テーマ3 タイムスリップ時代小説

 前回のテーマと何が違うのかという指摘があるかも知れませんが、殆ど違いはありません。前回の素材に加えて新たに三編を俎上に載せます。

前置き

 本来の目的から外れて本の感想を書いてしまったので。まあ改稿すれば良いんですが、感想としては大筋でそのままなので。付け加える点としてはゲーム的な考証についてです。歴史背景を持つRPGの場合、史実を勝手に変えて良いか。具体的にはプレイヤー達の行動が直接的に歴史に影響を与えるか否かという点が問題となります。これは時代劇RPGの宿命とも言えます。

 これはゲームを作ったデザイナーや、実際のゲームを統括するマスターの趣味にも依りますが、考え方としては、1)歴史はそのままで、プレイヤーはその歴史を体験して愉しむ。2)歴史は場合によっては変わっても良い。3)ゲームの舞台となる時代までの歴史は尊重するが、それ以降は白紙にしておく。一寸高度な手法として局地的には史実と食い違っても良いが、大筋では史実は変わらないと言うやり方もあります。要するに戦闘の勝敗と戦争の勝敗を切り離すと言う事です。

 そう言う観点から前回の素材を見直すと、「寛永…」はテーマ上の問題もあって相当に史実からかけ離れています。逆に「…淀君」は主人公の行動は全く史実に影響を与えません。「戦国自衛隊」はこれは厳密には時代劇とは言えず純然たる歴史SFですから史実と違う世界へ行って史実に近い形に改造してしまうと言う話ですから。

本題

 さて今回の素材に移ります。歴史を変えてしまう方の話から。「退魔戦記」豊田有恒、「鋼鉄忍法帖」松谷雅志の二編です。

 退けられる”魔”とはモンゴル軍のことなんですが、退魔という言葉にタイム=時という意味が含まれている事は言うまでもありません。モンゴルによる世界征服の歴史を改変しようとして元寇の時代に現れた退魔船の乗組員が現地人と協力して蒙古の軍勢を退ける訳です。同一テーマとしてはこれと対になる前作「モンゴルの残光」の方が適当なんですが、此方は舞台が日本ではないので。

 もう一つの「鋼鉄…」は本能寺の変を舞台として歴史を守る側(楔)と変えようとする側(転)が戦うと言う話です。ネタ晴らしになるので、これ以上は書きませんが、最後の一章が続編を期待させて良いです。

 変わらない方の話、名付けるなら体験型とでも言いましょうか、としては「大江戸神仙伝」石川英輔を挙げます。これは現代と文政年間とを行き来出来る能力を身に付けた男性の話です。成り行きから両方に女をこさえてしまう訳です。この転時能力はどうも両方に女がいてそれぞれに会いたいが為に維持されているような部分があります。タイムリミットが決まっている「…淀君」と違って文政年間は平和な時代ですから、無理に歴史を変えようなどとは思わないようです。

予告?

 本当は半村さんの「参霊山秘録」を取り上げる積もりだったんだけど。でもこのテーマなら「およね平吉時穴道行」の方が相応しいし。しょうがないので次回は「忍者」を取り上げます。

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