神統記 第三版

第二章 体系別各論

システムT エジプト神統学

 エジプト王ファラオは、イシスとオシリスの息子ホルスに比定されると同時に太陽神アメン=ラーの息子でもある。これは上下エジプトの統合によって生まれた二重王権の系譜が作用している。エジプト固有(エジプトで太陽暦が発生した事から類推)の太陽神ラーに対する信仰の上に、メソポタミアで発展した女王の配偶者としての王権(オシリス神化)が重層しているのでる。(前者はおそらくピラミッドに代表される巨石文化の担い手であり、後者はその後流入してきた農耕文化を象徴している物と仮定する)

  エジプトの太陽暦は定期的に氾濫するナイル川の周期を読むため太陽年を基準として動くことが必要であったからである。二つの信仰のどちらが早く発生したかは特定できない。(汎用性のあるオシリス神化論がメソポタミアへ移動した可能性もある)

システムU インド=アーリア的三神群

 インド=アーリア系民族は一つの特徴として、職業階層と対比される三神群を形成している。祭司階層・戦士貴族階層・生産民階層である。これは後のフランスの三階層にも通じる。

1 祭司階層

 インドにおいてはブラーフマナ、ケルトにおいてはドルイドと呼ばれる階層である。インドにおけるヴァルナ・ミトラ神、原ローマのユピテル神、ゲルマンのオーディン神が知られる。

2 戦士貴族階層

 インドにおいてはクシャトリア、ケルトではフライスと呼ばれる階層である。インドにおけるインドラ神、原ローマのマルス神、ゲルマンのトール神が知られる。

3 生産者階層

 大きく分けると農耕民と狩猟民となり、どちらが優勢かで神の性格にも影響する。インドにおけるヴァイシャ、ケルトではボー・アイリグとなる。インドのナーサティア(アシュヴィン)双神、原ローマのクゥイリヌス(神格化された建国王ロムルス)、ゲルマンのフレイ女神が知られる。

システムU’ ローマ的習合体系

 ローマはその発展過程において国民皆兵制が生まれ、戦士と生産者の垣根がなくなりった。また征服民との同化指向から生じる煩瑣な信仰体系のため祭司階層の独立化もなかった。ローマは汎化しそれ故に文明化したといえる。

 システムV インドのヴェーダ祭祀

1 ヴァルナとミトラ

 インドにおける対偶神ディアーヴァー(先の分類の第二世代天空神に相当)とプリティヴィーは天と地に相応する。ディアーヴァー(語感からして明らかにゼウスへと至る天空神の系譜に属する)は天空神の御多分に漏れず、その地位をヴァルナ(第三世代天空神)に奪われている。”この上もない至上神”ヴァルナもデーヴァ(神々)を率いるインドラ(第四世代天空神、同時に英雄神)に敗れ去る。ヴァルナは滅び去る古き神々を象徴した存在で、原初の神格であるアスラの典型でる原初竜ヴリトラとも同一視される。ヴァルナはナーガ(竜族)の王として大海に君臨する。デーヴァとアスラの戦いで敗れたアスラが海へ落とされた事とも関係するのであろう。 インド=アーリア系神話において、天空神は雷鳴を帯びるが、その雷鳴は雄牛の鳴き声を類推させた。つまりデーヴァを象徴する動物が牛なのである。(古代中国において竜である黄帝と戦って敗れたしゆうが牛の頭を持っていたことは実に象徴的である)

 ミトラはヴァルナを補完する、人格化された「契約」である。ミトラはヴァルナやアリアマン、バガと共にアーディティア神族を形成する。アーディティアはアディティ大母神の息子たちで蛇身であったと考えられている。

2 ヴィシュヌとシヴァ=ルドラ

 ディアーヴァー、ヴァルナ、インドラの系譜を先の天空神の系譜に組み入れなかった理由は、一つには中位に位置するヴァルナの呪術的性格にある。(言い換えればヴァルナの性格が父権的でない)そしてこの間を埋める存在として父権的なヴィシュヌ神の存在感の大きさがあげられる。ヴィシュヌは父なる父権の継承者でなく、インドラの対抗者でもない。そのため天なる父の系譜に上手く整合しない。

 第二に、ヴィシュヌとシヴァ=ルドラはヴェーダ時代よりヒンドゥ時代の方が重要性が増している。これは時代が下って刷新された結果と見てよい。ヒンドゥ成立以後のインド神学は典型的なインド=アーリア神学から切り離して考えた方がよいだろう。

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