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続・魔法世界の神学

§4 神と悪魔の逆転

4-1 グノーシス主義

 グノーシスとはギリシア語で知識を意味する。肉体=物質は悪であり、善なる霊的存在を目指す禁欲的な知識を求める動きを総じてグノーシス主義と呼ぶらしい。正統のキリスト教神学からは異端とされる為かこのグノーシス的な背景を持つRPGは見た事がない。

 グノーシス主義に於いては世界の創造主は小物で、その上に真なる最高神が存在する。創造主自身が悪である場合も有れば、用いた物質が悪である場合もあるが、そこから生じるのは肉体を捨てて霊的な存在を目指す神秘主義的な信仰である。

 物質が悪で有ると言う概念は成立しない。正しくは、子孫を残すことが否定されるので宗教集団として維持できない。と言えば良いか。この種の秘教的宗教は陰謀論に通じる。つまり常識とは異なる知られざる真実が存在し、自分だけがそれを知っていると言う優越感である。これが有るが故に陰謀論の信者は後を絶たない。元々のユダヤ教からして選民思想に支えられているのだから、この種の概念と相性が良かったのだろう。

4-2 アブラハムの宗教

 アブラハムの宗教とは、アブラハムの預言を基礎とする三種の一神教。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教(イスラーム)の総称である。

 この三宗教の違いはイエスに対する解釈で決まる。イエスを否定し、救世主はまだ到来して居ないとするのがユダヤ教である。これに対してイエスを来るべき救世主とするのがキリスト教である。そしてイエスを単なる預言者のひとりとみなし、ムハンマドを最高最後の預言者とするのがイスラームである。

 実はこれら三宗教以外にも様々な派生宗教が存在する。地中海東岸に発生した原始キリスト教はユダヤ教の聖典である旧約聖書に新約聖書を接ぎ木して誕生したのだが、そもそも両者は起源を異にするものであって様々な矛盾を孕む。それを解消しようとして様々な解釈が展開されるのであるが、旧約聖書の方を切り捨てて新約一本で行こうとする方向(マルキオーン主義)、両方とも否定して新たな展開を目指す方向(マンダ教)、果ては新約に東方的な二元論を組み込んで真のキリスト教(マーニー教)を生み出す所まで行く。

 史実としては、これらの方向が挫折した後に続編としてクルアーンを提示したのがイスラームであるが、アラブの民を最初の預言者アブラハムの長男イシュマエルの子孫として位置付けている。ちなみにユダヤ人はアブラハムの次男イサクの双子の息子の一人ヤコブの子孫である。つまりユダヤ人とアラブ人は祖先を共有する遠い親類、中東紛争は壮大な兄弟喧嘩と言うことになる。

4-3 インドの三神一体

 インドの三大神ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァは現在のヒンドゥー教に於いては同一で、それぞれが創造・維持・破壊と再生と言う機能を示すものとされる。これを三神一体(トリムルティ)と言う。但し、古きバラモン教時代からの神であるブラフマーは実質的には暇な神と化しており、ヒンドゥー教は大きくヴィシュヌ派とシヴァ派とに分かれる。

 ヴィシュヌは太陽のイメージを持ち、シヴァは暴風神ルドラを取り込んだ天候神の側面を獲得する。元のシヴァは吉祥を意味する穏やかな性質であったが、ルドラの性格を受け継いだ事により二面性を持つ事となる。何れにしてもインドの神は悪魔的な性質を内に取り込むことによって発達した。逆転と言うよりは同化である。これは言うなれば一神教にして多神教と言う別解で、RPG向きかもしれない。

 

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