忍法魔界転生・換装 巻の肆

 

§1 黄泉国(二)

 牧野兵庫頭に付いての説明は前巻に前倒し。この手の説明シーンは漫画だとやりにくいもので。逆に小説では分かり難かった地獄の穴は絵があると非常に分かりやすい。開けっ放しなのを見て「不用心な」と吐くシーンが追加。

 三人娘を地獄へ放り込むについて、牧野兵庫頭が「柔和な相をまったくぬぐい去って奸雄の凶相をあらわし」と言うほどに表情を変えているようには見えません。「君命であるぞ」と一喝する場面も引きなので表情が見えず。一番表情を変えたのは三老人が助けに入って中を見られたと知ったとき。

 田宮平兵衛が連れてきた六頭の馬の半分が裸馬で鞍のついている三頭に娘達が乗っているのは漫画だと余計な説明が不要。

 入り口をふさがれた穴の土壁を内側から壊したのは、原作では誰と特定されていませんが、漫画版では(今回の表紙を務める)宝蔵院胤舜でした。

 六騎の逃走行。原作では三老人にぴたりとついて走っている三人娘ですが、漫画だと少し離れている。老人達が娘達を交互に労わり励ますと言う場面はなし。平兵衛の離脱も補給調達ではなく追撃を警戒しての物見。原作では農民との交渉中に偶然に追撃部隊を発見するのですが。

 追っ手の六騎は言うまでも無く転生衆。原作では柿色の袖頭巾を被っているのですが、漫画版ではビジュアル重視で顔を剥き出し。一番笑うのが『魔法少女か』と思わず突っ込みを入れたくなる但馬守と胤舜の髪形。今更ですが、坊主頭だった胤舜は転生して髪の毛が生えています。これは天然の禿頭であれば転生してもそのままだったはずですが、僧侶である胤舜はおそらく定期的に剃っているだけなので、転生後は有るべき量の髪の毛も再生されていると言う理屈なのでしょう。(後に十兵衛を勧誘する際にも、転生すればつぶれた右目も治るよと言われていますし)

 平兵衛は遭遇の際に田宮坊太郎と宮本武蔵を目撃していますが、漫画版では足止め対決の時に初めて相手を確認します。しかも一番手の坊太郎には名乗られて初めて認識しますが、その様子から見て初対面の模様。

§2 黄泉坂(一)

 霧の中で退治する平兵衛と坊太郎。同じ田宮流抜刀術の同門対決。原作では平兵衛からのご指名だったのですが、漫画版ではあちらから挑んできます。おそらく抜刀術同士で斬りあえば相討ちになっただろうと思われますが、胤舜が割ってはいります。

 騎乗のまま突進してくる胤舜に対し、田宮流抜刀術は馬の前足を切り飛ばしています。そして槍を使っての胤舜の神業。その後が原作と漫画では大きく違っていて、原作では胸を突かせておいて(厳密にはよけきれないと悟っての苦肉の策)、刀を飛ばしての相打ち狙いでしたが、漫画の方は腕を一本切らせた上で間合いを詰めて切りかかる。そして坊太郎の乱入も、原作では平兵衛の投げた刀を打ち落とした上でバッサリなのに、漫画の方は残った右腕を切り飛ばしての唐竹割り。

 いずれにしても一対一なら勝っていたはずの平兵衛、折角の表紙登場だったのにいいところなしの胤舜でした。

 追っ手の接近に気付いた一行、次なる防ぎ手は関口柔心。竹林で竹を切って地面にばら蒔いて戦闘準備完了。

§3 黄泉坂(二)

 あえて刀を捨てて無手になった柔心。これに向かうは荒木又右衛門。原作では後ろから武蔵が「相手は、無手だぞ」と声を掛けるのですが、漫画版の武蔵は非常に無口。

 又右衛門の剛剣を隠し持っていた十手で防ぎ優位に見えた柔心。原作では無言で割り込んでくる武蔵ですが、漫画版では落ちている竹を投げ込んで妨害。そして「わしにゆずれい」と言い放つ武蔵。不満そうな又右衛門ですが、嫌といったら味方すら斬りかねない武蔵の迫力です。

 柔心対武蔵はほぼ原作どおりなのですが、唯一の違いは転生衆に武蔵がいることを柔心が知らないこと。ゆえに「お名前を」と言った時、原作では相手を察知していたのに、漫画版では聞くまで誰だか知っていない。

 必死で駆ける三人娘、その後方で敵の接近を察知した木村助九郎はひらりと馬を下りて追っ手と対峙する。敵に向かって「名を名乗れ」と言うのは原作と同じだけど、漫画版ではまだ分かっていなかった敵の面々が順に名乗っていきます。

 柔心が穴で目撃したのは宝蔵院胤舜と荒木又右衛門だけ。そこに田宮坊太郎と宮本武蔵と言う驚愕の名前が飛び出しますが、それに続く二人の登場は助九郎を凍りつかせます。すなわち柳生兵庫と但馬守宗矩。一番の衝撃は但馬守の投げキッスですが。

§4 黄泉坂(三)

 同門の主筋たる二人を前に戦うと言う選択肢を持たない助九郎。この組み合わせだけは、同門であるだけにどちらかと一対一であったとしても勝敗は明らか。背中を向けて逃げ出すのは仕方ないところですが、原作ではその予想外の行動が但馬守の剣に空を切らせるシリアス展開なのに、漫画では呆気に取られる二人がそこはかとなギャグ展開に。

 立ち止まっていた馬を見つけて飛び乗った助九郎。追いついた如雲斎と但馬守に右腕左足を切り飛ばされながらも走り去ります。

 柳生城にたどり着いた三人娘。十兵衛に「おじいさまを助けて」と懇願。その直後に奇跡的にたどり着いた助九郎。原作では門を閉じろと指示を出すのは助九郎ですが、漫画版では虫の息で、指示を出したのは転生衆の殺気を感じ取った十兵衛本人。

 そして霧の中にあらわれる転生衆。

§5 黄泉坂(參)

 タイトルが実は前回と重複。つまり少し時間を巻き戻して転生衆側の状況の説明が展開します。

 柳生城の近くで策を練っていた天草四郎とクララお品。漫画ではそりの合わない二人の様子を追加。そんな二人の前を(漫画では二人の間を分けて)走り抜ける助九郎。その後に続くのが転生衆と知ってこれを制止。原作では折角だから柳生を一目見ていくかと言ったのは天草四郎。これが漫画版だとどうせだから柳生を(この場合は十兵衛をと言う意味だろう)見ていこうと言うのが転生衆の総意。

 でその際、何かで顔を隠さなければと言うことになって、クララの服を切り裂いて頭巾として流用。原作では頭巾を着用していたのでそんな気遣いは不要だった訳ですが。

 そして前回と同じ場面で次巻へ続く。

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