があるのでいささか間延びするところを、漫画では画で見せて名前をそっと添えるだけでいいので分かりやすいですね。小説だとその他大勢のモブキャラは扱いにくいですからね。(まあ十人衆は決して単純なやられ役では無いのですけど)

 一通りの説明の後、十兵衛の「やるか」の一言で次回へ。

§3 ゲームのルール(一)

 場面替わって和歌山城下の牧野屋敷。原作であった頼宣と牧野兵庫頭の相談は省略していきなり転生衆との談合と相成ります。(残酷な転生衆の日常も画ではインパクトが強すぎるのでなし)

 原作で頼宣が兵庫にぶつけていた質問を兵庫が転生衆に直接ぶつけますが、答えるのは主に天草四郎。と言うか他の六人はあまり政治向きの話は興味なし。原作はしぶしぶ答えていた但馬守ですが、漫画ではあっさりと応対しています。

 十兵衛と松平伊豆守の関係を聞いて色めきたつ頼宣主従を制止したのが天草四郎。十兵衛を味方として迎える計画を披露します。そこへ十兵衛来訪の知らせ。

 原作では先回りした十兵衛が仕掛けを動かして地下への入り口を開けてしまうのですが、漫画では見張りが開けて出てきたところを待ち構えている画に変更。距離を取っているところを見ると、自分であけてやぶ蛇になるのを避けたような印象ですね。

 そして「公儀隠密の御用」と言う衝撃の一言。

§4 ゲームのルール(二)

 一人で柵を抜け出した弥太郎少年が初登場。原作では転生衆に遭いに行く途中で頼宣主従と出くわしているのですが。

 十兵衛と頼宣主従の駆け引きは途中から割って入った天草四郎とのルールの確認へと移行します。一通り確認を済ませて帰ろうとする十兵衛に「待て」と声を掛けたのは原作では天草だったのですが、漫画版では牧野。でも十兵衛には全く相手にされず。

 そして弥太郎少年が十兵衛に合流。

§5 ゲームのルール(三)

 十兵衛と一対一の剣法遊びをすると言う転生衆。これを不安視した牧野兵庫は密かに呼び寄せていた根来の忍法僧を引き合わせます。その紹介画面が別の忍法帖の忍法を描いたものと見えるのですが。

 この間に十兵衛が弥太郎を連れて行くと挨拶していく場面があるのですが、漫画では省略。

 原作では牧野が十兵衛一味が領内から逃げたら殺せと命じるのですが、漫画ではそれより前に天草四郎が割り込んできます。髪切り丸で根来僧の一人を切り刻んで主導権を握った後に、くじに当たった一番手として田宮坊太郎が紹介されます。

 原作の章と漫画の章との終わりが一致したのはもしかすると始めてかも。

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