題材その拾参 捕物帳とRPG

 いつか取り上げようと思いながら延び延びになっていたテーマです。

 そもそも時代劇RPGというのは数が少ないし、現状自分のコレクションには無いし、プレイした事もありません。定義を広げれば戦国モノも”時代劇”に含まれるのかも知れないけど、それでもプレイヤーとしての経験が有りません。

 その上で捕物帳となるとこれは”推理モノ”の要素が加わりますからほとんど皆無と言っていい。勿論普通のRPGでも”謎解き”の要素は存在しますが、謎が解けないから即任務失敗とは成りません。ただ、特に身内の面子は”謎解き”より”戦闘”に好むのでネタとして扱いにくいのです(戦闘に頭は要らないと行っているのではありません。念のため)。

 実際の所マスターからの情報だけで事件の謎を解くのはかなり難しいのです。よって本格ミステリー調の推理モノRPGは非常に作りにくいのです。キャラクターに”推理”と言う技能を持たせて判定に成功したらヒントを与えると言う手はありますが、これだとプレイヤーが謎を解いたと言う爽快感は出ませんね。

 と言う訳でホームズを意識していた半七捕物帳や、その系譜を継いでいる人形佐七などを読んでいる間は捕物帳RPGのイメージが沸いてこなかったのも無理はありません。その閉塞感をうち砕いたのが、最近読んだ野村胡堂の銭形平次でした。

捕物帳の可能性

 銭形平次といっても、そのすべてを読んだ訳ではありません。私の手元にあるのは「銭形平次・青春篇」(講談社・大衆文学館文庫コレクション)です。初文庫化作品を多数含む初期短編集と言う事で、銭形平次を語るにはやや偏りすぎという批判はあるでしょう。この稿の趣旨は捕物帳RPGを考えるモノなのでご容赦下さい。

 興味深かったのはこのシリーズに定番の解説「人と作品」でした。半七がホームズなのに対して胡堂がルパンをモチーフとして平次のキャラクターを構想したらしい、と書かれています。これを読んで最初の感想が、だから「ルパン三世のライバルが銭形警部なのか」でした。モンキーパンチ先生がこれを知っていたかどうか知りませんし、これを突き詰めていく気も有りませんが、そう考えるとあの二人はコインの裏表という感じがしてきます。昔所持していた漫画版で、銭形警部が何故ルパンを執拗に追うのかについて「奴がアルセーヌ・ルパンの孫でなければ、俺が銭形平次の子孫でなければ」と語っていたと記憶しています。二人の宿命を感じさせる言葉ですね。

 話を戻します。これで気付かされたのは、捕物帳だからといって本格モノに拘る必要はないと言う事です。巻き込まれ型のハードボイルドや怪奇小説も捕物帳の範疇で括りうるとなれば可能性は大いに開けます。

捕物帳の枠

 初めに戻りますが、戦国モノを時代劇RPGに含むとしても、戦国モノで捕物帳の雰囲気は出せません。捕物帳の成立要件として江戸の平和(パックス・トクガワーナ)が必要だからです。逆に言うと平和であるが故に力ずくの解決策が取りにくい事になります。

 判りやすく言えば「疑わしい奴を殺して解決」は駄目と言う事。逆に証拠を突き付けて自殺に追い込むのは有り。銭形平次の場合、真相は暴くけど司直の手には渡さないと言う逆パターンが多いらしい。そこから縮尻(しくじり)平次の異名があるらしい。

 グレーゾーンなのが犯人が確定しているのだけどそれを正規に裁くだけの証拠が無い場合。これを非合法に始末するいわゆる”仕事人モノ”を捕物帳の範疇に入れて良いか。これはケースバイケースだが、証拠が消されているとか、証拠を出すと別の人間に迷惑が掛かるなど正当な裁きに掛けられない場合はOKだろう。与力・同心や岡っ引きと仕事人がPCとして併存して、状況によってどちらの領分となるか競い合うと言うなら面白いかも。

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