家族旅行記 佐渡編

 GWの最終日・5月の5〜6日に掛けて家族で佐渡へ行って来ましたので、何となく紀行文風に纏めてみました。別に旅行好きというほどでもないので、第二回が有るかどうか分かりませんが…。

計画過程

 我が家の家族旅行はいつも唐突に決定されます。二年前も、何処かへ行こうと言う事になって、私が関ヶ原を希望したら、特に反対もなくすんなり通ってしまったし。今回の提案者は果たして誰だったか。よく覚えていませんが、私でない事だけは確かです。ともあれ今回は県内です。佐渡行きのフェリーは三カ所から出ていますが、我が家はその一番西側の航路に当たる直江津・小木間を往復で抑えました。関ヶ原の時には全く宿を取らずに出発した事を考えると進歩したと言えますが、逆を言うと、田舎だから飛び込みでは宿が取れないだろうと言う読みですね。

一日目

 カーフェリーの出航は朝の7時。遠くから来る人間ならかなり早い出発ですが、我々は市内に住んでいるのだから港まで十五分で行けます。遅れてきた乗船者が居たため出航は三分遅れでした。父は早々にビールを飲み始め、「今日は運転しないぞ」体勢を固めたので、その日は妹一人が運転手と言う事になりました。私は運転出来ません。

 再び小木港から宿を取ってある両津方面へ、佐渡唯一の国道350号線に乗りました。流石に国道だけ有って此処だけは道が良かった。このスムーズな道程をみて、寄り道を提案。真野御陵へと向かいました。御陵というのは言うまでもなく天皇の墓ですが、何で佐渡にそんな物があるか。博識なうちの父ですら埋葬者を安徳天皇と間違えていたくらいですから歴史に疎い人にはピンと来ないでしょう。ちなみに安徳は壇ノ浦ですね。正解は順徳天皇。父である後鳥羽院が鎌倉討伐を計画し敗れたとばっちりで、こんな所に流されてきた訳です。余談ですが、私が生まれた新潟県青海町にはこの順徳天皇が流刑の途中に立ち寄ったよと言う碑がありました。丁度通学路にあたっていたので、妹は直ぐ思いだしたらしいです。御陵と言っても、正確には墓ではなく、火葬された跡地なんだそうですが、ちゃんと宮内庁の職員が居ました。別に出てきて説明してくれるとか言う事はなかったが。

 順番から言えば、次なる大物は日蓮上人なんですが、家は法華じゃないのでパス。最初から私が計画していたなら行程に加えていたかも知れないけど、家族の主目的は朱鷺だったし。今年生まれた雛はまだ未公開でしたが、去年生まれた朱鷺の子供を四羽を予想より間近で見てきました。朱鷺の保護活動に関しては言いたい事も有りますが、取り敢えずパス。問題はその後、標識に誘導されて「道の駅・両津」へ行った話になります。此処で思いがけず三人目の大物流人と出会す事になりました。

 能楽の完成者でありながら、時の将軍に何故か疎まれて流されたあの世阿弥です。佐渡能楽の里と名付けられたその場所では、ハイテクロボット十八体による能楽が見られるのです。能とハイテクというのは意外に結びつかない気もしますが、佐渡と能楽を結ぶ有る人物を考えると意外に深い物が…。

 一日目は、強いて名付けるなら「流民の島」ツアーと言う事に成るでしょう。とすればやっぱり日蓮も抑えておくべきだったな、と今になって思いますが。

二日目

 両津のホテルを出て海沿いを北上。外海府を回って本日の主目的である相川金山へと向かいます。復元された佐渡奉行所も見たかったんですが、適当な駐車場が見つからず、直ぐに山を登って金山抗へと足を踏み入れました。まあ資料館にも奉行所の模型があったし、現物でないならそれほど惜しくないかな。興味深いのは此処でもやはりロボットが活躍していました。彼らは採掘の行程を実演している訳です。ロボットの本義を見るようで何とも言えない気分に成りました。前に一度来た事のある父に拠れば、「綺麗に成りすぎて迫力が無くなった」との事でしたが、観光地としてはやむを得ない所でしょうか。

 個人的には初代佐渡奉行である大久保長安の実績が殆ど語られていない点が非常に気になりました。彼こそ山風作品で能とハイテクをキーワードとして立つ人物なのに。実際の歴史的評価はこんな物でしょうかね。佐渡にとっては重要人物だと思うんですが。それにしても長安の仇敵・本多正信が佐渡守なのは何とも皮肉ですね。脱線ついでに言えば、二人の暗闘を描いた「銀河忍法帖」の最初の版(ポケット文春)で大佐渡忍法帖と副題されていますが、この大佐渡は佐渡守正信を示すと同時に舞台である大佐渡山地をも意味するのだと思います。改題するならむしろこれを採用すべきだった気がします。等々、家族には理解出来ないであろう色々な感想を覚えつつ、そのまま大佐渡スカイラインを登って国中平野へと抜けました。途中から自衛隊の管理道路(山の上ある空自のレーダー基地へと向かうもの)に成っていたので、多分無理矢理繋いだんでしょう。山の上から見ると、右手に真野湾、左手に両津湾が見えます。改めて佐渡と言う島の小ささを実感する展望でした。

 最後にマメ知識を一つ。直江津・小木間と新潟・両津間のフェリー航路は国道350号線の一部です。国道が海の上を走る珍しい例ですね。帰りの船の中でそれを知って船を下りて標識を見ると、船着き場から八号線に繋がるまでの道路も350号線である事が判明しました。要するに国道は全て繋がって居なければ行けない原則なんですね。

 

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