神統記 第三版

第三章 補注 比較各神論

 此処では興味深い神や、今までに挙げた原則に当てはまらない例外などを比較論的に取り上げる。

1 魔術王オーディン

 第一章では第五世代の天空神として半ば無理矢理組み込んだが、併立して挙げたのがヤーウェで有るようにこの解釈は多少の無理がある。オーディンの天空神としての属性が希薄なのは、ゲルマン神話の混交が直接ローマ神話と行われず、キリスト教を介して行われたためと思われる。あるいはゲルマン人には天空を神として見る風習が無かったのか。いずれにせよ、キリスト教の普及により地下に潜ったヘルメス=メルクリウス神の秘教的な性格がを魔術王オーディン神の性格と結びついたのであろう。

2 ミトラスとクロノス=サトゥルヌス

 ミトラス教はペルシア起源のゾロアスター教との関連性が指摘されている。但し、ゾロアスター教で言われるミトラ神とローマで信仰されたミトラス(両者を区別する意味でこの様に分けて表記する事にする)が同一であるかはまだ学者の間でも意見が分かれるらしい。

3 アポロンとバルドル

 共に神々の王の息子で、芸術の神としての属性を持つ。アポロンが太陽神化して立太子された雰囲気(キリスト教の発展がなければすんなり王位についたかも知れないが、密教化の過程でどうもヘルメスに取って代わられた様にも見える)があるのに対し、バルドルの方は神々の黄昏(ラグナロック)の後、一新された世界を統治すると言われている点も似通っている。

4 アポロンとヘルメス

 アポロンは生まれが危険だった割(その点では父ゼウスや、祖父クロノスも同様だが)に、様々な属性を附与されてゼウスの後継者的な位置に立った。後から生まれたヘルメスはそのアポロンの栄光に影を落としている。二人はヘルメスの誕生時から険悪な状態にあった。ヘルメスは生まれたその日に泥棒としての才覚を発揮して、アポロンの牛舎から牛を盗んでいる。

 キリスト教普及の煽りを受けてゼウスからの継承(あるいは簒奪)が日延べになっている上に、ヘルメス=メルクリウスはエジプトのトート神まで取り込んで地底の科学たる錬金術の神としての地位を確立していた。預言の神としてのアポロンの威信は浸食されつつある。

 水星が太陽に一番近い惑星であるだけに、この両者の対立は熾烈であろう。

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