番外02 魔王復活
今回の素材は「影風魔ハヤセ」(イブニングKC・森田信吾)です。時代小説ではなく、漫画なので番外として扱います。
異聞・本能寺
本能寺から生きて逃れた信長の反撃を描く「仮想戦記モノ」かと思いきや、信長に従う三人の玄忍者の戦いを描く「忍者モノ」と言うのがメインのようです。
「仮想戦記」としてのポイントは本能寺の主犯が光秀ではなく秀吉であり、それに気付いた光秀が巧妙に姿を眩まして反撃の機会を伺うという点でしょう。連載では信長との合流を果たした光秀ですがさてどうなりますか?
「忍者モノ」としては、信長支配の三忍者や、その敵である秀吉配下の山王などの架空忍者に混じって、飛び加藤とか服部正重(三代目半蔵)などの”実名”忍者が絡む辺りが愉しい。また、甲賀上がりの武将滝川一益の扱いなども山風マニアにはツボです。
武人・明智光秀
この作品では光秀の喰えないキャラクター造形が秀逸です。破天荒な信長との対比から常識人として描かれる傾向の強い光秀ですが、実体はもっと尖った人物だったのでは無いかと思われます。
以前取り上げた「闇の太守」も初めは良かったのですが、信長に使えて以後がすっかり小者に成ってしまって残念でした。
この辺りの”傾いた”感じの光秀は「センゴク」(ヤングマガジン・宮下英樹)でも見られますね。昨今の流行というかどちらも講談社なので出版社の趣向なのでしょうか。ヤングマガジンは「甲賀忍法帖」の漫画化で注目されたせがわまさき氏の「Y十M」もあって時代劇付いていますね。流石は”講談”社という所でしょうか。
対照作品
生きていた信長を扱った作品として思い出すのが「夢幻の如く」(本宮ひろ志)です。
本宮御大の場合、連載(ライブ)で追っているときは気にならないのですが単行本でまとめて読むとあらが見え隠れするという難点があります。モンゴル征服以後が大味になってしまうのは、SLG等で終盤が盛り上がらないのと同じで仕方ないのかも知れません。
「ハヤセ」の方も今のところは表面に現れた史実を書き換える所までは行っていませんので、その辺りがどうなるのか要注目という所でしょう。
蛇足・信長心理分析論
信長をどのように描くかでその作家の内面が如実に現れる様な気がします。