風魔三郎秀忠

 

§1 二人の秀忠

 二代将軍秀忠は家康の実子ではなかった。と言う驚愕の事実がさらっと紹介されるのが眠狂四郎シリーズの「独歩行」。

 本物は元服の年に癩を発した為、生母が前夫との間に生んだ異父兄と入れ替えられ、風魔一族の元に送られたと言う。さて史実における秀忠の元服はと調べると、秀吉の小田原攻めに際して人質として上洛して元服とある。つまりこのとき上洛したのが異父兄秀正であり、風魔への養子入りは対北条に向けての布石であったと言うことになるだろう。

 家康の実子であった風魔三郎秀忠は「まれに見る頭脳と武芸の天稟を備えていた」とされる。関ヶ原の折には、反転西上する東軍を追撃しようとした上杉軍を制止し、家康の天下取りを影から支えた。しかし秀忠系の将軍が断絶して、紀州から吉宗が入った頃から自らを正統と考える子孫が暗躍し、吉宗の孫である松平定信がこれに対抗すべく「黒指党」を結成。そして眠狂四郎を挟んだ三つ巴の抗争へと至る。

§2 羅切

 これとは別に「立川文庫」において家康が子を成す能力が無く、家康の子とされるのはすべて影武者の胤であると言う驚愕の話が登場する。が、これはおそらく真田幸村を誘い出す為の罠であろう。

 井沢元彦作品で(タイトルは忘れたが)同様に家康が今川の人質時代に生殖機能を失うような処置を施されたと言う話がある。これは家康が信康や秀康に対して冷たかった原因として語られるが、実はこの処置は偽装であって家康は子を成す能力を失ってはいなかったと言うオチであった。

§3 風魔と秀忠

 「風魔三郎秀忠」で検索すると「影武者徳川家康」がヒットする。主人公の一人が甲斐の”三郎”で、”風魔”の娘と結婚し、影武者の家康を守って”秀忠”と戦う話である。もしかするとこの柴錬が創造した風魔三郎秀忠の設定が何か影響を与えているのだろうか。

 と言う与太話を振って終わる。

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