魔法世界の戦争論5
半人達の特殊兵団
§1 ケンタウロス 人馬兵団
この半人半馬の種族は元々遊牧騎馬民族を擬人化したモノなので軍事的なイメージがしやすい。
さて、実際に彼らが存在したらどうなるのか。純軍事的な脅威は史実のモンゴル族の比ではない。のだが、文字通りの人馬一体はマイナスに働く面もある。
まず、モンゴル人は強行軍に際しては複数の馬を乗り換えて移動するのだが、ケンタウロスにはそれが出来ない。更に、人と馬は異なる食料を食べるが、人馬一体となればすべて人用の食料で賄わなくてはいけない。よしんば、ケンタウロスが牛馬並の消化器官を持っていたとしても、一体の維持コストは確実に大きい。つまり遊牧民のようにいざとなったら家畜を殺して人が生き延びると言う手段が使えない。そして一番目とも関連するが、ケンタウロスでは人と馬との数が常に同数で、どちらか一方が残ると言う事がない。騎馬兵なら、馬がやられても歩兵として戦えるし、逆に馬が残れば別の歩兵が新たに騎馬兵となる事も可能である。
結論としては、ケンタウロス兵は一体の価値が高すぎる。少なくともケンタウロスによる人馬民族国家が誕生する可能性は極めて低い。
§2 ハーピーあるいはセイレーン 翼人兵団
こちらは人と鳥の合体だが、ハーピーでは頭と胴体が人(何故か女性)で、腕と下半身が鳥である。セイレーンもほぼ同様の描写なのだが何故か海の怪物とされている。
腕が翼に変わってしまうと武器が使えないのでそもそも論外。セイレーンについては魅了の歌声という武器もあるのだが、恐らく軍事転用は難しい。
話はこれで終わらない。例示は省くが、翼と腕の両方を持つ生物というのもファンタジーではしばしば登場する。これも先のケンタウロスと同じような難点がある。要するに飛行生物に騎乗する方が戦力としては扱いやすい。だが体が小さい分、ケンタウロスほどには割高に成らず、また偵察兵として飛行生物よりも見つかりにくい。
要するに、兵団として組織するよりも単独行動向きの兵種と考えられる。
§3 人魚あるいは魚人 海兵隊
前節の流れで人魚についても検証してみよう。
人魚というと一般的には上半身が人、下半身が魚と言う事になる。これでは陸軍としては利用出来ないが、逆に海上兵団としてはほとんど無敵である。彼らが存在すれば、制海権の確保は容易でなく、海を越えての軍事活動にはかなりの制限が加わるだろう。
逆に二腕二脚だが鰓や鱗があって水中に適応しているのが魚人である。完全な鰓呼吸であれば、人との接触はほとんど考えられないが、足がある以上は陸上でも活動可能と考えるべきだろう。それ以外はほぼ人魚の場合と同様なのだが、問題は人語魚と魚人の両方が存在する場合である。海洋国家の発展に別の視点が加えられるだろう。
関連予定稿 人魚と魚人と海洋国家 デミヒューマンの系譜(仮題)